第8話 打ち明け
「おはよ、柊人」
柊人は学校に着くやいなや涼香に声をかけられた。
「おお、おはよう」
昨日学校でも話してもいいということにしたので、早速話しかけに来たのだろう。
「顔がパッとしないわね、具合でも悪いの?」
「いや普通に朝は苦手だから、ちょっとまだ本調子じゃないんだよ」
柊人はどちらかというと夜型の人間なので朝はとても辛いのだ。
「そうなの、ビンタでもしたら調子出るかしら?」
「おおなんでだよ、急に凶暴じゃん」
涼香がビンタの準備をしていたので、柊人は即座に顔を守った。
「冗談よ、ほらホームルームが始まるから早く席に着くわよ」
「あ、はい」
そうして何故か満足気な涼香は自分の席へと戻って行ったので、柊人も席に着くことにした。
「なあ柊人」
席に着くと連に話しかけられた。
「お前あんな2人で話すほど東条さんと仲良かったっけ?」
どうやら連は柊人と涼香が2人で話しているのを疑問に思ったらしい。たしかに学校ではほとんど話していないし連には涼香の家庭教師をしているということは言っていないので疑問に思うのは当然だろう。
(まあ連になら言ってもいいか)
涼香がどう思うか分からなかったが、このままにしといてもさらに疑問を持たれると思ったため連には明かすことにした。
「実はな、、」
連にことの発端を一通り話した。
「そうなの!?」
「声がでかいって、、!」
いきなり大きな声を出す連に柊人は小声で返した。
「塾とかって言ってたけど、まさか東条さんの家庭教師をしていたとは、、お前も隅に置けないやつだな」
「言っとくけど一切としてそういう関係とかじゃないからな、家庭教師やってるうちに少しだけ仲良くなっただけだ」
「ふーん?でも珍しいな、東条さんって男子と全く話そうとしないし、男子とまともに話してるの初めて見たぞ」
「そうか?」
「東条さんクラスの男子にも人気だし月に何回も告白されたりしてるけど全部バッサリ断ってるらしい」
「ふーん、そうなんだ」
「だからお前ならわんちゃんあるんじゃないか?お前顔も悪くないし性格もいいしそして頭もいい、優良物件だぞ」
「優良物件だかどうだかは知らんが、、俺と涼香はそういうのになるような関係では無い」
「でもあんな可愛い人とずっと2人で居てよく落とされないな、ついてるか?おまえ」
「可愛いとは思うけど別にそれで恋愛感情に発展することは無い、あとちゃんとついてるからな??」
「はえー、やっぱお前はよくわかんねえやつだな」
「ありがと」
「そこまで褒めてないぞ」
ジト目で連にツッコミを入れられる柊人であった。
昼休み、昼飯を食べようとした柊人の目の前には2人の人物がいた。
「涼香っちきょうひま?」
「今日は家庭教師の日だからむりだわ、ごめん」
「当たり前のように目の前に座んないでくれるか?」
連はいつも彼女の早紀と昼飯を食べているのでいつも1人なのだが、今日は目の前に涼香と真凜が座っていた。
「だって涼香っちが柊人っちと一緒に食べたいって言うからさ〜」
「い、言ってないわ、1人だから可哀想だと思って来てあげてるだけよ」
「そうなのか、全然1人で大丈夫だから別のとこ行ってもいいぞ?」
「なんでそんなこというわけ?1人で食べるよりみんなで食べた方が美味しいわよ?ほら、私のエビスイカクッキーあげるわ」
涼香はよく分からない色のよく分からない組み合わせのクッキーを取りだした。
「んだその交わることの無いもの合わせたクッキーは」
「意外と美味しいわよ?」
「うん、遠慮しときます」
「じゃあ強引に突っ込んでもいいかしら?」
「やめてください」
エビスイカクッキーとやらを持った涼香の手を柊人は必死にブロックした。
「ん〜、、それにしても涼香めっちゃ柊人に懐いてるじゃん」
「な、懐いてるとかじゃないわ!ただの友達よ!」
