孤狼と狐群と正体不明
「なんや、君ら、知り合いか?
クラゲンさんは感心した、という態度で反応している。どう考えても、そうじゃないことは把握しているだろう。この人の表面上の言葉は信用ならない。
「クラゲンさんよ、そんな無能の雑魚どもより、俺らの方が役に立つぜェ?」
「んー、そうなん? ……ま、今回は誰でも歓迎や。数が多いんは嬉しいで。別にどっちかしか要らんってことないから安心しいや」
また嫌がらせに来たのかな。本当に暇な連中。
……わたしたちの動向が筒抜けになっていたのか、それともわたしたちとは特に関係ない情報収集の結果、たまたま同じヤマに乗りかかっただけなのか。どうなんだろう。
――どうだろうね。もしかしたら、別の意図があったのかもよ。
ふと、今朝のトレイシーの言葉が思い出された。殺害されたのは『
(まさか「一緒に仲良く仕事しよう」なんて思ったわけじゃないだろうしねぇ……)
仮にそうだとしたら、下っ端を殺してる意味がわかんないしね。
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「使いっ走りの子がまだ戻ってきとらんけど、折角やし自己紹介してもらおかな。等級ないやつは除外するとして……って君ら、等級持ち少なない?
……どうなんだろ? 高位の冒険者ほど、あんまり群れない傾向がある、ってのは知ってるけどね。
わたしは
「まぁ認定されてないだけ、みたいなやつも
「はい。『
「まぁた堅ッ苦しくなっとるやん。ごめんて、ナズナちゃん。……次、そこの
「おう。『
あぁ、そんな名前だったっけ。当たり前だけど、悪漢太郎じゃなかったね。
興味はないから、また忘れそうだ。関係良好ならまだしも。
「ほーん。頼もしいなぁ。えらいええ斧持ってはるやん。他は……まぁ、えっか別に。今のところ気になるようなやつは
そんな露骨に「俺は聞かないけどね」みたいな感じで振られて、実際に名乗り出る人いないでしょ。
「じゃ、一旦ええな。ところで君ら、何か確執ありそうな感じやけど、そのへん
「野次馬根性丸出しじゃん。わたしは遠慮しとく」
こいつら絡みのことって基本的に不快だから、思い出したくもないんだよね。
「ま、普段から仲良くしてるよなァ? ナズナぁ。……ああ、そういや『
その話、もう終わったよ。あんたらが来る前に。
「イブキは相変わらず困ったやつやね。それが武人の
「身の程も弁えねえで、調子に乗ってたこいつらが
超ムカつく。元はと言えば、あんたらが悪いんでしょうが。
報復くらい、自分たちの力でやろうって思わないの? 卑怯者。
クラゲンさんは、不思議そうな声で質問した。
「ふぅん? 豪腕はんは、冒険者としてアレと一戦交えるんは、
「戦う必要もねえんでね。俺らと『風食み』の旦那は仲がいいんだ。……だから、クラゲンさんも、あんま調子に乗らないほうがいいかもしれないぜェ?」
「おお、
発言こそ弱腰な感じに聞こえるけど、態度を見ると全く興味なさそうだね。クラゲンさんが『
居心地の悪い空気に辟易していると、
「ただいまあ。取り敢えず『
トレイシーの、いつも通り呑気な声が聞こえてきた。なんだか安心しちゃうね。
……は? いや、いくらなんでも早過ぎない?
「おう、おかえり。予想通りに予想外やな。どんな
「そりゃあ教えられないなあ。おれ一人でいる時だけの、秘密の方法さ。見られてると出来ないね」
その口振りから察するに、クラゲンさんの予想通り、転移術の
「て、てめえ……! 出やがったな! 球コロ野郎!」
「あ? なんだね君たちは。随分と失礼な物言いをしてくれるじゃん」
「ハァ!? おい! 俺らのことを忘れたとは言わせねえぞ!?」
「なんでおれがいちいち名無し野郎を覚えてなきゃいけないんだよ。そういうセリフは、せめて名乗ってから言えよなあ、まったく。……はいはい、わかりましたよ。はあい、悪漢太郎さん。ごきげんいかが? これで満足? ……ああ、めんどくさ……」
「この野郎……! ブッ殺してやるからな!」
きっちり挑発もしてるし。でも、本当に面倒臭そうにしてるね。
一応は
一触即発となった空気の中、クラゲンさんは手を叩いて制した。
「はいはい、そこまで。我々、一緒に仕事しよってことで集まっとんねんで? 忘れて
たとえ確執があったとしても、一緒に仕事をするかもしれない相手なら、依頼主の前で態度を取り繕うくらいはしろ、ということだろう。返す言葉もないね。わたしは比較的マシな方だったんじゃない?
「そう、君よ君。認定のない
「はあい。『
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