第2話 お客様は……

シンッと。静まり返った。

本日初オープンのブックカフェだ。


当然、人気店のように行列ができているわけでもない。


ドアが開いたからか、海中から漂うプランクトンの香りが心地よい。


手元の紅茶を楽しみながら、立ち尽くす彼女を観察し始める。


ふむ、本日はダージリンですか。


彼女の入れるお茶はいつも美味しい。

茶葉本来の香り、味を上手に引き出してくれる。



「むむむ!忙しくなると思ったのですが……!」



彼女はあざとく、ヒールが入った革靴で足を伸ばし、お尻をピンと突き上げ、覗くようにして外を見つめている。


少し遠くにいるぼくから見ても誰1人として見当たらない。



「エテ、言ったでしょう。ここは知る人のみぞ知る隠れた名所だと」



顔だけをこちらに向けて、頬をトラフグのようにプクッと膨らませた。



「それは聞きましたけど……だとしても、私はピエールさんのブックカフェ、絶対に繁盛すると思ってたんです」



今度はしょんぼりとでも擬音が聞こえそうですね。


肩をガックリと下に落とし、床をまじまじと見つめ始めたようだ。


しかし何でしょうか。この何とも言えない不穏な空気は。


エテから発されている落ち込みの要素ではなく、何かスピリチュアルのようなもの……と言いましょうか。



「エテ!」



ガッカリしている彼女の背後に何か大きなものが、覆い被さった!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る