第31話 ~僕と命がけの社会科見学(中編)~

隠し扉の向こうには細い通路になっていた。


「あれ? ヤケにすんなり入れたね。カギをかけ忘れたのかな?」

「一応セキュリティみたいなのはあったが…このレベルだったら、わたしのまえでは無いのと一緒だよ」


シキさんはさらっと言った。


「低レベルなセキュリティだ。それとも罠か?」


よく見るとライフルはタツノオトシゴのようなデザインをしていると今気づいた。

リュックを開け、ハイドロボットがたくさん出てきた。



ザー…ジャラジャラ…



ハイドロボットはシキさんを円形に囲むんでいる。


(テレビゲームの魔法陣みたいだ…)


「戦が近いということ?」

「そういうこと。気を抜くな、レイジくん」

「うん…」


薄暗い通路を、身をかがめて歩く。道はだんだん広がっていき、明るい通路に出た。

そこには、バカでかい地球儀があった。本物の地球のように自転している。その地球儀にはいろんな場所に、赤い光がともっていた。地球儀には4つのモニターがあり、なんて書いてあるかはわからない。数字や文字がチロチロ動いていて、別のモニターでは棒グラフや円グラフが激しく動いている。


「スターゲイザー? こっちはレイジくんのデータまで…?」


その中のデータを見て、シキさんは呟いた。


「僕の…? どうやって?」

「わからない。ただのチンピラ集団と思っていたが…」

「ようこそ、我が研究所へ」


大きなモニターのとなりから…一人の男が出てきた。


「ヤレヤレ、あのチンピラどもめ。時間稼ぎもできないとは…」

「誰だぁ?てめぇは?呼び方に困るから名前を名乗れ!このムラサキ野郎!」

「ヒドーデスという。以後お見知りおきを」


軽くお辞儀をして名を名乗る。

30代くらいの男性で、魔導士のローブのような服装だ。


「こんな廃墟の奥に根城があるとはな。いい趣味してんな」

「なに、便利なものさ。一般人は気味悪がって近づいてこない。私は雑音が嫌いでね…。研究に没頭できる。そして、たまに迷い込んだものは、研究のお手伝いをしてもらうのだ」


ふふふ、とヒドーデスはせせら笑う。


「ヒドーデスといったな? なぜスターゲイザーとレイジくんのデータがある?」

「そこの赤髪は器物破損、そっちの黒髪少年は不法侵入だ」

「なるほど。タコもどきはデータ収集の道具でナゾの島は実験場ってことか?」

「おおむね正解だ。とんだアクシデントだったが、貴重な収穫だったよ。しかし、本当に宇宙戦艦を開発していたとはな」

「ナゾが解けたな…で? なぜカイテニウムを盗んだ?」

「我々マリーシアンのためだ。ランディアンは海底資源にまで手を伸ばしている。時期に我々の存在にも気づくだろう。先手を打つだけだ! 秘密も資源も守らねばならんのだ!」


「そんな…あなたの目的は、ランディアンとの戦争なんですか?」


「『戦争』ではなく『洗浄』だよ。陸上をキレイに洗い流すんだ。ランディアンなどいない方が良いに決まっている! あいつらは海を汚してばかりで、戦争ばかりで…進歩も反省もないのだからな!」

「バカな…。ランディアンと正面からやり合う気か?」

「真正面からドンパチやる必要はないさ。カイテニウムと私が発明したこのマシンがあればな!」

「どういうこった?」


モニターが大きな図解に変わった。


「海底から海洋プレートや大陸プレートを自在に操り、大地震を起こせばいいだけだ。奴らは手も足も出せないまま、滅びるのだ!」

「まさか…スターゲイザーが感知した地殻変動はおまえのしわざか…?」

「ご名答。バレないように出力を小出しにしていたんだがね…」

「そういうことか…。ランディアンは海底にいる俺たちには、攻撃は届かない…ってことか? なるほど、合理的だな」


シキさんは目を細めた。


「そうだ!あとは、大津波がすべてを洗い流してくれるだろう!…わかるかね?」

「お前の意見をマリーシアンの総意みたいに言うんじゃねえ!俺は反対だ!!」

「オルテンシアにも協力を要請したんだがね…。断られたよ」


ヒドーデスは肩をすくめる。


「オルテンシアの代表もなかなかに石頭だったよ。宇宙に逃げる算段ではなく、ランディアンを滅ぼす方が、一番手っ取り早いというのに…。オールハートの精神に反すると…。バカバカしい!」

「すべて仕組んだのか?なんの罪のない人たちも巻き込んで!僕のじいちゃんも…いたんたぞ!」

「キミのおじいさんがいたのか? すまないなぁ…」


ヒドーデスは軽く謝罪をする。しかしそれは感情のない謝罪だった。


「わたしは研究の過程と結果は覚えているが…モルモットのデータなど、いちいち覚えておらんさ!」


僕は走り出していた。ヒドーデスに向かって。

なぜだろう…。自分でもわからない…。


「僕のじいちゃんを…モルモット呼ばわりするなあぁぁぁぁぁ!」


しかし、ただ怒りにまかせて突っ込んだだけで、簡単にいなされてしまった。


「ぐっ…」

「格闘もできるみてぇだな…」


サーディンは冷静に分析する。


「落ち着け、レイジくん」

「学校で習わなかったか?授業中は走るな、と。人の話は黙って聞くものだ」


彼はタメ息をして、持論を続けた。


「革命には流血がつきものだ。人類の歴史に無血革命などなかっただろう? 無血革命など所詮は絵空事だ!…それとも、私は狂っているかね?いまだに戦争をしているランディアンが…わたしを咎めるか?」

「……くっ」


サーディンがゆっくりと前へ歩き出す。


「へぇへぇ。御高説どうも」

「キミには響かなかったようだな?」

「ああ、俺は学校の授業は、ず~っと寝てたような人間だからな。悪党なんて…名まえだけわかりゃ充分だ」


サーディンはゆっくりと…ファイティングポーズをした。


(…あれ? 背中の剣は使わないんだ…?)


「水掛け論は終わりだ。手早くたたんでやるぜ!」

「ここで暴れられては困るなぁ…」


ヒドーデスが右腕を上げた瞬間…


「うおっ!? なんだこりゃ?」

「場所が…変わった?」

「空間転移…か…!」

「そんなものまで…」

「大地震に備えて避難経路の確保…そんなところだろう? ヒドーデス?」

「そうだ!同業者か?私と共同研究をしないか?」

「一緒にするなよ…。私の研究はもっと崇高なものだ…貴様とはベクトルが違う」

「それは残念だな」

「確かに同じ科学者だ。しかし、同じ液体でも水と油は混ざらないだろう?」

「キミには理解してもらえると思ったんだがね」


ヒドーデスは靜かに構えた。


「サーディン! 頼むぞ!」

「おう!」

「赤髪さえ倒せば、後ろの2人はどうとにでもなりそうだ…」

「なんだっていいさ、オレは、オレの責務を果たすだけだ…!」

「果たせるかな…?」


ヒドーデスがサーディンにむかって駆ける!


こうして、サーディンとヒドーデスの一騎打ちがはじまった。

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