2007/3
この季節がやってきた。
友達になった彼女と再会を果たすのか、果たさないのか。
私は、いつもの中央公民館の中で葵に話す。
「私がホワイトデーに告白した時のこと、覚えている?」
「もちろん覚えてる。大事な思い出だよ」
「夢について話したことも……覚えてる?」
「あぁ、なんとなくかな?あの時はよく理解できなかったから、全部は覚えていない」
「そっかぁ。もしだよ? 私が少し先の未来から来たって言ったら信じる?」
「えっ? 信じない……けど。えっ?」
「信じないよね~私も信じられないと思う」
「えっ? 本当なの?」
「本当って言ったら信じてくれる?」
「なにか根拠はあるの? 例えば、私が大学受験希望してるとか、就職希望してるとか当てられる?」
「当てられない。根拠か~なんだろう」
「当てられないなら信じられないよ~」
「だって……昔の僕なら高1で別れてたから……」
「えっ? 別れてた!?」
「そう。別れてた。今みたいに続いていなかった。だから、その後なんて知りようがない」
「冗談だよね?」
「だからさっきも言ったけど……少し先の未来から来たかどうかを信じるかによって話は変わってくるよ」
「どうしてそんな真面目な顔してるの? 冗談だよね」
「ねぇ、信じる?」
「わからないよ。信じたとして、なんの話がしたいの!?」
「今月、友達ができるんだ。未来ではたった一人の友達だった人」
「それがどうしたの?」
「女性なの。その人と二人で遊んでも許してくれる?」
「浮気したいってこと!?」
「違うよ。友達。ただ、友達になるために2人で遊んだりはする」
「浮気じゃん」
「違うんだけど……そう思うよね……」
「思うよ。女の子と2人で遊ぶなんてデートじゃん! 普通に考えて!」
「だからさ。今悩んでいるんだよ。未来の通り、唯一の友達を得に行くか、それとも、友達を作らずこのまま何も行動を起こさず葵と今までどおり過ごすか」
「仮に未来から来たとしてだよ? もう未来と違う道を歩んでるんでしょ!? 別に今後、違う友達ができるかもしれないじゃん!! その人じゃなきゃいけないわけじゃないでしょ!」
「そうなんだけどね。確かにそうなんだけどね。精神疾患仲間だったんだよ。お互いに励まし合ってさ。辛い時に支えてくれたんだよ。その事実があるのに、助けに行かないのが正しいのかわからないんだよ……」
「なんなのそれ」
「確かに、もう知ってる未来とは違うよ。私も大学に進学しないし、最終学歴が違うから就職先も絶対違う。わかってるんだよ。今が違うことは……」
「ならいいじゃん」
「でも、せめて友達ぐらいはって思うんだよ」
「せめてってなに? 待って…………結婚したってあの時言ってたよね!? 確か!?」
「あー……よく思い出したね」
「その人とまた結婚したとかいうわけ?」
「それは違う。断言する。私は葵が大好きだよ」
「でも、同じ理論なら、結婚した人を探すじゃん」
「もうその未来への道筋はなくしたから、心配しないで。告白した時点で、自分で葵を選んだから」
「でも、友達は探すんだ」
「葵がどうしても嫌なら、諦めるよ」
「じゃあ、会わないで」
「そっか。わかった。会わないよ。そのかわり、私のこと大切にしてくれる?」
「うん! 大切にする」
その後は、いつも通り他愛もない会話に戻り、別れた。
帰り道、私は思う。
完全に知らない道へと進んでいるなと……。
私の未来は、本当に夢だったんじゃないかとも思えてくる。
未来にすがっていたのかもしれない。
未来にも未練はたくさん残っている。
妻と喧嘩したこと。
娘の成長を見ることができなくなったこと。
不安障害を克服し、また幸せな家庭に戻っていくこと。
なんの因果なのだろうか。
タイムリープしたのは。
心が壊れたのがきっかけだったのだろうか。
それとも、私も知らない何かがあったのだろうか。
でも今は違う道を歩んでる。
この道は、合っているのだろうか?
せめて、後悔のないようにしたいものだ……。
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