023:青ゴブリン、また○ぬ

 ジンジュです。

 〈初めての大盾〉で、突っ込んできた幽霊ゴースト鹿ディアを受け流した……ら、そのまま倒せました。



 いや何で……?



 とりあえず見に行こうか、どこに飛んでったか……



 ◇


 しげみを抜けて、さっきの木の裏に出た。前にも来た、ひらけた所だ。

 お? 幽霊鹿、見っけ!


 ……それより、何か色んな物が散乱さんらんしてるのが気になる。

 それも、複数人の持ち物をぶち撒けたかのような、不自然な散らかり方だ。



 怪しい。どう見ても怪しい。



「……そこ隠れとけ」

「「「了解」」」


 ボーゼに言われて、3人で引き返す。なるべく静かに。

 ちょっと戻って、茂みに引っ込んだ。


 10秒ほど遅れて、ボーゼも来た。


「誰か来る、静かにな」


 3人そろって、無言でうなずく。


 ……今のうちに、【鑑定】結果を見ておこう。


―――――

ゴーストディア(♂) Lv.15[討伐済]

(分類)魔物/動物型

 森などに現れる、鹿の亡霊。彷徨う亡者アンデッドの一種。

 通常のディアより身軽だが、自属性以外の魔法に弱い。


 HP:0%   MP:25%

―――――


 ふむふむ、やっぱ魔法に弱いんだな。


「お、来た来た」

「何や昨日のあいつらか」


 どれどれ……


「何だここ、気持ちわりい……」

「しっ、後ろから誰か来るよ。さっさと行きましょう」


 頭の上のお名前は、“ハノレトマン”と、“ゾルゲマニア”……ぜればよろしいかと。

 あとは何も言うまい。



 ◇


 2人が足早に立ち去った後、やかましい野郎どもの声が近づいてくる。


 ……やけにうるせぇな。10人くらいいる?


「ヒヘヘ、運がいいですぜ兄貴ぃ! デスペナで誰かがぶち撒けたアイテムが、山のように……」

「おぉ、そうだな。たんまりかっぱらってヤれ !! 」

「「「『うおおおお !!! 』」」」


 もしもしお巡りさんポリスメン



 ……さすがにいないか。ゲームだし。



 まあネタはおいといて、あの“兄貴”って人だけ、名前出てんだよな。


 ……頭の上に、「▽わかもののほし」って。


「ふんす!」

「……アッしもた! 戻れとがの !! 」


 駆けだしたとがのさんに、声をかけた……けど、多分聞こえてない。ひそひそ声のままだった……!


「兄貴、あれって昨日の」

「……またかよ畜生め!」


 あぁ~見つかった、どうしよう……

 ……仕方ない、ここはアレで行くか。足軽装備を収納して……身体かりい~ !!



 ……おほん、失礼しました。じゃあ……


「とがの~! 返事してけろ、とがの~ !! どこ行っただぁ~?」


 昔の時代劇とかに出てくる、関東の百姓風に。名付けて、“お代官でぇかんさま、らひもじいだ……”作戦。


 間違っても東北弁じゃない。アクセントが違う。東北の人に怒られるよ?


「あ、待ってけろ !! そん子はウチん子だ! おねげえだ、返してけろ !!! 」

「「「『……何だコイツ ??? 』」」」


 沈黙が広がって、俺以外の時が止まって見えた――その時。


「……ごべぁッ !? 」


 急に、後ろから衝撃が来た。で、首の左側に激痛が走る。

 あと通知も来た。


《抵抗に失敗しました。状態異常【即死】が付与されます》

《HPが失われ、行動不能になりました。10秒以内に蘇生が確認できない場合、復活転移リスポーンを始めます》


 何これ、力が入らん……あ、膝から崩れ落ちた。

 首の切り傷から、ポリゴンをどくどく・・・・き散らしてる、小鬼の後ろ姿が見える。


 ……あ、これ幽体離脱してんだ! 半透明になって、自分の分身アバターを見下ろしてるんだな。



 いや負けすぎやろ、可哀想に……



 で、視界を黒いかたまりが飛び回ってる。あっ止まっ……女の人ぉ !?


 とりあえず、小柄な女の人。今の俺より10cmぐらい高いけど。黒いドレス、帽子、靴と、ベール……喪服か?

 その左手には、ポリゴンがしたたる短剣……ってなんか野郎どもが倒れた !!



 何したの、この人 !??


《従者「とがの」が、異人プレーヤー「わかもののほし」を討伐しました》

《蘇生が確認できませんでした。「アインツ・中央広場」への復活転移を始めます》


「な、ななな、何じゃこりゃ~~ !!? 」


 叫びながら光に包まれた。



 ◇


 ……見慣れた噴水だ。

 とりあえず、まずは女神像シトリーさまに礼。ありがとうございます!



 で、今度は何だ……?



「……クソッ! 何であんな所にキル数1位がいんだよ !! 」

「あ゛ーっ、アイテム全ロス !? 」

「うわ最悪…… !! 」



 …… う る っ っ さ !



 “わかもののほし”ご一行が、続々と転移してくる。ブーブー文句垂れながら。

 あまりにも騒がしいから、めちゃくちゃ周りの視線を集めている。



 ついで、で見られる俺の身にもなれ……



「あ゛? テメェ何見てんだよ !! やんのかコラ !? 」


 ……とか思ってたら、うっかり目が合った2人組が、こっちに歩いてくる。

 距離取ろう、と思って、後ろに下がる。


 視界の左端が光って、ドシッて誰かにぶつかった。


「すみません !! 」

「お? どこ見てんだクソ餓鬼ガキ !? 」

「へい、すいやせんでした !! 」


 土下座したら、後ろから一言。


「あれ? ソイツさっきのヘボゴブじゃね?」


 ……ヤバい、囲まれた !!


「あーっ! お前のせいで……お前のせいで、俺たちまで死んじまったじゃねえか !! どぉしてくれんだよ !? 」

「そうだそうだ !! 責任取れよ !? 」

「おうおう誠意見せろよ。土下座じゃ済まねぇからな?」


 つば飛ばすなや、ちゃないなぁ !?

 あと、そんな大声出さんでも聞こえとるし!


 ……これを柔らかい言い方で、


「……あ゛? ワレ何どい ?? しばき回すぞしゃーきゃーっそ ??? 」



 …… あ゛~ ッ 、 や っ て も た ~ !!


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