第14話 逃走!(1)
正真正銘の、
「魔法」と口に出して確かめる。「それについて、詳しく聞かせてもらえないかな?」
「説明が難しいので、妖精ちゃんが理解できるかどうか、私にはいまひとつ自信がありませんが、それでもよければ」
「……そうだよな。うん、僕もそう思う」
とほほと思ったその瞬間、
「すまないが、リーシャ、今日はこのへんで帰らせてもらうよ」
「帰ってしまうのですか、残念です」
「また会えるさ。明日から三日間は
「そうなんですか?」
後輩の勘違いの可能性微レ存、と。
「まあとりあえず……次あったとき、魔法? のこと、教えてよ」とウィンクしてみる。
僕は窓から飛び降りて、いい感じに着地に失敗した。具体的にいうと、窓についていた庇を一つずつ降りていく感じでいったのだが、二階の窓ところであやふやに庇を掴んでしまったから、そのまま落下した。痛かったから、脇腹を抑えて森の方角へよろよろと離れていく。
そういえば、後輩は無事だろうか。まあ、捕まっても殺されるってことはないと思うから、万が一になったら助けに行けばよいのだが……と、スマートフォンの方に連絡が入っていた。
『屋敷の
『了解した』送信。
少し休憩したいところだが、後輩がすでに待っているようなので、森から
「遅いです。先輩」と後輩は
「了解した」と僕は言う。そして門衛小屋のおじいさんの方を向いて、「ところで、卵かけご飯ってどうしてます?」と訊いてみる。
「めんつゆ!」
「ですよね」それからニ十分くらい門衛小屋のおじいさんと後輩も交えて仲睦まじく会話していると、こちらに走ってくる一つの黒塗りの車が見えてきた。そして、数キロ先からマグロの軽トラックも見えてきた。
「何でです?」
「なんとなく」
黒塗りの車は門衛小屋の前に停車した。つまり僕らの目の前ということだ。黒塗りの車のウィンドウが開いて、中から顔をひょっこり覗かせたのは、偽リーシャだった。
「やあ」と挨拶してみたが、僕の耳を銃弾がかすった。「おかしいな。この国では銃が禁止されているはずだが」
「よくしゃべるのね」と偽リーシャは銃口から煙を上がらせながら言った。「あなた、頭おかしいわ」
「君が言える立場かな、善良な市民に銃を向けるとは」
高速で走ってくるマグロの軽トラックとの距離を横目で
「答えて、あなたの目的はなに?」と偽リーシャは
「おいおい待てやい。君と親しくしたかっただけだし、ちょっと道に迷ってここに来てしまっただけじゃないか。第一、見知らぬ男に誘われてひょいひょい本気にする君が悪い」
まあ誰だって、君の秘密を知っているというメモを渡されれば、本気にするだろうが。さすがに性格の悪い冗談を吐き散らしてしまったが、時間を稼ぐことがなによりも重要なミッションだったので、こちら都合で致し方ないと思ってほしいものだ。
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