第7話 キメラとの戦闘
ダンジョン───地下迷宮でありながら、『歪庭』と言われる階層では、空が広がっている。
「空間の歪み。空は、どこか違う空間に繋がっている……なんて言われている場所だぜ」
『すげぇ!なんて言うか……サバンナじゃん!』
『サバンナって言うか、もはや異世界』
『草丈が高いなぁ マジ草w』
コメントの反応も良い。 やはり、ここを選んで良かった。
「今日は、この階層のボスである
俺は無言になる。 コメント欄もザワザワしてきた。
「みんな、あの草の影にいるやつわかるか?」
『わからん!』
『常人に気配を読めとか無理なんよ』
『はいはい! またいつもの』
「あの場所」と俺は指した。
「中ボスと言われるモンスターが隠れている」
『中ボス? 強いのか?』
『下手したら、ボスより強い個体がいたりもする』
『やべぇじゃん!』
「それじゃ」と俺は駆け出す。自然と気分が向上している。よし───
「戦ってくるぜ!」
『戦闘民族www』
『蛮族じゃんw』
そんなありがたいコメントを受け、隠れていたモンスターに接近する。
そのモンスターの正体は─── キメラだった。
『キメラ』
ライオンの肉体に蛇の尻尾。背中にはコウモリの羽が生えている。
複合的な生物。 神のいたずら・・・・・・と呼ぶには、生物の進化的にあり得ない。
だから、モンスターなのだろう。
こいつはシンプルに強い。 そもそもライオンに勝てる人間がどのくらいいるのか?
「うん、俺はそんなモンスターに素手で挑もうとしている」
自然と笑みがこぼれていく。
奇襲を仕掛けようと隠れているキメラに───逆に奇襲をしかける!
気配を殺して、接近。
「肘打ち!」
俺を見失っているキョロキョロしているキメラ。その鼻先に肘を叩きつけた。
腕だけの力ではない。 体当たりの動きで、肘の先端を当てる技。
『ほら、中国拳法の……なんだったけ?』
『あれだ。八極拳とかでよくやる当て方だ』
『猛虎硬爬山?』
コメントがマニアックな話になっている!?
「いやいや、そんな大したもんじゃないぜ? モノマネと言うか…… ん~コメントが盛り上がっているから良いか」
俺は、コメント欄から目を離して、キメラの方を見る。
幸いな事に、キメラはそれで倒せる相手ではないようだ。
キメラは低く唸っている。 そうとう怒っているようだ。
鋭い視線を光らせて、俺を威圧してくる。
「理不尽だぜ? 俺を食べようと狙っていたくせにやり返したら怒ってくる」
「……」と一瞬の静寂。
しかし、次の瞬間には、キメラが動いた。
飛びかかってきた。まるでネズミを狩る猫の動きのようだ。
巨大な前足。 鋭い爪と牙が俺の頭上に降り注いでくる。
「だが、それはフェイント。本命は尻尾だろ!」
キメラの体に隠させれた一撃。 その尻尾は槍のように鋭く、まっすぐに俺を狙っている。
手刀。 それを放ち軌道を外す。
もしも、本物の槍なら、切断する事もできただろう。だが、キメラの尻尾は蛇の体。
柔軟性と弾力によって、ダメージを与えるだけで終わる。
だが、次に俺の頭上に落ちて来るのは、キメラの牙と爪。
俺は倒れるようにキメラの体下に潜り込むと───巴投げ。
ただの巴投げではない。
通常の投げ技はネコ科の空中制御力によって無効化される。
だから、俺は巴投げのモーションでキメラの腹部を強く蹴ったのだ。
アバラ骨のない腹部は、四足獣への弱点だ。 だから、打撃を打ち込んで、空中制御力を失わせる。
地面に衝突したキメラ。すぐに体を起こす。
そのまま、キメラは突進してくる。
「回避!? 右か左か……いや、上だ!」
俺は飛んだ。 キメラの上を飛んで越える。 だが、できなかった。
「むっ!」と異変に気付く。 飛んでる最中───右足が何かに摑まれた。
何か? キメラの尻尾───蛇が俺の足に絡みついている。
そのまま引かれる。 何をされるのか?
