通りすぎた音

舟筏

実体験をお話します。

 私が福岡市に下宿していたころの話です。

当時私は夜の散策が好きで、夜半の街をただ歩き回っていました。今ほど危険が

なかったため、夜十時から十二時ごろ暗い住宅街を練り歩いていても危なくも

なければ、不審がられることもなかったのです。

夏もまだ入りで、気温も夜風も心地いい気楽な散歩でした。

そんなある日、後から自転車の音が聞こえてきました。

チェーンのシャーという音、時折聞こえるカタタンという音。ママチャリですね。

やがて音が大きくなったので私はわきによけました。

やがて私の前を


なにも通り過ぎません


ただ、音だけが通り過ぎていったのです。

音は少しづつ遠ざかり、やがて聞こえなくなりました。

街灯の下にいて、明るかったのに、自転車の姿は目に映らなかったのです。

あれはいったい何だったのか?  見間違い?気のせい?それとも・・・

その晩は気になって眠れませんでした。

その夜以来、その道に近寄っていません。たぶん、怖かったのだと思います。


あれはいったい何だったという思いは今でも思い出すたびに

背筋が寒くなる思いです。

私が体験した最初で最後であろうこの不思議体験、わかる方がいらっしゃいましたら

教えてください。


オ待チシテイマス。


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通りすぎた音 舟筏 @funaikada

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