存在が影響力

朝、道路を歩く。


身体が重い、だるい、面倒くさい。


朝は良く人とすれ違う。


どんな顔してればいいのだろう。


そんなハラハラ感だけでも疲れて眠れそうだ。


「うっ・・・」


時たますれ違う人を見て吐き気を催してしまうのはなんて病なんだ?


自身の性格が、感覚が狂っている?


公園の敷地内には、もう既に擦り切れたサラリーマンがどんより肩を落としてベンチに座っている。


なんかこっちまで哀しくなってくるな。


公園を越して、路地を歩いていると肩で風を切る男に肩をぶつけられた。


「ッチ!!」


一瞥し睥睨。


なんでイライラをぶつけられなくちゃいけないんだ!なんて自分までイライラしてしまう。


「はぁ・・・」


とことん嫌なことばかりだ。


「おはようございます!!」


そんな自分の前には小学生の通学路。


元気な挨拶が耳に入ってきた。


「おはようございます・・・」


少しくたびれた様子の挨拶を返してしまったが、子供達の元気で笑顔な姿には少し安らいだ。


その気持ちで改札を潜り、電車に乗った。


(ふぅ・・・)


なんとか椅子に座れたな・・・。


目の前には小さな男の子が座っていた。


その隣に腰が悪そうなおばあさん。


「おばあさん!ここ座って!!」


それを見て即座に立ち上がりおばあさんに席を譲った少年。


「んん?いいのいいの」


おばあさんは抵抗するが、少年は手を引っ張りおばあさんを座らせた。


「ありがとうね・・・」


そのじんわり暖かみのある笑みは心から出たものだろう。


「うん!」


少年の屈託のない元気な笑顔も純真な心からの現れだろう。


(いいなぁ)


俺はスッと立ち上がり、少年に声を掛けた。


「座って良いよ」


「えっ?」


「優しい子に俺の優しさを受け取って欲しい」


「いいの!?ありがとう!!」


先程と同じくらい屈託の無い笑顔。


それはこの周囲の雰囲気を心地よく変える。


座ってゆったり楽するよりも何十倍の価値があると自分には思えた。


良かった、譲れて。


あれ?


そう言えば、心が随分と軽い。


あんな咄嗟に行動出来る人間じゃ無かったのに。


自分は今、この少年の様に笑顔で話せてたかなぁ。


元気も楽しさもいつから忘れていたのだろう。


誰かから親切を貰うのも凄く嬉しいけれど、与える方が幸せだったりもするのかな。


まだ、出勤前。


でも色々な事があったな。


歩いているだけで、こんなに一杯感情を揺さぶられて、影響があって。


・・・結局自分も同じ影響を持って歩いてたって事なのかな。


陰鬱で、社会に対して毒ばかり吐いてるから、似たような人に目を付けられたり、目に入ってきたり。


結局自分の行動の結果ってそんな些細な立ち振る舞いなのかもしれない。


少年の元気は、なによりも心に染みた。


何かを為す事も凄いけど、元気で振る舞う事も最高に凄いことなんだ。


人の為って、自分の在り方でもあるんだな。


勿論、自分の為にも。


挨拶だったり、優しさだったり・・・凄く重宝されて欲しいなぁ。


「おはようございます!」


この気持ちが怠いなんて、心からの元気が鬱陶しいなんて世の中には困ったなぁ。


取り敢えず自分は、そう思うから、振る舞いを見つめ直して、誰かに優しく行動をしていこう。

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