第13話 マイクロビキニとお色気作戦
隼人はプロボック〇でエリスと暗子を日天高校から回収する。
別荘に帰るや否や、二人は千尋からの荷物に飛びついた。
「これが千尋さんの言っていた例のブツね!」
「かなり刺激が強いらしいっす!」
「効果があればいいんだけど……」
「何ごともチャレンジっすよ! ダメだったら次の手を考えるっす‼」
二人の会話だけ聞いているとイケないお薬にしか思えないが、大丈夫なのか。ドーピングに引っかかる危険な薬物を千尋が用意するとも思えないが、まさか規制が間に合っていない合法なシロモノか。
隼人が妙な胸騒ぎを覚えていると、二人は荷物を抱えて自室に引っ込もうとする。
「おい! これから練習だぞ! 一旦部屋に戻るのはいいが、洗濯した水着を持っていけ!」
「あー……大丈夫、きちんとしておくから……」
「ちょっと時間がかかるかもしれないっす!」
そう言い残し二人は階段を上がって見えなくなった。
隼人は首を傾けながらも、再びサーフパンツに着替えてビーチコートへ向かう。
かれこれ三十分が経過した。
隼人はビーチバレーボールが詰め込まれたカゴをコートに運び、後で動きを振り返るための動画撮影用カメラをセットするなど練習の準備を整えて松百ペアを待っていた。やることがなくなってからは、長方形の板の真ん中に取っ手の長い棒がついた道具――トンボを使って風に流されたコートの砂地を無心でならしていたが、流石に待ち時間が長すぎる。
気の緩んだ二人にガツンと言ってやるかと怒りがこみ上げたが、どうせ四月が終わるまであと二週間程度の付き合いだと思い出し、怒りを飲み込んだ。
本人たちにやる気が無いなら、何を言っても意味が無い。
そうだ、俺だったら時間を無駄にせず……いや、何をするつもりなんだ、何もできないだろ。〈魔熱病〉なんだから。
隼人が久しぶりに負の思考に沈んでいると、ようやく別荘のドアが開き、エリスと暗子がビーチコートに向かってくる。
しかし、なぜか二人ともパーカーを着ていた。
プライベートビーチで他に人もいないので、いつもあけっぴろげに青ビキニ姿で別荘とビーチコートを行き来していたはずだが、心境の変化でもあったのだろうか。
どことなく緊張感を漂わせ、硬い顔をした二人が隼人の前にやって来る。
「ずいぶん遅かったが、体調不良か? 別に無理をしてまで練習しなくていいぞ」
隼人は会話のジャブとして、一応二人のコンディションを確認する。
エリスと暗子は、隼人から少し目線をそらしつつ答えた。
「た、体調は絶好調よ‼ ア、ハ、ハ」
「そうっす! どこにも問題なんてないっすよ! ア、ハ、ハ」
二人の態度は明らかにおかしいが、気にかけている余裕はない。練習の遅れを取り戻さなくてはならない。
「じゃあ練習を始めるが……その前にパーカーを脱いで置いてこい」
隼人はビーチコート脇のベンチを指差す。
エリスたちがプルプルと震え出した。
「ソ、ソウネ……脱がなきゃね……」
「ソウッスヨネ……エリス、一緒に脱ぐっす」
二人は目を合わせると、こくりとうなずく。勢いよくジッパーを下ろし、パーカーを一気に脱ぎ捨てた。
目に飛び込んできたのは、マイクロビキニだった。
その辺のビーチやプールじゃ、まずお目にかかることはない、セクシー系グラビアアイドルが着ているような非常に面積が小さい三角ビキニで、それぞれゴールドとシルバーの色違いのエナメル生地がテカテカと日の光を反射して、輝いていた。
隼人は、ごくりと
まずは暗子。
暗子は銀色のビキニ姿で、パーカーを脱いだ後もずっと恥ずかしそうにもじもじしている。
引き締まった体からは想像もできないほどボリュームのある膨らみが、トップスの小さな三角形に収まりきらずたっぷりとはみ出し、谷間だけでなく胸の丸い
次にエリス。
