15 宇宙船とのリンク
デルが死体を眺めながらそういうので、アニタも改めて遺体を見る。慣れているとはいえ断面を見るつもりはない。教育上よろしくない! と騒ぐトモに、アニタが「掃除屋には必要な知識と経験だから」と説得した。
いつかアニタも人を殺す時がくる。同業者、権力者、時には自分が助かるために誰かを見殺しにして。それが「宇宙で生きる」ということだ。きれいごとと自分のできる範囲をきちんとわけなければ、生き抜くことはできない。
「戦い慣れてる様子だったね」
「私兵だろうが、珍しいものを使っていたな」
「そういえば、なんだっけ? キャリ?」
「キャビレード。超音波を一定の周波数で使うことで何でも切断する。もともとは設備用ロボや建設用オートマシンに使われていた道具だ。それを掃除屋がブレード部分だけ好んで使うようになった。宇宙ゴミの解体に便利だからな」
「それを武器に使うの頭おかしいだろ」
「残念なことに部隊を作った頭のおかしいやつがいたのでな。その兵士崩れといったところだろう。対象を削った瞬間に成分分析をして、最も効率的な切断効力を発揮する。金属や隕鉄は簡単にきれる、生き物の場合は最も細胞を破壊するモードになるから縫っても再生せん」
「聞けば聞くほどイカレてんなあ」
キャビレードは今デルが持っている。うっかり彼女の手に渡ったらとんでもないことになるからだ。それに道具としては優秀だ、ゴミの解体に使える。
「死体は病原菌の温床だ、捨てるぞ」
「うん」
捨てる、とは宇宙に放り出すということだ。血液は放置すれば感染症を引き起こしかねない、きれいに洗浄する必要がある。
掃除屋、というだけあってそういったモノの処理も実は仕事にあったりする。事故が起きて死体が大量に転がっている施設を掃除してくれ、というものだ。金がない時はやる、死体処理は少しだけ報酬がいいからだ。気を付けないと大量殺人の犯人に仕立て上げられてしまうが。
「一旦戻るね、また来るけど」
トモにそう声をかけると箒と塵取りをスっとおろした。
「はい。あの、できれば」
「うん?」
「あなた方の宇宙船と、リンクさせてもらえませんか。トモは外部データと繋がっていません。無知なのです」
「あ、なるほど。俺は良いけど」
ちらりとデルを見る。一応宇宙船はデルのものだ、許可をもらわなければいけない。
「かまわん」
拍子抜けするほどデルはあっさりとそう言った。トモはポカン、とした様子だ。
「え、いいのですか? てっきり彼女を触らせろとか交換条件をもってくるかと」
「お前が知識を得たいことに対して、何故私が報酬を要求する必要がある。関係なかろう」
「は、はい……」
意外な言葉にトモは戸惑ったようだ。てっきりただの変態で変人かと思っていたので。
「あ、その。ありがとうご――」
「それに触りたければお前の許可を得ずとも触る」
「ざああああああ! 良かった最後まで言わなくて! 許しません!」
地団太を踏んで怒るトモをなだめつつ、デルとアニタは宇宙船に戻る。宇宙空間に出た時に死体をポイっと投げた。そのまま慣性によって死体はどこかに漂い見えなくなっていく。
「あのロボ、随分と仕草が人間くさいな」
「そう? ロボットってああいうものじゃないの?」
人間が心地よく使うには人間に寄せるのが一番。そのため人間臭いロボットはありふれているが。
「悔しがる必要も地団太を踏む必要はない。ただのサポートロボには不要だろう。姫が地団太を見ないと喘息になる病を持っていない限り」
「確かに……っていうかやっぱ呼び方姫になるんだね」
「自己紹介されない限りは姫だ。名は自ら名乗るものだ」
宇宙船の扉を開けて中に入る。見事に血しぶきがそこら中に付着していた。
「あ、そうだった……」
がっくりと肩を落とすアニタ。そういえば筋トレマシンで挟まれて死んだ奴もいたのだった。
「ふむ、頭を挟まれたか」
「絶対脳みそ飛び散ってるだろ!? ぜえええったいに俺掃除しないからな!」
「仕方のないやつだ、じゃあ廊下の掃除をしておけ」
「わかったよ、まったくもう」
結局飛び散ったものの大半が廊下にあるとわかりアニタが悲鳴をあげながら拭き掃除をすることとなった。
ぎゃあぎゃあ騒ぐアニタを放置しながら、デルは施設とのリンクを開始する。施設のリンクチャンネルはすでに調べてきたので、通信を開始する。宇宙船の充電は二十パーセント、アクセスくらいは負担にならない。
「聞こえるか、球体」
「トモです!」
「良好なようだな」
「はい」
「とりあえず宇宙船をこの施設所属に設定しておいた」
「着々と乗っ取られてる!」
「掃除屋はこれくらいできて当然だ。ハッキング、破壊工作、証拠隠滅ができなければな」
「アニタ殿をそんな風に育てないでくださいね!?」
「できなければ死ぬだけだ」
「ぐぬぬぬ!」
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