第3章:恋の定義は、塗り替えられる
1節「幼なじみ、黙ってはいられない」
いつからだろう。
私が“見ているだけ”になっていたのは。
毎朝一緒に登校して、同じクラスで、帰り道も隣で笑って。
ユウトは、私の“当たり前”だった。
でも――いつの間にか、その“当たり前”が誰かに奪われそうになっている。
私の知らない顔を、あの子には見せてる。
私の知らない距離で、あの子と触れてる。
(……もう、黙っていられない)
次の日の朝。
昇降口で待っていたユウトのもとに、私はいつもより早足で向かった。
「おはよ、ユウト!」
「あ、アカリ……おはよ」
「ね、今日さ。放課後、付き合ってほしいところがあるの」
「ん? どこ?」
「秘密。でも……デート、っぽい場所」
「……え?」
顔を真っ赤にするユウトに、私はにっこり笑った。
(今までの私じゃないって、気づいて)
放課後。
私が連れていったのは、昔ふたりでよく遊んだ、公園の奥にある小さなベンチ。
桜の木の下。
誰もいない、懐かしい空気。
「覚えてる? ここ。小学校のとき、ユウトが木登り失敗して落ちた場所」
「……あー……思い出した。アカリが泣きながら怒ってきたやつ」
「“死んだら許さない”って言ったの、まだ覚えてる?」
「うわ、めっちゃ懐かしいな……」
ふたりで笑った。昔みたいに。
でも――今日の私は、ここで終わらせない。
「ねえ、ユウト」
「ん?」
「……私、ちゃんと言いたいことがあるの」
彼が驚いたようにこちらを見る。
「“幼なじみ”じゃ、もう足りないって思ってる」
「……え……?」
「メイちゃんといるときのユウト、見たよ。……すごく、いい顔してた」
「……それは……」
「羨ましかった。悔しかった。……だから、はっきり伝える」
私は一歩踏み出して、彼の目をまっすぐ見た。
「私、ユウトのことが好き。恋愛とかアプリとか関係なく、ずっと前から。本気で、恋人になりたいって思ってる」
言葉が震える。でも、視線は逸らさない。
その瞬間――
《攻略対象:アカリ 好感度 72% → 85%(本命告白フラグ発生)》
《イベント進行:幼なじみの覚醒》
ユウトはしばらく黙っていた。
でも、その顔は確かに、驚きと――少しの“戸惑い”を含んでいた。
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