011:青ゴブリン、○に戻る

 ども、ジンジュです。

 友達と3人で、茶狼4頭を倒しました。


 ……と思ってたら、知らない異人プレーヤー2人組に襲われました。

 ギリギリ生き延びた、と思ったら……



 日焼けにやられた! 日焼けにやられたッ! バカーッ !!!



《蘇生が確認できませんでした。「アインツ・中央広場」への復活転移リスポーンを始めます》



 ぴろーん、って通知音を合図に。

 俺はまた、見慣れない光に包まれていく――――



 ◇


 光が消えたら、そこは噴水の前。

 活気あふれる石造りの街、その熱気が……



――そんなことより顔熱い !!



 ドーモ、皆=サン、ジンジュです。

 軽やかなネット民風に、現状をお伝えします。どうもこうらしい。


【速報】弱ゴブ、初日から死に戻り! 死因は日焼け!?

【朗報】復活転移リスポーンで全回復完了!!

【悲運】元いた場所


 ……どうしよう?

 とりあえず、女神像シトリーさまおがもう。なむなむ……



 ……お待たせしました。

 まずは2人に連絡を……通知来た。


《異人「えすとっきゅー」からPTパーティー通話チャットに呼ばれています。通話に参加しますか?》


 “はい”一択だぁ……


「もしもし?」

『おうジンジュ、さっきはすまん』

「そらしゃ~ない。それより、後どないしよ?」

『ちょっと待っといてー、召喚するから』


 ……ん !?


「はい?」

ちゃうねん、人外やったら異人プレーヤーでもべるみたいでさ』

「何その抜け道~?」

『知らーん。運営に聞いてー』


 ん~……まあいいか。


『動くなよー? 【召喚サモン】、“ジンジュ”!』


 えすとが唱えてから5秒。俺の足元に、不気味な紋様が浮かび上がった。

 薄~い紫色に光る……魔法陣ってやつ?


《異人「えすとっきゅー」に召喚されました。【召喚】を受諾しますか?》


 ……また見慣れない光に包まれるのか~ !!

 まあ、今から1時間歩くよりはマシか。“受諾する”で。


《【召喚】を受諾しました。転移を始めます》



 ◇


 光が消えたら、さっきの草原。ボーゼ、えすと、牛柄ちゃん(仮称)、もう1羽別の小兎ミニラビットがいる。

 あと、さっきの兄ちゃん2人組も。捕縛ほばく済み。



 ……何この混沌カオス



「何この……何?」

「「いや語彙ごいりょく」」


 2羽目の小兎は、レベル5のオスらしい。全身、絵の具をベタ塗りしたみたいなオレンジ色。

 そんなのいるんだ……へぇ~。


「……ぷう」


 牛柄ちゃんよりも、さらにおとなしい。

 じーっ……と、こっちを見てる。正直気まずい。


「ふす、ふんす」


 その隣で、「私が姉です」といわんばかりの牛柄ちゃん。

 ……珍しく、鼻息荒いところに悪いけど。お前、草食って走ってるだけじゃねぇの?


「ん゛ーっ、 ん゛ん゛ー !! 」

「ん゛ーん゛ー、 ん゛ん゛ー !!」


 2人組のほうは、手足口を封じられてる。たしか“ハノレトマン”さんと“ゾルゲマニア”さん、だっけ?

 頭の上に出てるお名前が、橙色になってる。それって、“要注意人物”ってコト……?


 で、レベル18と16か。勝ち目なさそ~。

 あと、とにかくうるさい。特に顔がうるさい。


「……何この人ら? 執行中~??」

「いや、犯行動機とか聞くんかなー? とおもて」

「そらどうも……」


 なるほど、余計なお世話だ。魔法と呪文のある世界で、敵にしゃべらせろ……ってか?

 さすがに破滅願望はないわ~。


 あと俺、“動機を聞くほど不毛なことはない”、って思う。

 理由? 手口を聞くのと違って、「じゃあどうしろと??」って話になるから。



 心当たりあるでしょ?



「俺は“このまま放置”で行きたいけど……あとはお任せしま~す」

「何でや阪○?」


 えすとが引っかかったか~。簡単な説明……


「この人らさ~、まだMPあるやん? 動機なんか聞いて、素直に言うてくれると思う?」

「え……じゃあ何するん?」

「俺やったら、目の前のカスゴブリンに【風の癒しウインド・ヒール】とかぶつけるかな~。“殺したいほど憎い”んやろ?」

「「んー !? んーんんんんんんんんんんんんーん !! 」」


 絶句するえすとと、黙ってうなずくボーゼ。そして外野がやかましい。

 “はぁー !? そこまでやるほどちてねーよ !! ”とか言ってんのか?

 今更そんなの、誰か信用するとでも……?



 甘いわ。



「で~、俺に手ぇ下す力はないし、お前らが手ぇ下す価値もない。やったらこのままっといて、縄張り目当てのウサちゃん達にお任せしよかな~……て」

「「んー! んーんんー !! 」」

「「うわぁ……」」


 ちょっと待て、何でお前らが引いてんだ……。


「お前マジで……マジでえげつないな……」


 そう言えるえすとは、マジでいいやつ。なぜか?


「何言うとんねんお前ら、ここは確実にトドメ刺しとかな」

「頭ゴル□゛かよ! お前マジで……」

「お前が一番ヤバいやんけ~」


 安定のボーゼさんがいるからdeathデス !!


 ……いや、俺が変な死に方したせいで、彼ら“PKerプレーヤー・キラー”じゃないんだ。あくまで要注意人物であって、犯罪者じゃない。

 迂闊うかつに倒せば、逆にこっちがPKerになる。それはダメでしょ……


「異人やろ? どうせ生き返るんやし、時間もったいないわ~。早よ次行こ?」

「まあ、お前がそれでええんやったら……」



というわけで、森に入ろうとした……ら、2羽の小兎が追いかけてきた。

 牛柄ちゃんとオレンジくん(仮称)だ。どっちも草くわえてはない……けど、まだモグモグしてんな牛柄ぁ~? 太るぞ~ ??


「……さんッ!」

「「誰が忍者やねん」」


 えすとのボケは置いといて……

 またちょっとバラけてみる。牛柄ちゃんは俺、オレンジくんはえすとについてくる。


 森の手前で合流。


「何でや、何で俺にはついてけぇへんねん……」

「狼づらして狩りまくったからやろー?」


 ボーゼのぼやきに、えすとがド正論を返す。さらに付け足すなら……?


「しかも美味いからって、兎肉食いまくったか~?」

「チッ、バレた」


 ……やっぱりな~。



 じゃあ、森に入ろうか――――


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