031:青ゴブリン、東の街へ③

 ◇


 鶏を追い払ったり、牛をでたり、兎を見つけたり……街道を楽しみながら。


 さらに歩くこと、30分あまり。遠くに見えてた壁が、目の前に高くそびえてる。

 石の城壁じゃない、茶色い土手どてだ。



 お~っっ歩っ歩! ついに、ついに「イース市」に、着いた~ッ !!



「……街と街の間、近ない?」

「逆に聞くけど、お前ゲームで3日も4日も延々歩きたいか?」

「いや~、全然」


 ボソッと言ったら、ボーゼが渋い顔で聞き返してきた。なーんなこと思い出したんだろうな~。


 ……うん、ゲームにリアルって、そんなに要らない。

 真っすぐ街道歩いたら、1時間半ぐらいで次の街。ありがたいよな~。


 で、次は検問か。また並んでるな~……あっ。


「ふす、ふすふす……!」

「大丈夫大丈夫、そんなに怖ないから~」


 小刻みに震えとるとがのを抱えて、頭を撫でる。よしよし……落ち着いてきた。

 じゃあ冒険者組合員証シーカーズ・カード出して……


「よし、次!」

「「「「お願いしまーす!」」」」

「……おお、珍道中だな」


 なんか知らんけど、街の人に言われるな~……?

 で、衛兵のおじさん、とがのをガン見してる。


「ふす……?」

「……もしかして、アインツで話題になってた牛柄の子?」

「えっ……あ~、多分そうです。連れてったらまずかったり?」

「いやぁ、大丈夫でしょ。結界通れてるし」


 信頼されてんな~、結界。判定基準とか、私、気になります。


「はい、ご協力ありがとうねぇ。 ……問題なし! 通ってヨシ !! 」

「「「「ありがとうございますあざーっす!」」」」

「気をつけてねぇ。 ……よし、次!」


 アインツ公国東部、「イース市」に……入った~!


 土手の内側は、首都「アインツ市」よりちょっと広そう。奥に石の城壁が見えとるし、その向こうには、建物が仰山よーさんある。

 街はあっちなんだって。


 ……え? 「じゃあお前、今どこだよ!」?

 郊外の農地みたいだ。

 畑がブワーッて広がってる中に、作業小屋っぽい木造平もくぞうひらがぽつぽつと~。



 ……ええ景色や。



 街道の両脇は、ぶっとい用水路で固めてある。水路は石垣3面張り、かな? コンクリではなさそう。


 ……異世界にもおってなんや、石垣職人さん。へぇ~……Unknownアノンしゅう


 で、その用水路をまたいで、街道から畑に下りる畦道あぜみちもある。畦道に沿って、水路が張りめぐらされてるな。

 水は左から右へ、前から後ろへ流れてる。俺らは東へ進んでるから、どこか北東のほうに水源があるようだ。


 ……まあ細かい話はええねん。それよりこの水の音!

 細い水路のチョロチョロ……とか、合流点のダバ~……とか。風の音と行きう人らの話し声に混じって聞こえる、この音がいい。

 夏らしい、涼しげな音だ。最高。


「最高……農家さんとか技師さんらに感謝y」

「みんな見てよ! 美しい自然だ~ !! 」



 ……うるさいな、前の女性配信者しらんひと



 ◇


 イース市の街と農地を区切る、石の城壁まで来た。いよいよ門をくぐって、街に入る。


「「「「こんにちは~」」」」

「おう、ようこそイースへ! 楽しんでこいよ !! 」

「……ふす~?」


 若い衛兵さん、元気! 寝とったとがのが起きるくらいには。

 断じて、野球部えすとのせいやない。断じて。


「くあ~……ふんす!」


 ……この子、何でボーゼのほう見て欠伸あくびしたんだろ?


 まあいいか、それより街の話だ。

 目の前には、石畳の大通り。その両側には石造りの建物が建ち並ぶ。

 ここまではアインツと同じ……と思わせて。


 ちょこちょこ木組みの建物が混ざってる。全体の1割くらいかな? 数字は知らんけど。


 で、イースも大通りがバーン! って街をぶち抜いてるみたい。すぐ後ろの城壁とは別に、遥か前方にも石の壁が見える。

 街の反対側、東側の城壁だろうな~。



 で、そのちょうど中間点あたりに、女性的な人影が見えてる。けど人間にしては大きすぎるし、全然動かない。


 ……こ、これは! 女神像 !?


 女神像を見たら~? さんはい、おがめ~ッ !!


 ……なむなむ。



「何も起きんな~……」

「そりゃそうだ、遠すぎんだよ」


 はったさんにツッコまれました。

 ……はい、ほな行きましょ~。



 ◇


 皆さん、クエストは条件達成したら終わり、ではありません。

 冒険者組合シーカーズ・ユニオンに報告するまでが、クエストですよ……


 で、『ファンフリ』の場合、組合の建物は街の中心部にあるんだって。女神像や教会などと一緒に。

 門から徒歩20分あまり、植え込み多めの広場。


 つ ま り こ こ で ~ す 。



 ど~でもええけど、道中、えすとが一言。


「また呼び○み君……」

「「知らんがなお前」」



 話を戻そう。

 女神像、もう1人立ってる。南側から、向かって右に謎の女神様。小柄で眠そうな目つきしてる。

 で、向かって左に変態ベーシスト女神:シトリー様……


『やめてください、世のベーシストに失礼ですよ~』


 ゑ !? 急にテレパシー ??? いやサーセンした……

 じゃあ改めて、手を合わせて。


《アインツ公国東部の都市「イース市・中公園」の入口ポータルが開放されました。復活地点に設定できます》


 あざ~っす。

 次は報告だな、組合の建物は~……


 始まりの街アインツのを一回り小さくした感じか。それでもデカァい……!



 で……



「わ~、また並んどる~……」

「「 そ ら せ や ろ 」」



 ……知ってた。


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