「でも涼香友達少ないからその基準だと懐いてるみたいなもんだよね」
「まあ最初は割とゴミを見る目で見られてたからな、ちゃんと打ち解けてくれて良かったよ」
「男子ってゴミしかいないけど、なんかあんたは不思議と話してても嫌な感じしないのよね、なんでなのかしら」
「さあ、それは俺もわからんな」
「涼香っちと仲良くしてくれる男の子ができて嬉しいよ!これで将来は心配ない!」
「あんたは何を考えてるわけ?」
「ああ痛い痛い!ごめんなさい!!」
涼香は真凜の頬をつねった。
(騒がしいな、、)
目の前でガヤガヤしている2人を横目に柊人は涼香に半分強制的に渡されたエビスイカクッキーを食べた。
(うん、なしでは無いな)
意外と行けるらしくびっくりした柊人だった。
放課後、今日は家庭教師の日なので涼香の家に来ていた。
「柊人っち〜、ここわかんな〜い」
そして何故か真凜も着いてきていた。
「ああ、ここはこうすればいいんだ」
「ほんとだ!出来た!凄い柊人っち!!」
「なんで真凜がいるのよ」
「いいじゃん暇なんだもん!なに?柊人っちと2人きりがよかった?」
「そ、そういう訳じゃないわ、当たり前のようにいるからびっくりしただけよ」
「安心して!もうバイト行かなきゃだから!柊人っちと2人きりで仲良くお勉強できるよ!」
「余計なお世話だわ、、」
涼香は呆れた顔をした。
「じゃあバイト行ってくるね!ばいばい!」
そして颯爽と真凜は涼香の家を去っていった。
「んじゃ、そろそろまともにやるか」
「ええ、そうね」
ようやく脅威(?)が去ったので2人は真剣に勉強し始めることにした。
勉強を始めて2時間たった。時間的にはそろそろ終わりの時間だ。
「ふぅ、それにしてもなんか今日は疲れたな、」
「そうね、、私も疲れたわ、、」
2人ともとても疲れがきていた。
「今日はもうやめましょ、頭が回らないわ、、」
「そうだな、終わりにするか」
少しいつもより早いが今日はもう勉強は辞めることにした。
「そういえば」
「ん、なんだ?」
涼香が柊人に話しかけた。
「今日柊人が私の事可愛いって思ってるって小耳に挟んだんだけど、ほんと?」
「は、はい?なんで急に?」
突然の質問に柊人はびっくりした。
「今日あんたがお友達と話してる時に聞こえてきたのよ、普通に聞こえる声で話してるしあなた達」
「ああごめん、普通に嫌だよな、すまんかった」
「いや別に嫌とかじゃないんだけど、その、あんまり、ほらね、?」
「ん、なんだ、?」
「あんまりみんなの前で話されると恥ずかしいから、、その、あんまり控えて欲しいかなって」
「ああ、そゆことか、ごめん」
柊人は軽く頭を下げて謝った。
「まあでも、言われるのは悪い気しないわね、」
「ん、言って欲しいならもっと言うが」
「大丈夫だわ、褒められすぎても気味が悪いわ、」
「そうか、ざんねん、お前の照れ顔を拝めるかと思ったのに」
柊人は残念そうな顔をした。
「柊人に言われたところでなんとも思わないわ、それにわざと言われてもウザイだけよ」
「そっか、でも涼香はちゃんと可愛いとは思うぞ?自覚はあるだろ、見た目に手を抜いてるわけでもあるまいし」
「そうだけど、まあありがと」
「髪もサラサラだし肌もしっかりキレイにしてるし余計に美貌が引き立つよな、すごいわ」
「わ、わかったから、この話終わり!」
涼香はそっぽを向いて立ち上がった。
「もしかして照れてるか?」
「う、うるさいわ、黙らないと目ん玉ほじくるわよ」
「うわこわい」
急に物騒な発言をする涼香に柊人は恐怖を感じた。
「ほら、疲れたから今日はもう帰って、また今度やりましょ」
「ああそうだな、じゃあまた明日学校でな」
「ええ」
そうして柊人は涼香の家をあとにした。
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