エリスは暗子よりは余裕があるようで、頬を赤く染めながらも堂々と金色のビキニを着こなしていた。
十六歳の若さが弾けるようなハリとボリュームのあるGカップロケットおっぱいは、胸のつけ根から先端までほぼ丸見えで、辛うじてバストトップを三角形のビキニが隠していた。肉感的なバストは重力に負けずにグンと突き出し、トップスの紐はロケットおっぱいに引っ張られて、ピンと張っている。
そして二人とも、アンダーはローライズの紐ビキニであり、下腹部はへその下から足の付け根ぎりぎりまで露わで、小さな逆三角形の布地が、辛うじて大事な部分を覆い隠しているだけだった。
現役女子高生が着るには少々刺激的過ぎる水着だったが、そこらのグラビアアイドル顔負けの抜群のスタイルが際立つビキニであり、積極的に肌を見せる海外セレブのような開き直った清々しさがあるせいか、意外なほどエリスと暗子に似合っていた。
隼人は数秒の間、二人に見とれていたが、わざとらしく咳をして意識を戻す。
「ゴホン! えー、その水着で練習するのか?」
隼人のそっけない反応にエリスたちがショックを受ける。
「JKのセクシービキニを見て最初に言うことがそれって、ひどくない⁉ ワタシたちだってめちゃくちゃ恥ずかしいのに……」
「隼人にいが、このビキニをどう思うか、正直な感想を聞きたいっす!」
二人に糾弾され、隼人は慎重に言葉を選ぶ。あまりに直接的な表現だとセクハラになってしまう。
「えー、二人とも大胆な水着で、大人っぽい感じだな……そんな水着どこで買ったんだ?」
最後に率直な疑問が思わず出てしまった。
「買ってないけど……」
「千尋さんに送ってもらったっす!」
その言葉で隼人は昼に届いた箱の中身に気づいた。
「あの荷物って、マイクロビキニだったのかよ……意図はよく分からないが、千尋の言うことに大人しく従わなくてもいいぞ。着替えてこい……」
隼人がゲンナリした顔をする。
「別に千尋さんに無理やり着せられたわけじゃないっす! 隼人にいを悩殺するためのビキニっす!」
「千尋さんに教えてもらったわ、隼人はかなりのグラビアマニアだって! こういう水着が好きなんでしょ?」
そういってエリスはトップスの紐を少し引っ張って、パツンと弾いた。
音に釣られて隼人は無意識にエリスの胸元を見てしまうが、慌てて視線を引きはがす。
「好きか嫌いかで言えば……まあ、嫌いじゃないが、俺の機嫌なんか取ってどうするつもりだ⁉」
「美少女JKのセクシービキニをもっと見たいでしょ! 四月が終わってもコーチを続けてよ‼ ほら暗子! 例のポーズよ‼」
別荘であらかじめ練習していたのか、エリスと暗子はグラビアでよく見るポーズを決める。
両手を後頭部に回し、
エリスと暗子は、はにかんだ笑顔で隼人にグラマラスボディを見せつける。
隼人は、二人の大胆な行動にあざとさよりも、にじみ出る自己肯定感を覚えた。アスリートとして鍛え上げた己の体をさらすのは何ら恥じることはなくて、女性らしく発育した大きな胸さえも、自分の武器として使ってやる――そんな強い自信を感じる。
隼人は惜しげもなく披露された松百ペアの健康的な肉体美に一瞬くらりとするが、意識をどうにか保った。
「女子高生の水着目当てでコーチをやっていたらマズいだろ……俺がMBバレーで教えられるのはせいぜい基本だけだ。後はどうにか別な人を探してくれ……」
「そんなー⁉ セクシー作戦失敗っすか……隼人にいは教え方も上手くて分かりやすいから、コーチを続けて欲しいっす!」
「しょうがないわね……今度、貝殻ビキニを送ってもらって再チャレンジよ!」
「諦めない心っすね!」
エリスと暗子がグータッチを交わす。
「お色気作戦は諦めろよ‼」
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