039:青ゴブリン、また図書館へ

 ◆


 ジンジュです。

 ちょっとだけ、関西弁で失礼しますわ~。



 ありのまま、今起きたこと話すでぇ……

 俺ら3人、アインツ市立図書館に来た。兎3羽とスライム6匹連れてな。


 入館手続きして、中庭でボーッとしとってん。ほなボーゼのコーヒーに、真っ白い何かが飛び込んでったんや。

 こう、パシャ~ン! てな。


「はぁー !? 」

「何や何や~ ?? 」


とか言うて見たらな、っちゃい鳥や。


 何言うとるか分からんやろけど、大丈夫や。俺にもさっぱり分からん……


「ぴぃ~や」


 しかもけったいな鳴き声やで。何やこいつ?



 ……で、話はこっからやねんけど~。


 さらに視界をバッ! て、黒い影が横切r……いや上から下へ落ちてってん。

 フッ、てそっち見たら、そいつ黒猫やった。図書館の屋根の上から、ポ~ン飛び降りたみたいや。


「あらすみません、ウチの小鳥チビがご迷惑を……」



 えっうせやろ !? こいつしゃべるんかい !!



 ◇


 少々、時を戻そう。

 アインツの中央広場から北北西へ。市立図書館だ。


 石造りの立派な建物に入って、入館手続き。

 ……といっても、まだ昨日の今日だ。冒険者組合員証シーカーズ・カードを魔水晶にかざすだけ。


 わぁまぶしい! 以外は楽でいいよな~。


 あとはぞろぞろ引き連れて中庭へ。これ大丈夫なんだ……ありがたや~!


「ほあ~……拙者せっしゃ特に何もしてないけど、今日もお疲れ~……」

「「早い早い早い」」


 ……そうだな、まだ目的の本も見てない。けどログインして十数分のうちに、2回も気絶させられたらさ~……やる気もげるわ。


 なのにうっかり座っちゃった……


「あ゛~動きたない…………本棚が来いや……」

「ファンタジーかホラーかどっちやー?」

「ほんまそどぅおぉぉい !? 」

 

 でろでろ駄弁だべってたら、ボーゼのコーヒーに、真っ白い何かが飛び込んできてん。


「はぁー !? 」

「何や何や~ ?? 」


とか言うて見たらさ、小っちゃい鳥や。

 マグカップから出てきて、軽く水分飛ばしてから、鳥さん一言。


「ぴぃ~や、D'youぢゅ knowのう what Iわらい meanみーん?」

「キェアアアシャアベッタアアアアア !? 」

「「じゃかまっしゃ……」」


 ネット民の悪い癖が出とるっぽい、ボーゼにツッコみつつ。

 この鳥さん、今英語かなんか喋ったよな? 異人プレーヤーでっか ??



 ……とか言うとったら、今度は視界を黒い影が横切r……いや上から下へ落ちてった。

 思わずそっち見たら、黒猫……?


「あらすみません、ウチの小鳥がご迷惑を」

「「「ゑ……?」」」


 二足歩行やと……?

 何なにナニ怖い! アンタも喋るんか !?


「ボーゼさんと、えすとっきゅーさんですよね? 申し遅れました。わたくし、“そばぎり”と申します」


 一礼する黒猫さん。なんか蕎麦そばにこだわってそうやね。

 “蕎麦切そばぎり”言うんは、蕎麦めんの別の言い方や。蕎麦湯とか蕎麦ボーロとかと区別して、そない言う時がある。


 ……ん? そういやボーゼのライバル“県北の人”て、たしかそb……


「で、こちらの鳥が“そばがき”、私の兄です」

「「「……んん !!? 」」」


 マジで? 県北のめっちゃゲーム上手い人 ?? 本当ほんとに ???


「嘘やろ、このチビが ?? マジで ??? 」

「D'you know what youわちゅ mean?」

Ofおふ courseこーす Iあい knowのう. ……腹立つなこいつ !! 」


 “アンタ何言ったか分かってる?”“もちろん分かってる”

 ……標準語に訳したら、多分こんな感じ。つまりボーゼと「そばがき」さん(推定)は……


「「ケンカすな、仲ええのぉ?」」

にいさん、あおりすぎです。挨拶あいさつが先でしょう?」

「「はい……」」


 出会いがしらに、互いをおちょくり合ってました。



 何しとんねん……



 ◇


 それより気になるのが2点。

 まず、そばがきさんの喋り方。ミュージカルみたいな、妙な節回ふしまわしがついてるんだけど?


 そしてもう1個は……


「あのー、すんませんけど……何かこう、本人確認みたいなもんは……?」


 えすとが今いたこれ。マジで本人か?

