ファンタジーで、(良い意味で)ありふれた、とてもよい掌編でした。読了感がふわっとしていて心地よいです。
この物語、もの凄く、好き。きっと辿り着くまでに、さまざまな物事に気を取られるが、本来の目的地を見失わずにいたい……そんな人間の願望が、たった一話に凝縮されている。時々立ち止まって、読み返したいと思う。
時には目移りし、寄り道する事もある。時には山の頂を仰ぎ見て卑屈になる事もある。それでも登る。一歩ずつ、ゆっくりと、確かな足取りで。当然、頂に辿り着ける保証はない。途中で力尽きてしまうかもしれない。だけど、足を止めずに進んだのなら。そこから見える景色はきっと、貴方にとってかけがえのないものになるだろう。
少年は本当に目指すべきものに向かって歩く。その途中、様々なものに目を奪われ、寄り道をし、それに夢中になる。でも、それで目指すべきものにたどり着けるのか? まるで人生の縮図のような物語です。
目指すべき先は山頂。この思いは変わらない。しかしその道中、様々な困難が待ち受けるだろう。それは己の心の弱さからもたらされるものなのだろうか。本当に欲しいものは、足元には落ちていない。サブタイトルの深意を悟ったとき、少年は再び目標に向かって歩き始める。この寓意に満ちたアレゴリーをあなたはどのように捉えるだろうか。想像の余地は残されている。空は今日も、何かを降らせている。生きとし生けるもの者に、問い続けている。