海中散歩の休憩所 思考のミルメルシィカフェへようこそ!
社会ゴミ²の下剋冗長
第1話 ようこそ!ミルメルシィカフェへ!
そこは、とても、とても小さな家。
95%が未開の地と言われている海中の中でも、知る人のみぞ知る隠れた名店。
そのお店……ミルメルシィはブックカフェ。
そこに1人の女の子がいました。
「ピエールさーん!めかぶ!こんな感じでいかがですかー!」
元気いっぱいにめかぶを花瓶に入れたものを彼女はぼくに見せてきた。
笑顔が顔から飛び出して、全身で感情を伝えてくる。
両手を伸ばし切って花瓶を紹介するようにして、ぼくから見て花瓶の上下に手を固定している。
意図してか、無意識なのか、両足を揃えてピンと伸ばし、小さなお尻を手と反対方向に突き出し、腰を45度くらいに曲げてめかぶを強調している。
ふむ、凄いですね、彼女は。
自身の長所を惜しげなく披露している。
「ピエールさんってばー!きーこーえーてーいーまーすーかー!」
彼女の身長分ほどしか距離が離れていないと言うのに、大きなハキハキとした声で見て見て!と言わんばかりに強調している。
表情が先ほどと違い、プンプンと言う擬音が聞こえてきそうだ。
「聞こえていますよ。エテ。素敵ですね」
彼女の名前はセレニテ。エテは愛称だ。
クルクルと目まぐるしく変わる表情。
常に大袈裟な表現を示す小さな体。
ぼくのことを気遣って、元気に話しかける優しさ。
それでいてハキハキとしていて柔らかい、耳触りの良い落ち着いた声音。
「そうでしょー!今日のこの日のために栽培したんですから!」
そう言うと満足したのか、笑顔でめかぶが生けられた花瓶から、ヒールの音を軽く鳴らして離れた。
ぼくは胸ポケットに閉まっている懐中時計を取り出した。
「もう少しですね。エテ」
彼女は入り口のドアの前で足を止め、くるっとワンピースの裾を翻して目を細めた。
「はい!ピエールさん!準備は完璧です!」
エテは彼女に対して非常に大きいドアノブに両手をかけた。
再度、懐中時計を見る。
朝10時まであと……
3……
2 …………
1 ……………………
「オープン!」
エテの通りやすい声が店全体に響くと同時に、彼女は肢体を巧みに使って重厚なドアを開いた。
「ようこそ!ミルメルシィカフェへ!」
彼女の声が再度、心地よく響いた。
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