2013/2/14

 授業が終わり、今日はいつもより足早に駅へ向かう。


 彼女と接触するためだ。


 さすがに学校で話しかけるわけにはいかない。

 彼女だって、こっそり渡してきたのだし。


 駅の、おそらく通るであろうエスカレーター脇のベンチに腰掛け、彼女を待つ。


 唯一の心配は、彼女が一人ではなかった場合だ。

 友達と一緒に駅へ来た場合、話しかけるか悩ましい。


 なぜか私は、バレンタイン当日に彼女が一人で帰宅するよう祈りながら待ち続けた。


 待ち続けてしばらくすると、ようやく彼女が来た。


 友達と一緒ではないことに安堵し、話しかける。


 「高橋さん……だよね? 昨日渡してくれたの」


 彼女はとても驚いていた。


 「うん。私だよ……」


 「そっかぁ……。名前が書いてなかったから自信なかった。良かった……」


 「……」


 「あのさ。あれって、付き合ってほしいってわけじゃないんだよね……!?」


 「……。うん。卒業前に気持ちを伝えたかっただけ……」


 気持ちを伝えるだけ伝えて、どうしたかったのだろうか。

 彼女にとって、それが精一杯だったのだろうか。

 こうやって待ち伏せしたことも迷惑だったのだろうか。


 いろいろな考えが浮かぶが、結局はわかりやしない。


 「良かったらさ……。友達から始めてみない?」


 人に対して好意をぶつける勇気は、とても大変なことだから。

 よく知りもしないで、拒否することはしたくなかった。

 たとえ、相性が悪そうだとしても……。


 「ともだちから?」


 「うん。一緒に登校したり、帰ったり、遊んだり。どうかな?」


 「わかった。お願いします」


 「良かった。じゃあ帰ろっ」


 「うん。」


 「そういえば、連絡先知らないから教えて。じゃないと待ち合わせできないからさ」


 「わかった」


 そうして、私たちは友達として始まった。

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