003:青ゴブリン、友達と合流

 どうも~、ジンジュです。無事、友達と合流しました~。

 で、彼らの第一声がこちら。


「「まさかのミニゴブリン…… !! 」」


 挨拶あいさつには挨拶で返しましょう。“親しき仲にも礼儀あり”、ってやつだ。


「……よ~お前ら、人間やめたんか?」

「「何ちゅうこと言うねん !? 」」


 けったいな挨拶に、けったいな挨拶を返しました。

 現場からは以上です――



 ◇


「フフッ、他人事ひとごと……第一声それでええんかお前は」


 ウルフ獣人ビースター異人プレーヤー“ボーゼ”の、ほおゆるむ。


「大丈夫だ、問題ない」

「いやそれアカンやつ」

「さよか~……まぁよろしゅう」

「はいはい」


 人間の輪郭に、青白い毛並み、鋭い目つきと犬歯キバ、そして爪……って感じ。

 革の鎧は赤茶色で、える。


 目が疲れるとも言う。



 元々、俺ら3人では一番背が高いんだけど。さらにデカく、筋肉質になってる。

 これが……種族補正 !?


 ……あ、俺がちぢんでる前提で、だよ?



「おー……元気やな研志けんじおもて出る?」


 森人エルフの異人“えすとっきゅー”のほうは、ニコニコ笑顔。略すなら、“えすと”かな?

 いや実名出すなこの野郎……


「とっくに出とぉやろ~? あとネチケットて知っとぉ ?? えすとさん ??? 」

「勝手に略すなや」

「アッすまん」


 悪いクセが出た……


「本人確認、ヨシ!」

「“ヨシ 意味”で検索せぇ……」


 ボーゼの横槍に即ツッコむ、えすとっきゅー。  ……いや待て。


「……俺の何で確認取りよった?」

「勘のいいガキはきr……」

「「お前も未成年ガキやろ」」


 ……はい、話を戻します。

 えすとっきゅーは色白イケメン細マッチョ。彼の背も、元より高くなっている。


 ふわっふわの金髪は、色薄め。たしか“アッシュゴールド”やっけ? 派手すぎず地味すぎず、いい色だ。

 これも種族補正か。リアルと真逆だな~。


 で、神官風の衣装と長杖ステッキ……オメーが魔法使いか。じゃあよろしく。



 ◆


 余談だが、2人は俺の同級生だ。

 ボーゼは数学研究部すーけんの1年生エース、えすとは野球部期待の新人……といわれている。


 ただし、ウチは県立高校。

 それも進学校だ。スポーツ系の部活は「地味に強い」程度。

 えすともあくまで、市内の有名人にすぎない。少なくとも今はまだ、ね……



 一方、ボーゼは数学オ○ンピックを狙える実力者らしい。

 だが環境が、それを許さない。数学研究部の現状は「ほぼゲーム部」だからだ。


 しかも本人、格闘ゲームかくゲー上手うますぎた。“速い、上手い、口悪い”のさんびょうそろった人気配信者になりつつある。


……いや、動画見たことないけど。

 1本2時間 ?? ぎょうか ???



 ◇


 また話を戻しま……ん?

 待て、はいしゅう ???


「うぇッ……誰やゾンビで街来たヤツ !? 」

「「大丈夫か !? 」」


 えずくボーゼ。獣人は鼻がくらしい。そこにゾンビの腐臭はキツい。


 ……あれ? 何で分かったの ??

 それっぽい人の姿形は見えんけど……


「種族的に……匂いで姿形まで分かるんや。 ……俺の風上に立つな」

「ゴル□゛か!」

「お前余裕やな~ !? 」


 お元気そうで何より……



 そうそう、えすとは関東生まれだから、でちょくちょく標準語が出る。

 ボーゼと俺は? 関西人の端くれ(物理)だ。標準語を使うのはおおやけの場か、ネタかの2択だな。


 あと、ツッコミ2人はテンポ悪いな~……



「……そこの3人さん、ちょっとええかな?」


 その時、突然背後から聞こえた、第4の関西弁おとこのこえ……



 い や 誰 ~ ??



 思わず振り向いたら、そこにはスーツ着た若いサラリーマンが……何でや阪○?


「あっ “ぶるダイ” さん、ご無沙汰ぶさたしてます!」

「お久しぶりでーす!」


 ボーゼとえすとが一礼した。


「お久しぶりです~」


 “ぶるダイ”さんも一礼を返した。

 高すぎず低すぎず……で、聞きやすいけど、ざらついた声だな~。


「ジンジュさんですね?」

「あ、はい!」

「はじめまして、GMゲーム・マスターの “ぶるダイコン” です。先ほどのお問い合わせの件で来ました」

「あ~、ありがとうございます!」

「はい。よろしくお願いします。が、その前に……」


 ぶるダイさんがタッチパネルを出した。


「皆さんのことで、こんな連絡が来てます……」


 そう言うたら、ぶるダイさんはタッチパネルを開けて、俺らに見せてきた。


―――――

『スタート地点に大きな声で、聞いたことない日本語を喋っている人達がいて怖いです』

『アインツの中央広場に、関西弁でケンカしてる? 3人組がいます。注意してください』

『関西弁の男?どもがうるさいです。マナー違反では??一声かけてもらえませんか?』


 ………

 ……

 …

―――――


「「「すみませんでサーセンした

!! 」」」


 3人仲良く、元気に一礼。 ……ヨシ!


