2005/2/16
目が覚めて、スマホを探すが見当たらないこと数分。ようやく、そもそもこの時代には持っていないことに気付く。
過去を継続中かぁ。
部屋の時計を探す。
0:15。
もう一度、布団に入るが、もう眠れそうにはなかった。
睡眠障害は継続中のようだ。
寝つきは問題ないが、短時間しか寝られない。
はぁ。
暖房のない部屋で布団から出るなんてしたくなかった。
布団の中で思考を巡らす。
結局、タイムリープしたのか?
寝て起きても戻らないってことは、そういうことだよな。
タイムスリップして何ができる?
後悔しない選択と、親への反抗くらいか。
私にとって、後悔しない選択とはなんだ?
初恋を実らせること?
それとも、実らせないこと?
もうあれから20年、時が経っている。
過去の私とはすでに違う。
かといって、メリットなんて……ないな。
精神疾患を持っているだけで、デメリットだ。
何も取り柄がない。
仕事も潰しがきかない業種だった。
あぁ、宝くじは覚えていないけど、いくつかの株はわかるか。
でも、未成年で買えるのか?
そもそも原資もないな。
結局、罪悪感を消し去ることだけか。
それも、告白に対してどう答えるか。
高校受験もあるけど、やる気も起きないな。
どうしよ。
あぁ、滑り止めの私立は受かっていたっけか。
最悪は、それでいいや。
とりあえず、薬は確保しないと……。
明日、探してみよ。
でも、なんて説明しよう?
あぁ、めんどくさい。
めんどくさい。
めんどくさい。
「ああああああああー」
枕に口を当てて叫んだ。
意識が消えるまで、目を瞑った。
◇
朝、母が起こしに来た。
体調が悪いので、学校を休むよう連絡してと言った。
体温計を寄こされたが、もちろん平熱だ。
だから母と父は、気にせず仕事へ行った。
9:00、家を出た。
病院を調べようにもスマホもないため、どこにあるかわからない。
だから、市役所に行った。
そこで病院を教えてもらい、向かった。
自転車に乗りながら思う。
学校を休んで、一人で精神科に行く中学生なんているだろうか。
笑えてくる。
昔の私ならできなかったな。
親に雁字搦めに束縛されていた自分。
解放されている自分。
少し気持ちが良かった。
精神科では、「イライラが止まらなくて、頭がおかしくなる」と素直に伝えた。
いつもの薬をもらい、一安心。
ついでに証券会社にも寄った。
20歳か、親の同意が必要だそうだ。
20歳か。間に合うかな?
帰り道、お気に入りだった展望台に来た。
すべての始まりは、ここの展望台。
街並みを眺めながら、また考える。
今後、どうするのか。
未来の妻と再会を果たすのか。
正直、妻と再びうまくいく自信がない。
妻も言っていた。
たまたまタイミングがあっただけ。
それに、結婚の決め手になったドライブの途中に見つけた背の低い自販機。ふたりで「おかしいね」と笑い合った自販機。
今でも見つけても笑えるだろうか。
自信なんてない。
今の私を支えてくれていたのは、誓い合ったから。
誓い合ってもいない二人が出会ったとしても、私は私ではない。
結局……この過去で頑張って生きるしかないのかな……。
だとしたら、今の私を受け入れてくれるなら……。
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