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住んでいるマンションが解体される。工事の開始は来月だ。少し前に安全基準を満たしていないことが発覚したのだ。基礎部分からして問題があるとかで、補強工事では補えないらしく、関係者の負担で住人は月末までに退去することになったのだ。私もすぐにでも退去したかったが、仕事が終わるのが遅く、不動産屋に行けるのは週末のみだった。こうした事情で次の行き先がなかなか見つからず、まだマンションに残っていた。
残っている者は他にもいた。私の部屋の真上の住人もその一人だった。彼には入居当初から天井を踏み鳴らされて困っていた。しかも生活が昼夜逆転しているようで、夜中にドンドンやられて不眠になりかけたこともあった。管理人に注意してもらったところ、キレやすい性格のようで激高されたらしい。結局、私が就寝時に耳栓をするということで納得のいかない自己解決をしていた。
その夜も耳栓をしようとして、ふと天井の足音がしないことに気が付いた。最近は寝る直前になるまでこの騒音を気にしないようになっていた。慣れか、もしくは耳が麻痺していたか。多分その両方だろう。私は一瞬、不思議に思った。ここに越してきてから昨日まで、天井が鳴らなかった日はなかったからだ。しかし別に変でもないと思い直した。退去期限も近づいてきたことだし、先に出ていったのだろう。
翌朝、出勤しようとエレベーターに乗って、違和感を感じた。すぐにはわからなかったが、降下しながら考えたところ、どうもボタンの数が少ないようだ。しかしそんなことがあるだろうか?
エレベーターを降りたらロビーに管理人がいた。私はボタンの違和感について話した。管理人は言った。
「あぁ、上の階が無くなったんで操作盤も交換しました。」
「えっ?」
「解体が前倒しになったんですよ。もう始まってます」
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