2018/10~2021/9

 沿岸へ転勤になった。

 仕事は落ち着いたが、毎朝、職場で吐き気をもよおすようになった。

 職場での朝の2時間を耐えられれば、その日は大丈夫。

 逆に、通勤時やその2時間を耐えられなければ早退した。


 私もおかしくなったと思ったが、病院へは行かなかった。

 私の性格上、精神疾患と診断されたら、立ち直れない気がしたから。


 テレビで猫島の特集が放送されていた。

 妻は猫が好きだった。

 気分転換に旅行をしようと話し、猫島へ行った。

 久々に解放された気分を感じ、妻との旅行を楽しんだ。


 数週間後、2回目の妊娠が発覚した。

 「猫がくわえてきたんだね」と二人で笑い合った。

 ぬいぐるみが増えないことを祈った。


 完全に安定期に入るまで、誰にも妊娠のことは話さなかった。

 それくらい慎重になった。


 エコー写真を見ては、「かわいいね」と語り合った。

 徐々に大きくなっていくエコー写真に、心が落ち着いていった。

 そして、妻のおなかを蹴り始めた。


 自然と涙がこぼれた。


 そして2020年1月20日、結月(ゆづき)が生まれた。

 くしゃくしゃで可愛かった。

 妻が長い時間をかけ、一生懸命に愛を育み、生んでくれた子なんだなと改めて思った。


 私は約1年、育児休業を取得した。

 妻が退院するまでの間、興奮して夜も眠れなかった。

 だから、退院したとき、寝不足の私を見て妻は怒った。

 「寝不足なのはこっちだ」と……。


 そのとおりである。


 それからは毎日、二人で育児をした。

 私も慣れない料理をしたが、栄養が悪いのか、カロリーが高いのか、私が太っていったため、料理をしなくなった。


 妻の情緒不安定な時期が続いている。

 産後うつというものだろうか。

 よく「ごめんね」と謝った。


 あっという間の一年だった。

 いろいろ大変なことはあったが、本当にあっという間だった。


 育児休業を終え、仕事に復帰したが、私の体調は相変わらずだった。

 むしろ、悪化していた。

 それでもなんとかしのいでいた。


 妻は耐えられず、精神科へ通院するようになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る