カルピス
ヤマシタ アキヒロ
カルピス
カルピスの味を
言葉で表すことが
はたして可能かどうか
もちろん
飲んだことのない人に
伝えるのである
青春の味
初恋の味
甘酸っぱい
思い出の味
飲んだことのある人なら
それで分かる
しかし例えば
今日はじめて
日本へ来た外国人
清涼飲料水を知らない人
水しか口にしない人
酒しか飲まない人
に向かって
あの味をどう説明しようと
決して言葉には
尽くせない気がする
むしろ行ったことのない人に
行ったことのない街のことを
説明するほうがラクであろう
踏切の向こうに商店街があって
そこを抜けると住宅街が広がって……
と既にその人が持っている
イメージを利用すればよい
ところが
経験したことのない感覚
たとえば味覚
たとえば嗅覚
たとえば触覚
たとえば聴覚
を想起させるのは
至難の業というより
やるだけムダと
いうものであろう
よって小説などに書く場合は
なるべく詳細をはぶき
「彼はとてもおいしい
飲み物を口にして
目を丸くした」
などと書くのが
賢明なのかもしれない
(了)
カルピス ヤマシタ アキヒロ @09063499480
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