ショタ化した最強の拳法ジジイ、ダンジョン配信始めました~どうも、最強ショタジジイです。全てのダンジョンを破壊します~
常闇の霊夜
序章:ジジイとダンジョン編
第1話:ジジイ、ダンジョンに挑む。
「ふん!」
霧が濃く広がる山の中で、一人の老人が暮らしていた。初老を通り越し深いシワのあるその顔は、彼が老人であると言う事を事細かに示していた。今は木を切り倒しているのか、大木の前で力をためていた。
「ぬぅんッ
そして手刀を降りぬくと、彼の十倍ほどもある木が根元から切断された。圧倒的に人間とは思えない強さをしている老人、それが彼、『
「……全く、昔はこの程度の木など軽く切断出来たと言うのに……。そろそろ限界と言う事か……」
巨木を担いで帰る姿は老いを感じさせない。実際、見た目だけならまだ80過ぎにしか見えない程若々しい。彼はいわゆる拳法家であり、約1000年の歴史を誇る『
最期。とはどういう事かと言うと、この表我流という拳法の取得難易度にある。とにかくスタンスが『技を受けて覚えろ!』な以上、天性のセンスがなければそのまま殴り殺される危険性がある。
故に、現代のなよっちい奴らではそれに耐えられず弟子に取れないと彼は諦めて山で過ごしているのだ。ちなみに山で過ごす理由は修行になるからというだけのこと。
「どれ持っていくとするか……うっ!……こ、腰が……」
そんな1000年続く拳法家な彼も押し寄せる年波には勝てず、家に帰って薪にする為切断した木を拾うためしゃがんだ後に立ち上がっただけで腰をいわす程。もう生い先長くないのだろうと考え始める今日この頃である。
さて、話は全く変わる。今から一年程前の話になるが、世界にはダンジョンと呼ばれる洞窟が突如現れ始めた。なぜかは知らないが、ダンジョンの中には武器や防具が入っておりその中で死んでも無傷の状態で洞窟の前にリスポーンする為、ダンジョン探索を動画にして配信するというのが流行っていた。更に、ダンジョン配信用のカメラや回復薬、誰でも使えるダンジョン探索キットなどが売られ、日本、いや世界中でダンジョン配信は広まっていった。
そしてまる一年たった今、ダンジョン配信はそりゃもう全盛期。日本人の3人に1人がダンジョン配信をしているといわれている程に流行っていたのだ。師匠も知らない訳ではないが、死んでもいいやという気持ちが気に食わないので配信は見ていない。
「うぐぐ……、音楽でも聴こうと思ったら変な動画を開いてしもうた……」
師匠は普段スマホを使わない。使うとしてもほとんどネットショッピングや他の拳法家達の型を見る研究などに使っている。その日はたまたま別の動画を開いてしまい、すぐに見るのをやめようとした彼だったがその内容を見て釘付けになる。
近くにある老眼鏡を取り出すとよ~くその動画を観察し始めた。
『と、言う訳で今日はこの山にあるダンジョンを攻略していくよー!』
:シオンちゃん今日もかわいいね
:どこだよそこ
:大丈夫?この前結構ヒドい目にあったばかりだけど?
まぁ動画の内容はよくあるダンジョン配信者がダンジョンに挑むという奴なのだが、現在通っている道が普段師匠が滝行に通っている道と同じなのである。しかも山を舐めているって言われても仕方のない程に軽装で。
『あ~……。まぁ大丈夫でしょ!それよりこの山、無人の山って聞いてたけどなんか……だいぶ手入れされてるよね?』
:確かにね
:獣道……ってレベルじゃないよなコレは
:まさか山姥でも住んでるんじゃ……
『ぴぇっ山姥!?そ、そんな訳ないでしょ!アハハ!』
「……これ、ワシの山の中にいるな」
先ほど師匠が切り倒した切り株もある。師匠が自分が普段通っている道だと気付くのに数秒もかからなかった。そして、その配信をしている奴が不法侵入している。
「……ちょっくら注意しに行くか。あ、あががっ!」
これは注意しに行かねばならないだろうと、勢いよく立ち上がり腰を痛めつつその配信者……シオンを追いかけていく。しばらく山を登っていくと、普段滝行をしている裏に洞窟が出来ていることに気が付いた師匠。
「こりゃ凄い……。これがダンジョンか。全く、世界は広い」
そういいながら、ダンジョンへと入っていく。中は意外に広く、一瞬外かと勘違いする程の天井の高さがあった。一応スマホでシオンがどの程度まで行っているか確認すると、配信では既に3階までたどり着いており、今まさに怪しい宝箱を開けようとする姿があった。
『おぉ!豪華そうな宝箱があるじゃん!さーて中身は……うわぁっ!?』
が。宝箱はミミックであった。アッサリと触手に絡めとられ武器と防具を捨てられ、ヌルヌルの中にブチこまれるシオン。ミミックは配信をしていることに気が付くと、宙に浮いているカメラをつかみ取り今どんな状況にしているかを視聴者に見せつける。
『ぴぇえ!』
ヌルヌルの中でもがくシオンだが、触手に手足を封じられ身動き一つとれない。次第に服は溶かされ素肌が見え始めていく。なんとも淫靡な光景だが、それを知ってか知らずか触手はそんなシオン相手に謎の体液を飲ませようと触手を伸ばす。
:エッチだ!エッチだ!
:大丈夫?これアカBANされない?エッチすぎて
:エッチなのはダメ!死刑!
