第5話
あれからなんやかんやで結構な時間が経った。…何日経ったのかはわからないが。おかげで黒曜の野生味溢れるジビエ?料理にも慣れた。…肉しか食ってねえけど大丈夫かな…。
あとは…水飲み場にしてる池で水浴びをしろって黒曜に言われた。…あれは…大変でした。自分の体とはいえ、女の子の裸とか見た事なかったからね。すっごい恥ずかしかった。思い出したくないです。
マカラは黒曜にこってりしぼられたのか以前より静かだ。また枕になってくれている。ふわふわだ。
マカラを枕にして、一緒にうとうとと微睡んでいた時だった。
『…主、よろしいですか?』
黒曜がなにかを言いたげな様子で歩いてきた。
「どした?」
俺がそう聞くと、黒曜はこう言った。
『じき、外に出る許可が降りる頃かと思いまして、それを主に伝えておこうと』
黒曜の返事に俺はつい表情が綻ぶ。そんな俺を見ていたマカラが嬉しそうに尻尾をパタパタ振った。
『あるじ、うれしそう!こくようさまのごはん、なまぐさいっていってたもんね!』
「ちょっ…おま」
実際黒曜のご飯のことでマカラに愚痴ったのは事実である。でもご飯を用意してくれてる事はありがたかったし、これでも感謝はしているのだ。それに多分…てか絶対調味料とかある訳ないからね。しょうがないね。
『ごほんっ…やはり人間の舌には合いませんでしたか…。そこまで気が回らなかったようで…申し訳ございません』
「ちょっ…いいっていいって。飯食えるだけでありがたかったから!」
マカラの一言で黒曜が完全にしょんぼりしてしまった。黒曜ってもしかしてメンタル弱い?
『それはさておき、我はしばしの間ここを離れます。…おそらく今日中には外へ出られるようになるかと』
「ん、分かった。ありがとな」
そう言うと、黒曜は『それでは』と言って洞窟の出口から出ていった。
「そういやさ、マカラ。今更だけどここってどこなんだ?」
『んー?』
我ながら本当に今更な質問をマカラに投げかける。
『ここはおうさまのかげのなかだよー?』
マカラが言うには、ここはあの時犬っころに引き摺り込まれた影の中らしい。物体と影は繋がっていて、深い関わりがある?とかで、影の中が1番あの犬っころの影響を受けるらしい。だから手っ取り早く犬っころの力を体に馴染ませるのにこの空間が最適なんだとか。
「ほへー、そうなんだ。すげーな…」
疑問がこれでひとつ解消された。ほかにも色々気になる事はあるが…。例えば、何故俺が選ばれたのか…とか。でも黒曜に聞いてもわからないって言われたしな…。マカラじゃ絶対知らん。
…ひまだなー。スマホ触りたい。…落としました。ていうか魔銃と探索道具以外無くしたからな…。
…寝るか。
「マカラー、寝ようぜー」
『いいよー!!』
マカラを呼ぶと俺のそばで横たわり、その場で枕がわりになってくれた。ふわふわだしあったかい。最高です。
それからしばらくして、黒曜が帰って来た。
『主よ、遅くなりました』
そう言う黒曜の口元には焼かれた肉が咥えられている。ついでにご飯も用意してくれたらしい。
『いつ外に出てもよろしい、と許可がおりました。外に出る前にまずは腹ごしらえでもいかがですか?』
「やっとかー…。うん、そうだな。ありがたく貰うわ」
そう返して、黒曜から肉を受け取る。箸とかフォークとかないからめちゃくちゃ手が汚れるがあとで洗うので問題なし。味は…うん、なんかもう慣れた。美味いわ。
「さてと…食べ終わったし、外出るか!」
『おー!』
飯を食べ終わり、手を洗った後、俺はそう宣言した。
『こちらです』
黒曜に案内されるままに歩いた。そしていつもなら黒曜に止められる洞窟の出口の外へと歩いていく。
しばらく歩いていると、上から光が差し込んでいる岩場についた。黒曜はぴょんぴょんと岩を乗り継いで光の差す天井へと登っていった。
『主、こちらが出口でございます』
黒曜が登った岩壁は大体15メートルぐらいの高さがある。登れるかボケ。ボルダリングとかやったことねえよ!
『…こほんっ…マカラ、主を背中に乗せて登りなさい』
『りょうかーい』
突然マカラが俺の服の襟の辺りを咥えて上に放り投げた。
「うわっ!?ちょっ」
『きゃっち!!』
投げられた俺のもとに、マカラが跳んでくる。俺はマカラにしがみつくかたちでなんとか落ちるのを回避した。マカラは黒曜と同じように岩壁を登り、すぐに頂上についた。
「ぉえ…酔った…吐きそ」
アトラクションみたいで楽しかったが…揺れが酷すぎて三半規管がやられた。吐きそう。
『…この上が王の影の出口にございます』
そう言って黒曜は天井に空いている光の差す穴を見上げた。俺はそれどころじゃなかった。
『……マカラ…、主を上に放り投げなさい』
『…え!?え!?』
『…やりなさい』
『りょ、りょうかーい…』
何やら不穏な会話が聞こえる…。
なんて思った次の瞬間、俺はマカラに思いっきり上に放り投げられた。
…黒曜覚えてやがれ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます