第2話

「よし、俺も一品つくるよ」

『何を作るの?』

天安川あまのやすのかわの土手を歩いていたら思兼神おもいかねのかみ源五郎鮒ゲンゴロウブナをくれてな、幽庵焼きを作るよ」

『美味しそうね』



『コブシの花の天ぷらもうまくあがったし、砂糖漬けは食べごろよ』

「天ぷら味見してもいいか」

『いいわよ。藻塩を付けて……はい、あーん』


「うん、美味い。豊玉姫とよたまひめ、いいよこれ」

山幸彦やまさちひこに褒めてもらえるのが一番うれしいわ』


「人間たちがこれを応用したものを永劫語り継いでくれるといいな」

『ええ』


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 いい天気になってよかった。


『おう、山幸彦、来たぞ』

「よく来たパールヴァティ―。もうすぐできるから、四阿あずまやで待っててくれ」

『いい天気だな。いつ見ても山幸彦んちのコブシはきれいだ』

「うん、ありがとう。これでも手入れをしてるんだ」



『こんにちは、豊玉姫』

『いらっしゃい西王母さいおうぼ

『はい、お土産の蟠桃バントウ

『ありがとう、デザートに追加するね』

『今年は、ネモフィラも作ったのね。キレイね』

『あれは、私がつくったの。案外手がかからないのよ』



『山幸彦さんこんにちは』

「あ、キュベレーさん、こんにちは。あれに乗って来たんですか?」

『あれはハサメリが作ってくれたパワードスーツよ。バーニアが付いてるから空も飛べるよ』

「白とピンク、春めいた感じでいいですね。ところで、腰についてるのは何ですか?」

『あれはね、アナトリアには悪い蛇がいるからそれに対抗するための脳波操縦システムを備えた遠隔ビーム兵器。ファンネルっていったっけかな』

「ビーム兵器! セーフティーをかけておいてくださいね」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


『おい、腹減ったぞ。早く出せ!』

『テューポーン、騒がないの。山幸彦ゴメンね、愚息が騒いで』

「いえいえ、すいません、今最後の盛り付けをやってます」

『盛り付けなんていいよ。皿に山盛りにすれば』

『テューポーン! 今回は目でも楽しめるメニューだそうなんだから、山盛りなんて言わないの!!』

『うー』


『あんまり騒ぐと、ウチのファンネルでオールレンジ攻撃するよ』

『撃っちゃってもいいよ、キュベレー』

『母さん!!』

『撃たれたくなかったらおとなしく待ってること』

『……はい』

『『いい子ね』』



「皆さんお待たせしました。春の彩り豊玉姫・山幸彦スペシャルです」

『お酒もありますよ。辛夷の種子をオーディーンさんのご好意で分けていただいたスットゥングの蜜酒みつしゅに漬け込んだリキュールです』


『おおー』

『すごいご馳走』

『これは、美味そうだ』

『美味しそうだし、見た目でも楽しめるメニューだよ』



「お酒は廻りきったかな?」

『『『『『『大丈夫でーす』』』』』』


「じゃ、豊玉姫。乾杯の音頭を』


『待ってました!』


『本年も春の、この佳き日を迎えることができました』

『日頃、みなさんは大地の管理などで気の休まるときがないのではと思います。でも、今日はそういうのを忘れて存分に楽しんでいってください』


『では構えてください』


『カンパーイ』

『『『『『『「カンパーイ」』』』』』』


『『『『『『『「美味い!」』』』』』』』


 …………


 よかった、みんないい顔になった。






 ありがとう、豊玉姫。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ご訪問ありがとうございます。


 キュベレー(神)とキュベレイ(パワードスーツ)は、前者がCybele、後者がQUBELEYと綴りが違います。

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春の日、ある宴 獅子2の16乗 @leo65536

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