第4話

『では話を続けさせていただきます』

「うん、頼んだ」


デカ狼は淡々と続けた。枕狼は後ろで寝てる。


『主がここに連れて来られたのは先代…我らが王に見初められたからでございます』


王…あのクソでか犬っころのことだろうな。


『我らの王は寿命が近く、我らは王なしでは生きていけません。故に新たな王をたてる必要がございました』

「…その新たな王が俺か?」


デカ狼はこくりと頷く。理解はできるがわけは分からんな。


『是非を問うことすらしなかったのは誠に申し訳ありません。ですが我らには一刻の猶予もございませんでした。ご容赦願いたく…』


申し訳ない…ねえ。正直俺からすれば死ぬほど怖い目に遭った上に、なんか女子の体になって、挙げ句なんか余計なもん生えたわけだけど。


「さすがに許さんよ?」

『…当然です。我らの身勝手で主を巻き込んだことは深くお詫び申し上げます。…それに、王は我らのことをとても案じていました。王も我らのことを思って次の王をたてることを選んだのです。…許さなくても構いません。許されることではありませんから』


なんか怒りづらいな…。


『…今は主に王の力を馴染ませるための準備期間でございます。故にここから外へあなた様を出すわけにいきません。…外へ出たいという気持ちはわかりますが…しばしの辛抱を』


…多分、デカ狼はテコでも動かないと思う。枕狼の説得も無意味だったみたいだし、こいつはきっとあの犬っころに強い忠誠心を持っている。あいつの益にならないことは絶対にしない…と思う。ぶっちゃけこれはただの勘だ。


「…わかったよ。あとどんぐらいで出られる?」

『…ご理解ありがとうございます。あと数日もすればあなた様の体に十分馴染むでしょう。外へ行くというならば我々は全力であなた様をお守りします』

「お、おう…あの犬っころみたいなバケモンがいない限り俺1人でも帰れると思うけどなぁ…」


別に俺は弱くない。…と思う。多分このデカ狼も余裕で俺より強いんだろうなぁ…。なんか自信なくすわ。


『我が主、今更ですが名を名乗らせていただきます。我は黒曜の名を冠する王の牙でございます。以後は主のお目付役としてお仕えさせていただくことになっております』


お前そんな名前だったんだ…。王の牙って…絶対強いじゃん。


そんな事を考えていると、枕狼が起きてきたのか、とてとてと歩いてきた。


『ぼくはマカラー、よろしくあるじー。ふわぁ〜』


欠伸をしながら眠たそうに挨拶をする。うん、なんか解釈一致だわ。


『此奴は主の世話役として主の側につけさせております。…礼儀がなっていないので後で躾けておきます』

「別にいいよ今のままで。…お前も苦労してんだな」


黒曜の頭…は身長が足りなかったので前脚のあたりをぽんぽんと叩く。


『ありがとうございます。…それと、我が王が主のための寝ぐらを用意したと伺っております。着いてきていただけますか?』


どうやらもうマカラを枕にする必要はないらしい。別に平気そうだったけどちょっと気にしてたからよかった。


『こちらです』


黒曜に案内された先には葉っぱが敷き詰められためちゃくちゃ簡易的な寝床があった。うん、まあ、うん。岩肌よりはましだね。


…数日間ここで惰眠を貪るのもありだよな。いや、さすがにやんないけど。


『食事を用意しますので、しばしの間おくつろぎください』


そう言って黒曜は寝ぐらをあとにし…あ、マカラが引き摺られてった。…待って、またあの生臭料理食うの?やなんだけど。


「…我慢…するかぁ」


そう言って俺は葉っぱの海に飛び込んだ。…意外とふわふわしてんな。


「…zzz」


俺は案外すっかりと寝つき、黒曜がご飯を持ってきても気づかずにぐーすか寝ていた。起きたら黒曜が不機嫌だった。ごめんて。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る