と、コメント欄が大盛り上がりしていたその時。ダンジョンの天井をぶっ壊し師匠がミミックの前に降り立ってきた。アイアンマン着地をキメつつ、ゴキゴキと関節を鳴らしながらミミックの方を見ると構え始める。
「やはり最短ルートを通ったほうが
:なんだこの爺さん?!
:スケベジジイかぁ~?
:……あれ?天井って破壊できるっけ?
「全く……。そういうのは年寄りには目に毒じゃわい」
ミミックは師匠の姿を見た瞬間、シオンをベッと吐き出し戦闘態勢に入る。先ほどまでのおふざけ姿とは打って変わって、バキバキと全身を変形させると小柄な少年の肉体へと変化した。
その背中からは大量の触手がウネウネと動いており、その一つ一つが師匠への殺意をむき出しにしていた。吐き出されたシオンは体液をふき取りながら、二人が対面する様子を動画に撮り始める。
「うぅ……ベトベト……。って何?!アレなに!?」
:ミミック戦闘フォルムだ!ヤバいぞあぁなったらS級ダンジョンランカーでもイチコロだ!
:えっ何それは……
:↑ミミックってのは基本的にダンジョンにやってくる奴をベトベトにする変態モンスターなんだけど、強敵を前にするとあんな風に強くなるのさ
「ほぉ……。お主中々やれるようじゃな?」
二人が対面するや否や、ミミックは触手で師匠の顔面を貫こうと視聴者たちすら目で追えないほどの突きを放つ。だが師匠はそれを最小限の動きで避けると、返す形で触手の一本を手刀で切断する。
:おいおい冗談だろ……?あんな軽いジャブみたいな攻撃で壁に穴が開いたぞ?
:……アレ、もしかして既に見切ってる?
:ねぇ?!今シレっとあの触手切断したよね?!下手な攻撃だと刃が欠けるんですけどあの触手!
シレッとやっているが、ミミックと言うモンスターはかなりの強モンスターである。仮にSランクの称号を持っているダンジョン配信者でさえ、本気でミミックと戦えば8:2で負けるレベル。
「ぴえぇ……」
:言っときますけどガチで殺しにかかってたらシオンちゃんなんか一分で皆殺しだからな!
:むしろそんなかかるん?
:何人いても勝てねぇだろコレ
その強さの秘訣はやはり触手にある。
むやみやたらに硬く、筋肉の塊であるがゆえに異次元のパワーをしているそれは、ヘタに攻撃をすればなんと武器を砕き防具をオシャカに出来る。その触手が……今、ゴミのように切り飛ばされた。
「うえぇ!?ミミックの触手って切れるの!?」
「む?……こやつ、再生できるのか……」
だが、ミミックにとって触手とはいくらでも生やせる物である。たった一本切り落とされた程度ではひるむこともない。今度は数本の触手を束ね、それをドリルのように回転させながら師匠の胴体へと叩き込もうとしていく。
「ぬ……ッ、先ほどより硬度が増している」
:なんか今……触手と素手のぶつかり合いで金属音がしたんですけど?
:あっ、やっぱり聞き間違いじゃないんだ!
:えぇ……何が起きてんの?
胴体へまっすぐ突っ込んで来た触手を迎撃しようとしたが、切断できない事を認識すると即座に腹を硬化させてその触手の束をハラで受け止める。そんな物マトモに受ければ人間の体に穴なんか簡単に開きそうなものであるが、なんと恐ろしい事に師匠はそれを腹で完全に無傷で受け止めていた。
「だ……大丈夫ですか!?」
「この程度であれば問題もあるまい。……だが、やはり年と言うのは辛いのぉ。もっと若ければこの程度の触手、小指一本で切断できたというのに……」
:なんかヘンな事言ってるこの人
:ホントに人か~?コイツ
:チャンネル登録しますた
:今?!
難解次元な事を言ってため息を吐く師匠。ドン引きするシオンをしり目に、これ以上の手加減は出来ないと技を使うことにした様子。腕を引き拳を叩きつける型に切り替えた。
「貴様は強いようじゃな。……故にワシも本気で貴様を殺す。我が表我流でな!」
「え、それってどういう……」
と、シオンが呟いた瞬間であった。師匠が拳を振るって発生した凄まじい着弾音と共に、ミミックの肉体がはじけ飛んだ。だがミミックは自分がまさか死んだとは夢にも思っていないようで師匠へと触手を伸ばそうとして……ここでようやく、自らが死んだと言う事に気が付いたようであった。
「表我流、その一。『
放った攻撃はたった一撃。それも単なるストレートパンチのグーパンである。だがしかし、その一撃はミミックを始末するには充分……否、過剰すぎる程であった。
ミミックの顔にあたる部分から血が出たと思うと、ボロボロと触手が砕けて散っていく。それどころか、ミミックの後ろにある壁は砕け巨大な穴が開いていた。シオンくらいなら30人は詰め込んでもまだ入るくらい大きな穴である。
「ふぅ……」
:えぇ……(ドン引き
:なに……この、何?
:流石に恐怖を感じるんだが
ミミックを撃滅した師匠はその死体に目もくれず、シオンの元へと歩いていく。
「こ、殺さないでくださいぃっ!」
「何を言っとる。ワシは勝手に山に入ったのを咎めに来ただけじゃ」
ぴいぃと震えるシオンに、師匠はすっかり敵意を削がれしばらく落ち着くまで座っていることにしたのであった。
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【ダンジョンモノとしては】初投稿です。
ブクマハート高評価星感想待ってます!!!
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