「はい、気ぃつけてくださいね。ほなジンジュさん、少々お待ちを……」

「はい……」


 ぶるダイさんはタッチパネルを操作しだした。



「……にしても関西弁、関西弁てさ~……ここ、東京のゲーマーしかおれへんの?」

「「んなわけあるか !! ……知らんけど」」

「やんな~」


とか言うとったら、ぶるダイさんがまた、タッチパネルを見せてきた。


「そうそう、こんな報告もありました。『アインツの噴水前で、播州人ばんしゅうじんがケンカしてませんか?』」

「分かるヤツおったわ」

「やっぱおってやんな~……」

「ペロッ、これはー……関西人の犯行!」


 これは三者三様の反応。ほなツッコミのお時間です。


「犯行て……言い方よ」

「えすとさ~ん? そんなもんナメんな~ ?? 」

「やから勝手に略すなって……」

「……あのー、話進めてええかな?」


 閑話かんわ休題きゅうだい



 ◇


「ところでジンジュさん、外国語の罵倒語で、何か知っとんのあります?」

「……“Putainピュタン do*erudoド・ールド”、とかですか?」


 ぶるダイさんの妙な質問に、軽く返す。

 けど中身は、フランスのヤバい暴言です。“娼婦がどうこう”……って意味だから、極力使わないように。


 ……ん !? 何か急に、周りが騒がしくなった?


「……え? ちょっ、何 !? 」

「は? 《Fワードを検出したため、配信を停止しました。》!? 何でだよ !!? 」

「誰だ “F*ckフ・ック!”って言ったヤツ !? 」

「「「『それはお前じゃい !! ……』」」」


 ………

 ……

 …



 しかも空気ヤバい。何事……?



「ジンジュ、ここ入れ」


 青ざめた顔でボーゼが言う。で、何か通知来た。


《異人「ボーゼ」から、PTパーティー “お城と……横顔新幹○やー!” に招待されました。参加しますか?》


 ツッコミ……はあとだ。“はい”で。


《PT“お城と……横顔新幹○やー!”に参加しました》


 で、早速ボーゼが一言。


「……いや、お前を隠し撮りするヤツが悪いで? それも“時間差なしの生配信”とかアホすぎる」


 隠し撮りぃ?

 しかも生配信やて~ ?? いつの間に、そんな恐ろしいことが……


「でもよりによって、アレ言う? “Fu*kファ・ク”とかやのうて ??」

「いや、ちゃうねん。“福岡ディスり”は俺の信念に反するから……」

「全国の福岡人に謝れ」


 苦しい言い訳に、まずボーゼがツッコんできた。

 “博多の隣”以外だと、たしか岡山、富山、岩手と……東京かどっかに“上福岡”もあったっけ?


「あと、全国の“福岡さん”にもな」

「えらいすんまへん……」


 えすとのツッコミも聞いてから、頭を下げた。


「……どこのバンドマン?」

「たしか英国イギリスの人、やったかと」


 なんか昔、“福岡にはFu*kがある” とか言ってた人がいるらしい。


「「お前、そんなんどこで覚えたんや?」」

「さぁな……?」


 もはや記憶にございません……



 ◇


「……てなわけで、噴水落ちた時のダメージが、本来の10倍になっとったわけです。それでレベルが上がってもた、と」


 ぶるダイさんの、ありがた~い解説おことば

 あ、そうそう。“えすと”も“ぶるダイさん”も、呼んでいいって許可取れました。

 あざ~っす!


「これを修正するには、一旦キャラデータを池ポチャ前に戻して、正しい数値を入力し直す……って方法取るんが、一番確実です。 ……ここまでは大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です」


 変に小細工するより、最初からやり直したほうが確実なこと、あると思います。


「ですが、これを今そのまんまやると危ない。なんで、ジンジュさんには一旦ログアウトしてもろて、作業終わるまで待っていただきたいわけです」

「わかりました。 ……お時間どんぐらいですか?」

「そうですねー……」


 ちょっと考えるぶるダイさん。


「担当者は『リアル1分ちょいで行ける~!』て言うてますけど、念のため “3分間待ってやる” でお願いしますね」

「急にジ○リ……」

「ツッコミありがとう。で、終わり次第こちらからメールしますんで、ログインし直してください。お手数おかけしてすんません……」

「いえいえ、ほなよろしくお願いします」


というわけで、俺はぶるダイさんの言う通りにタッチパネルを操作して、ログアウトした。



 ま~た、白い光に包まれたんだなぁ……


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