 いや、そもそも俺は知らないから、確認もクソもないけど。


「ぴぃ……あ。“ファンフリ”に、よぉんさった」

ありがとうございますアザーッス。 ……ガチの但馬弁たじまべんや」


 そばがきさん確定、だって。


 んで、標準語に訳したら「よく来なさった」てとこか。へぇ~……

 俺らやと「よぉ来たったな~」とかって言い方になる。同じ県内だけど。


 あと、そばぎりさんの喋り方。俺らとか大阪の人よりも、岡山とか名古屋の人に似てる。

 けど別物……て印象だ。

 俺らと同じ県内だけど。奥が深いなぁ……


「そちらの方は“初めまして”ですよね……?」

「おっと失礼しました。ジンジュです、よろしくお願いします」

「こちらこそ」


 そばぎりさんが話しかけてきたから、丁寧な標準語ソトヅラ・モード発動。そして一礼。

 俺らより年下らしいけど、しっかりしてるな~。


 ……とか思ったら、横からえすとが一言。


「せや、猫やからって語尾に“ニャ”とかつかへんねんなー?」

「そんなことないですニャ~ン」

「「取ってつけたように……」」


 ……ん !?

 待て、ボーゼとそばがきさんは……


「ほんで? 元気しとったかチビっ子 ?? 」

「元気元気~、西と南を行ったり来たりだよ。で? 鉄砲玉とびだしぼうやこそ何してんの ?? 」


 早くも不穏。茶番やろうけど酷い。

 これが煽り愛、いや煽り合いか……


さそとった友達来たからさ、レベル上げ。ついでに仲間が増えたよ、やったねガキちゃん!」

「それが小鬼ミニゴブ小兎ミニラビ、プチスラ……一揆でも起こすのかお前?」

「普通に冒険するだけやけど ?? そんなん煽って何がおもろいねん……」

「じゃあ赤穂浪士あこうろうし?」

「赤穂義士ぎして言え、怒られるど ??? 」


 播州人おれらのイメージ悪すぎひん? んないちいち反乱起こさへんて。

 少なくとも俺は体制の犬ゆうとうせいやし。わんわん。


 いやホンマに。


「熊がかわいそう」


とか、んな怖いことよう言わん。きゃいん……


 あと、赤穂の人に“赤穂浪士”て言うんはマジでアカン。困ったときは「赤穂義士」。

 覚えてや、テストには出えへんけど。


「んな話どうでもええわ。お前何なん、その歌劇ミュージカルみたいな喋り方 ?? 」

「仕様だってさ、鳥系異人プレーヤーの。 ……運営の意地悪いじわる! 僕知らないもん !! 」

「突然の幼児退行わかがえり……」


 ボーゼはツッコんだ。必ず、あのチビ鳥の謎を解き明かさねばならぬと決意した。ボーゼには遠慮が分からぬ。だが(※自主規制ピー)には、人一倍敏感であった」

「「聞こえてますよジンジュくん ??? 」」


 急に、ボーゼとそばがきさんがこっち見て、一言。笑顔て怖いんやな~……


「あれ~ !? 声に出とった ?? 」

「おいおいんだわアイツ……」

「合掌……」


 この後俺は、一発ずつどつかれました。えすともそばぎりさんも、特に助けてくれなかった。

 やむなし。くら凡人ボンは、かぷかぷ笑ったよ。



「まあええねん。図書館でケンカする奴がおれへんなら、それでさ~」

嫌味いやみか。もっと普通に止めんかい」


 はい、ですね。



 ◇


「で? お前ら結局何しに来てん ?? 」


 ボーゼにツッコまれたんは、俺と小鳥そばがきさん。順番に答える。


「俺は昨日の続き。『基礎魔法学概説』を読みに来てん。駄弁りすぎただけや」

「僕は“知り合いいないかな~?”と思って。この体、本借りるどころじゃないからね。あわよくば見せてもらおう、と」



 てなわけで、時間の許す限り読んどいた。途中までやけど。

 分厚いし、図鑑も見直したからな。


日刊デイリークエスト「本を読もう!」をクリアしました》

《従者「とがの」「はっさく」が、『アインツ公国動物図鑑』を読破しました。以下の条件が満たされています》

《「とがの」「はっさく」の〈動物知識〉が開放されました。SP:3で取得できます》

《「はっさく」の〈人類共通語〉がLv.2になりました》



 じゃあ帰ろっか。

 明日やな~……



――――――――――――――――――――

▶️▶️▶️ [第2章] へ つづく ! ▶️▶️▶️



【追記】一部加筆/修正しました

(2025/08/18)


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