背中から地面に叩きつけられた。 一瞬、息が止まった。
が───
「そんなに、俺に投げられたのか嫌だったのか? 投げられたから投げ返すって?」
言葉はわからないが、挑発したのはわかったのだろう。
キメラが俺の頭を噛み砕こうと顎を開いた。 それは俺にとって好機だった。
「引っかかったな! 馬鹿め!」
俺はキメラの首を両手で抱いた。 フロントチョーク……ライオンに効くのか?
いや、有史には前例がある。 ヘラクレスがライオンと絞め殺した逸話。
……いや、ヘラクレスって神話だから実在の人物じゃないのか?
「まぁ良いか。撮れ高は十分だろ?」
力を込める。 一気に激しく……
だが、何かが飛んでくる。 キメラの尻尾だ。
尻尾は意識のある蛇─── それが俺に向かって飛んできている。
ギリギリで首を捻って回避。 ボクシングでいうヘッドスリップという技だ。
俺の目前を通過していく蛇に対して、俺は口を広げて───噛み付いた。
俺の口。生物の暴れるパワーが伝わって来る。
「もごもご、もごもご!(諦めろ! もうこれで終わりだ!)」
俺の勝利宣言と共にキメラの力が失われて行った。暫くしてキメラの体は霧散していく。
『お見事!』
『カッコいい!』
『888888888888』
『ファイトマネーです。どーぞ【\10,000】』
あれ? 今、初めてみるコメントの種類が……見間違いかな?
『スパチャが送れるようになってる!?』
『もしかして、初スパ?』
『テスト【\10000】』
続けて、赤いコメントが流れてきた。 間違いないスパチャだ!
スパチャ……言うなら有料のコメントだ。
スパチャ文化を知らないと、なぜ無料のコメントにわざわざ課金をして? と思うかもしれない。
しかし、世の中には、無料の物にお金を出して評価したい! 感動を表現したい!
とにかく、推しにお金を払いたい!!!
それがスパチャなのだ!
おっと、いけない! いけない! なにか喋らなきゃ放送事故になる!
呆けている場合ではなく、スパチャのお礼を言わないと!
「スパチャありがとうな! あとでスパチャ読みをやるからぜ」
『楽しみにしてます【¥1500】』
『初お友達代です【¥500】』
『登録者的に今までスパチャ送れなかったから……サービス【¥1000】』
や、やばっ! 有料のコメントが、大量に流れて来るぞ!
普通、こういうのは配信1周年とか、誕生日配信でやるようなもんじゃないのか!?
「いや、そんなに簡単にスパチャを……あっ、うん。お金は大切に使ってくれよ」
それでも、しばらくは止まらないスパチャ。そんな中、目に止まったコメントがあった。
『今回はドロップ0かぁ 見たかったなぁ、キメラ飯』
キメラはアイテムドロップなし。何も素材は落とさなかったが……
「ん~ ライオン肉ってうまいのか? 尻尾の部分、蛇料理は日本でも食べられてた時期があったとは聞いた事あるけど?」
勘違いをされると困るが、俺は料理に詳しいわけではない。
以前に説明したように、ダンジョン配信で披露するために数ヶ月間、料理の猛特訓をしただけだ。
『ライオンは基本的に食べれない。味の問題じゃないく、保護対象』
『食料として食べれないわけじゃない。味は知らん』
『うまいんじゃない? 蝙蝠は衛生的に良くなさそうだけど・・・・・・』
ざっと、コメントを眺める。 なるほど、なるほど・・・・・・
「今回はターゲットは別にいるけど、いつかキメラ討伐耐久配信でもやるか? 食べれそうな素材が手に入るまで、戦う配信」
『リアルファイトで耐久をやろうとすんなw』
『どんだけ戦うつもりやねん。体力無尽蔵かい!』
『え? 何時間見込みですか?』
「そうだなぁ」と俺は企画の必要時間を考えた。
「中ボスのアイテムドロップはボスモンスターみたいに確定じゃないからな。完全に運任せ。食材として使えそうなアイテムはドロップ率は多いから・・・・・・」
簡単に計算してみたけど4時間くらいかな?
企画の案としてメモしておこう。
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