第9話 2人で
「俺はなんでまたこんなところに連れてこられてるんだ?」
とある休日、柊人と涼香の2人はデパートへと来ていた。
「しょうがないじゃない、私も柊人もシャーペンの芯が無くなったんだもの」
元々家で勉強していたのだが、涼香のシャー芯が切れてしまい、このままだと勉強が進まないため買いに来たのだ。
「いやまあそれはわかるんだけどもさあ」
「何よ、なんか不満があるわけ?」
涼香は不満そうな顔をした。
「なんでアイスクリーム屋に来てるんだよ!シャー芯買いに来たはずなんだけど!?」
何故か涼香はアイスクリームを頬張っていた。
「あら、しょうがないじゃない、目の前のアイスクリームが食べて欲しいって顔でこっちを見てたんだもの」
涼香は真面目そうな顔で言った。
「まあ落ち着きなさいよ、これ食べ終わったらちゃんと買いに行くから」
「ほんとかよ、、」
涼香の言葉はあまり信用出来ないので、半信半疑の柊人である。
「それにしてもお前って意外にも甘党なんだな」
涼香はいつもスイーツやらなんやら甘いものばかり食べている。
「意外にもって、、私をなんだと思ってるの?」
「いやなんかイメージ的に甘いもの好きじゃないのかなって、辛いのとか平気な感じなタイプなのかと」
「辛いのは嫌いよ、あんなの人間が食べるものじゃないわ」
「美味いだろ辛いもの、俺は逆に甘いものの美味さがわからん」
涼香に対して柊人は大の辛いもの好きである。週1で超激辛ラーメンを食べに行くほどには大の辛党である。
「あら、人生損してるわねあんた」
「お前こそな」
涼香に得意気な顔をされたので柊人はそれをそっくりそのまま返した。
「ん、ほら」
涼香はアイスクリームを柊人に近づけた。
「ん?なんだ?」
「ほら、食べてみなさいよ、美味しいわよ?」
「は!?何言ってんの!?」
柊人は驚き思わず少しばかり大きな声を出してしまった。
「?、何が?」
(こいつ気づいてないのか??)
どうやら涼香は関節キスになることに気づいていないようだ。
(さすがに食べるわけにもいかないしな、、)
これで食べてあとから涼香に気づかれて何か言われるのも困るので、指摘してあげることにした。
「俺はいいけど、これ関節キスになるぞ?」
「あら、気づいてたのね」
「は?」
予想外の回答に柊人は困惑した。
「せっかくのチャンスをものにしないなんて、もったいないわね」
「いや、チャンスって言われても、、どうしたお前急に」
ずっと意味のわからないことを言っている涼香に柊人はさらに困惑した。
「あら、いらないなら私が全部食べちゃうわよ?」
涼香は悪い微笑みをしながら言った。
「いや、、、、自分で食べればいいだろ、」
柊人は少し迷ったが、さすがに食べる勇気はないので拒否することにした。
「ふーん、釣れないわね」
涼香は残りのアイスクリームを頬張り文房具屋へと歩き出した。
(ほんとに何がしたいんだ?こいつは)
意味不明な行動をする涼香にずっと困惑しっぱなしの柊人であった。
シャー芯を買い終えた2人は家に帰る、、のではなくゲームセンターに来ていた。
「だから今度はなんでゲーセンに来てんだよ」
「あら、デパートにきたらゲームセンターで遊ぶのが常識じゃない」
「そんな常識知らん、お前勉強したくないだけだろ」
家に戻ると直ぐに勉強を再開するので、涼香はそれを回避するためにゲームセンターに来たようだ。
「あれ?柊人と東条さん?」
そんな話をしていると目の前に見慣れた顔が飛び込んできた。
「ほんとだ!柊人くんだ!!」
「おお連、奇遇だな」
話しかけてきたのは彼女の早紀とデート中の連だった。
「奇遇だなってか、お前もなんで東条さんとこんなとこにいるんだ?」
「シャー芯が無くなったから買いに来たのに、こいつに振り回されてるんだよ」
「なるほど、要するにデート中ってことか、なるほどなるほど」
「ちげえわ、なんでそうなんだよ」
柊人は呆れた顔で言葉を返した。
「え!?柊人くんってもしかして東条ちゃんと付き合ってるの!?はつみみ!!」
「違うわ、俺がこいつと付き合ってるわけないだろ、俺はこいつの家庭教師なんだ」
「かていきょうし、?」
早紀は頭にハテナを浮かべた。
「そう、だから早く帰って勉強しないといけないのに、、こいつがアイス食ったりゲーセン行ったりで全然できないんだ」
「あら、休日なんだからたまにはちゃんと休日というものは味わったらどうなのかしら?」
「うっさいなおい、それにお前休日はほとんど直ぐに勉強やめてずっとゲームしてるだろ」
「そんなことないわ、ちゃんと15分勉強してるじゃない」
涼香は真面目そうな顔でそういった。
「いや少ないわ!それ問題集1ページも終わんないだろ!」
「あ、このお菓子のクレーンゲームいいわね」
涼香はチョコが積まれているクレーンゲームに、100円を投入した。
「話をきけ!」
「君たち仲良いね」
話している2人の間に連が介入した。
「東条ちゃんと柊人くんって仲良いんだ!意外!」
「これを見てなんでそうなるんだよ」
「あら、私は結構仲良くしてるつもりなのだけれど、そんなことなかったのね、、」
涼香は落ち込んだ表情になった。
「いやそうじゃなくて、仲良くしてるけど仲良くはないって言うか、いやもうよく分からん!!」
柊人は頭がごちゃごちゃになったので話すのを放棄した。
「東条さん、柊人は素直じゃないし変なやつだけど意外と優しいし顔も悪くないし男前だから結構おすすめ物件だよ?」
「うるせえ何言ってんだよおまえ」
柊人は連の言葉にジト目で返した。
「たしかに素直ではないわね、もう少し素直になってくれたら可愛げがあるのだけれど」
「誰のせいだとおもってんだよ」
「あら、私のせいかしら?」
「どう考えても」
柊人は涼香の問いをぶった切った。
「じゃあ2人の時間邪魔しちゃ悪いから俺らはここら辺でおいとまするわ、じゃあな!」
「じゃあね柊人くん!」
「いやおい!まてこら!」
柊人の呼び止めも虚しく2人は見えなくなった。
2人は家に帰ってきて勉強を再開していた。
「はぁ、勉強ってなんでこんなにも面白くないのかしらね」
「さあな」
「あんたって勉強が好きなの?それともできるだけなの?」
「うーん、別に好きではないかな」
「なのにあんなできるわけ?よくわかんないわね」
「まあ勉強なんて見れば覚えるからな」
「すごいわね、その能力欲しいわ」
「、、、出来ればあげたいくらいだな」
「、、?どうしたの急に」
柊人がいきなり暗い顔をしたため涼香は心配そうな顔をした。
「ん、なんでもない、ほら次の問題やるぞ」
「そう、それならいいのだけれど」
2人は再び問題集を進め始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます