16 宇宙での戦い

 そんな会話をしているとようやく掃除を終えたアニタが入って来る。


「ひどい有様だったんだけど……骨も散らばってたんだけど」

「巻き込まれ事故とはいつの時代も悲惨なものだ。今回はパワーラックが襲い掛かってきたのだから仕方ないな」

「何で襲い掛かるんだコラ、何設定してんだ」

「さて、めでたくマイホームを手に入れた。姫は寝ている、状況把握も終わった」


 一旦落ち着いた、というやつだ。いろいろなことがありすぎてアニタはどっと疲れている。


「牡丹があった場所を停泊位置にする。チャージもできるしな」

「原子炉あったところを使って大丈夫なの?」

「問題ない」

「そっか」

「おそらく」

「なんつった!?」


 アニタのツッコミ虚しく、宇宙船は動き出す。悲しいかな、操縦はデルしかできないので見守るしかない。


「チャージしすぎて壊れませんように! 爆発しませんように! 放射能ダダ洩れしてませんようにいいい!」

「よかったな、カミサマに祈りが通じたぞ」


 ドッキング完了、の文字が見えた。異常物質検出なし、オールクリアだ。太陽風を使った充電とは比べ物にならないほどの速度でチャージされていく。どうやらもともと施設に充電されていたエネルギーを吸い取っているようだ。


「そっか、そういや施設には牡丹以外のチャージ設備があるかもって話してたっけな」

「施設を完璧に動かす必要はないが、最低限生活するための必要な部品や修理は必要だ。というわけで」


 チャージ完了、の文字と同時に即パージする。


「は?」

「ちょっと仕事に行ってくる、一人でそこを守りきれよ球体」

「え? ちょっと!?」

「仲間が殺されたことは元締めも知っているころだ。もし来たら私たちが戻るまでもちこたえろ」

「えええええ!?」


 トモの叫びを無視して宇宙船は発進した。着席していなかったアニタは壁に激突する。


「うぶぉ!? 重力戻す時は言えって!」

「運航したら重力が戻ると思っておけ。それより球体にはああ言ったが目的は残党の排除だ。せっかく手に入れた我が家を汚されてはたまらん」


 レーダーには所属不明の謎の戦闘機が表示されている。


「もう来た!?」

「小部隊で動いていたのだ、仲間がいて当然だ。あの人数では少なすぎる」


 すぐに攻撃をしてきた戦闘機、それをデルはマニュアル操縦で難なくかわす。戦闘機と張り合うオンボロ宇宙船、もはやアニタの脳内は処理がおいつかない。


「お前もそろそろ覚えていいころだ」

「!」


 宇宙船での戦闘行為。他に覚えることがある、と掃除屋の実務を中心に動いてきたこの半年。ついにアニタも宇宙においての戦いに参加するのだ。


「な、何やるの? 攻撃?」

「それはすべてオートモードだ、狙撃手など不要」

「えっと、じゃあ?」


 すっとデルが立ち上がる。何だ? と思っているとアニタをガシっと掴んで自分のいた椅子に座らせた。


「操縦やれ、私は小型機で撃墜に行ってくる」

「は?」


 は、と言った時にはすでにデルは床にできたアニタも知らない下に繋がる通路に飛び降りていた。この真下は格納庫だ。確かに小型戦闘機はある、昔拾ってどこかに売ろうといったまま放置していたものが。売らなかったのは壊れていたからで、デルが向かったのならこっそり直していたということで……。


【P38RT、発進】


 自動音声が流れてデルは出撃してしまった。


「ぎゃああああああああああああ!?」


 一気に五個くらいのアラートが鳴り響き、さっさと操縦しろと警告がうるさい。いつもデルが操縦する姿は見ていたが、眺めていたくらいだ。それにほぼオート操縦、マニュアル操縦は先ほどのような緊急時や戦闘時だけである。


「どうやるか説明していけえええええええ!」

『触れば何とかなる』

「ざっけんなオヤジイイイイイイイイイイ!」

『父ではない、ママだといっただろう』

「そういうことじゃねえんだよ! あと狙撃手いらんっつっといて何してんだ!」

『ただの趣味だ』

「タチ悪い!」


 そんな会話の間にもアラートはなり続ける。しかしモニターには何をどうしろ、と表示されたり音声案内がちゃんと流れてくれるので結局なんとかなってしまった。

 敵はすべてデルが撃ち落とし、アニタがやったのは宇宙船が変な所に行かないよう安定させただけだ。それに意外にもトモが助けてくれた。


「ど、どうにかなった。ありがとうトモ……」


 げっそりしてそういうと、トモは「いえ」といった。


「リンクした時に彼からマニュアルが一緒に送られてきていました。最初からこのつもりだったのでしょう」

「先に言えやあのおっさん……」


 たぶん戦闘ロボに追い回された時よりも焦った。


「あなたはいつもあんな感じで教わっているのですか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る