第2話 初めまして。
おにぎりを食べ終えると、彼女はいそいそと僕の前に座った。
「こほん。では改めて、初めまして、西 千景くん。私は神様です。とっっってもすごい神様です。これから、千景くんの願いが叶うまでそばにいますので、よろしくどうぞ。」
「僕の願いですか、、、。思いつきませんね」
「今じゃなくていいです。叶うまでいますから。」
「えっと…なんで僕…?」
「?お願いしましたよね?神様の言う通りって」
しばらく考えて、、、思い出した。
「いや、あれはラーメンの味を決めたくて…」
「またまたっぁ。ラーメンの味決めるために呼んだなんて…」
へらへらと笑う神様。なんか…
「なんか、すいません…。呼び出しの言葉だったんですね…。」
「…」
彼女はうつむいてしまった。
どうしたらいいんだ…。警察か…?いや神様なら無理か…?いや神様なのか…?
「…と、とりあえず一緒にいさせてください…。」
彼女は、ぽつりぽつりと話し始めた。
「本来、神様はお願いを叶えたら人前から消えるのですが、今消えないということは、千景くんの願いが叶っていないということなのです。」
確かに今日醤油ラーメンは失敗だった。上司にくさいといわれたからな。
「…じゃあ明日のラーメンの味を決めてってお願いしたらいいの・・?」
彼女は首を横に振った。
「同じお願いは聞けないんです。」
「それは…」
困った。僕は本当に今願うことがないのだ。
「私、神様なんで、きっとお役に立てますよ!かみさまなんで!なので、願い事、一緒にゆっくり考えてみましょう」
彼女は少しうつむいて僕に伝えた。
神様の中でも何かあるのかな。きっと何かの手違いだったんだ。本来彼女は来るはずではなかった。でも、僕の願いがないから帰れないんだな。
「わかりました。…神様、僕の願いが叶うまで。よろしくお願いします。」
一応神様らしいので頭を下げておく。
「うむっ!神様だしな!がんばるぞ!」
彼女は勢いよく立ち上がり胸を張った。
「すみません神様。一つお聞きしてもいいですか?」
「うむ!なんだ?」
「神様を疑って申し訳ないのですが、証拠、的なのはないですか?」
彼女は少し悩んでから、わかったといい目を閉じた。
今から何が始まるのか緊張が走る。
彼女はゆっくりと目を開ける。すると、ゆっくり宙に浮かんだ…。
「え、まじ…?」
半信半疑だった。でも目の前をふわふわと浮いている。
「今は下界だからあんまり力が出ないんだ。本当は大きな羽根だってあるしかっこいい武器だって出せるんだぞ!」
彼女はゆっくりと降りる。着地した彼女は少し疲れて見えた。
「どうだ!神様と認めるか?!」
人では絶対できない。あぁ少しめまいがする。
「わ、わかりました。」
「よかった!」
彼女は嬉しそうにニカっと笑った。
「神様すみません」
「なんだ?」
「明日も早いので寝かさせてくれませんか…」
時計は、21時になっていた。
「うむ、よいぞ。あ、でも寝る前に…」
神様はいそいそとキッチンに向かった。
しばらくすると
「ほれ、横になって千景くん。」
言われるがまま布団にあおむけになった。するとすぐ視界が暗くなった。
「蒸しタオルだよ。千景くん帰ってからずっと眉間にしわよってたの、知ってた?」
「い、いえ。すみません。」
「ありがとうって言っておくれよ」
「あ、ありがとう、ございます」
「うむ!」
顔は見えないが、きっとニカっと歯をだして笑っているんだろう。
温かい。目が自然と落ちて体もそのまま布団に落ちていくかのよう。
耳元で神様が、ずっと話しかけてくる。
これ何?とかなんか出たっ!とか。
気になるより、いつも一人の部屋に誰かがいると謎の安心感に包まれ、そのまま眠りに落ちた。
朝起きると神様は僕の横でテレビを見ていた。
「んもぅ、昨日なにこれ、ってなんかも聞いたのに無視して寝ちゃって!」
「んぇ?!すいません。いつもは寝れないんですが…」
はっ、となって時計を見る。
時刻は6時30分。
僕は慌てて布団から飛び起き身支度をする。
「どうしたんだよ?!急に動いてびっくりした!」
「すみません、仕事なんです。遅れないようにしないと、また…」
駆け足で玄関に向かう。
「今日は雨降るぞー」
神様の声は僕に届かず家を出た。
何とか7時には間に合った。
そしていつものように準備をする。
だが、今日は朝の準備確認をしてこなかった。今の僕は不安と、ある言葉でいっぱいだ。
「全部できてないし確認不足なんじゃない?朝確認してから出勤してくれる?社会人として当たり前だよね」
何か忘れていたらどうしよう。何か、何か。
不安で息苦しい。職場の準備が終わると社員たちが出勤を始めた。
ドキドキと心臓がうるさい。
今日はなんて言われるんだろう。昨日の反省守れてるかな。
「ねぇ、西さん、かさたて出してないよね?」
身体がびくつく。
「す、すみません。すぐ出します」
「今日、天気予報見てないの?雨って言ってたよね?」
「す、すみません。見る時間なくて…」
「社会人として日ごろからニュースは見ていないとだめだよ。」
「はい…。すみません…。」
「おかえりー…、ってなに!?べたべただよ!?傘忘れちゃったの?!」
神様は急いでタオルを用意してくれた。
「風邪ひいちゃう!急いでお風呂入らないと」
「あ、お風呂の前にテレビ見なくちゃいけないので…」
「えっ?!だめだよ!おふろいこ!」
僕はテレビのリモコンを持ちニュースのチャンネルを付けた。
神様は僕の後ろでばたばたしていた。
僕は、今日ニュースを見て明日の仕事に備えるので忙しかった。
ニュースを見ていると、ブォーと熱風に包まれた。
「これがドライヤーか!すごいな!あったかいかい?千景くん」
神様はドライヤーで髪を乾かしてくれた。使い方が難しいのか、風がいろんな方向からくる。
ニュースの音は聞こえなくなって、今家にいるんだと気付いた。
「あ、すみません、神様。僕お風呂行きますから。」
「む、そうか。じゃあお風呂から出たらまたドライヤーさせてくれな!」
彼女は楽しそうだった。つられて少し心が静かになった。
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