第4話

水槽の裏のスタッフ通用口。

春樹は、鍵を差し込み、ゆっくりと扉を開けた。


そこに、彼女の姿はなかった。

だが、扉の奥には確かに、誰かが通った痕跡があった。


彼女は、死んではいない。

すべてを自分で終わらせ、姿を消したのだ。


——贖罪ではなく、告白を残して。


静かな水槽の中、ふわふわと漂うクラゲ。

その奥に、彼女の“目”がある気がした。


それは、自分が犯した罪を映し続ける、永遠の鏡。


いまもどこかで、

水槽の中から、自分自身を見つめ続けているのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

水槽の中の告白 @shino_282

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る