第2話








案内所の血の涙を流す女性。

私が立ちすくんでいると女の人は布切れを取り出して涙を拭き出した。

「あら、ごめんなさい」

女の人のは涙を拭き終わると、こちらに顔を向けた。だが、私の視線は女の人が涙を拭いた布切れにある。なぜかと言うと本当に血塗れだからだ。

血糊なんかじゃない、ホンモノの血だ……。

「それで、貴方迷子だったのよね?」

「はい」

「住んでいる所はどこかしら?」

女の人は優雅に地図をめくっている。大きな帽子を被っていて貴族のようないで立ちをした女性だ。動作一つ一つに品があって美しい。

「えっと、東京の新宿区なんですけど」

「あらこれまた珍しいところからね。初めてだわ!この店はどうやって知ったの?」

「さっき外にいた帽子を被った青年が教えてくれました。」

そう言うと女の人は一瞬目を見開いたが、すぐにまた笑顔に戻った。まるで人形みたいな人だ。

「そうなのね!そうなのね!」

「あの、ここの人達は一体何なんですか?」

「………それ禁忌の質問よ。貴方みたいな子が質問しちゃうとそれこそ永遠に閉じ込められちゃうわよ?」

緊張がほぐれていたのに、また筋肉が強張る。

どういうこと?本当に分からない。。

「今のは見逃してあげるけど、今度からは駄目よ。自分の身は自分で守りなさい、それと向かいにあるハサミ屋。あそこには入らないほうがいいわよ」

ハサミ屋なんてこんな不気味なところで入りたくもない!!私は首を縦に振った。

女の人は手続きがあるみたいで奥に消えていった。何かとんでもないことに巻き込まれてしまったみたいだなぁ。

そんなことを考えていると、聞いたことのある高笑いが聞こえてきた。

「君、もうすぐ帰るんだろ?ちょっくら観光しないかい?」

「え、遠慮します!!」

「そう言わずにさ!」

帽子を被った青年に押されて私は店を出てしまった。そして連れて行かれた場所はハサミ屋。

入りたくなかったが、扉が1人でに開いた。後ろを見ると青年もいなくなっている。

怖くなって、立ちすくんでいると中から女の子の声が聞こえた。

「あら、お客様なの?」

小さい少女の声に少しホッとした。さっきまでお腹がカッポリ開いた道化師に血の涙を流す迷い他人案内人。

しかしホッとしたのも束の間。

女の子が姿を現した途端に私は悲鳴をあげた。

女の子は白目黒目なんて概念が無く、瞳は赤に染まっていた。口から見える口内は黒く染まっている。まるで闇のように。両手には赤い糸。

そしてハサミを持っている。

「あはっ、久しぶりの人間さんですの」

そう舌舐めずりする女の子は不気味だった。

私は咄嗟に逃げてしまった。女の子が怖くて。

「あら、帰れなくなりますのよ?」

それでもここの人達はおかしい!あの迷い他人案内人だってもしかしたら私を取って食うつもりなのかもしれない!

必死に走ったが、いくら走っても廃れた風景は変わらない。

その時、足をぬかるみに取られ転んでしまった。

足音が聞こえる。

「もうここまで来たら駄目ですの」

あの女の子だ。ハサミを持っている。

私は恐怖で頭がおかしくなった。

だが目の前が段々と赤色に染まっていく。そこで私の意識は途絶えた。

大きな音がする。私は目を開けた。そこはサーカス小屋で今まさにサーカスが行われていた。

後ろから変わった足音が聞こえてくる。

「やぁ!君、本当に逃げちゃったんだ!だからここにいるんだね。逃げるなって忠告はしたよ?」

「貴方が、ハサミ屋に連れていくからでしょ!!」

「おぉ、怖い!でもね、あの女の子が出口を知ってたんだよ!迷い他人案内人はあの子に電話してただけなんだ!私は連れて行けって言われただけ!」

嘘…でしょ?その時私の目がまた赤色に染まった。また違う女性の声が聞こえてきた。

「貴方は運が悪かったわね。それじゃあさようなら。。」

グシャッ


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迷い他人案内所ー

「はぁ、また?」

血の涙を流す女性は道化師に話しかけた。

「何がだい?」

「惚けないでよね…あの子の事よ…」

「いいだろ?この人形」

「何がいいのよ、そんな人形。あーあ!食べておけば良かったわ」

女性は舌舐めずりをする。その時また血の涙が零れ落ちた。

「だから助けてあげたんだよ」

「それが助けてあげることになったのかしら?」

女性は首を傾げながら奥の部屋に入っていった。

ここは死人の世界。

迷い込んだら貴方も出られ無くなってしまうかもしれませんよ?

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ようこそ不思議な街へ 水無月 @Minatuskr

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