マイちゃんは今日も冒険している(3)

 マイはなにを言われたのかがよく分からず、アケビに聞き返す。

「テロリストの飛行機? テロリストって誰? なにしに来るの?」

「フェアリーステップを破壊しに来たんだよ。宇宙戦艦クラスの大砲で、この街を引き裂くつもりなんだって」

 アケビの答えに、マイは驚きを隠せない。

「悪いヤツだ! どこにいるの!」

「あっちだよ。あと、五分もしたらマイちゃんにも見えるようになるかもね」

「そんな! なんとかしなきゃ!」

「なんとかって言っても、どうするの? 悪いヤツと戦うの?」

「そうだよ! 戦わなきゃ! ええっと……、誰かキラメスターが来てくれたらいいのに!」

「キラメスターに来てほしいの?」

 マイちゃんの言葉をアケビが耳ざとく聞き返す。

 アケビの問いかけにマイちゃんは前のめり気味に答える。

「来てほしいよ! 魔法で大きくなって戦ったりとかできるじゃん!」

「そんなことできるの?」

「キラメスターが本当なら魔法が使えるからね! でも、EnScapeじゃなくて、これはライフのことだから……」

 マイはキラメスターがライフに出てこないことは知っている。

 でも悪いやつをやっつけるのを、ライフで誰がやってくれるのかを知らない。

 だからライフでは誰を呼べばいいのかが分からない。

 街のことで分からないことがある時はマスコットに聞けばたいていは教えてくれる。だから、いまならアケビだ。

「ライフにキラメスターを呼んで、魔法で大きくなってもらうことはできるよ」

「できるの!?」


 アケビの言葉にマイちゃんの目が真ん丸になる。

 ディスプレの中のアケビが、えっへんと胸を反らしてから、聞き返してくる。

「キラメスターが登場するとき、なんて言うんだっけ?」

「キラメスター・ポップアップ……」

「もう一回、大きな声で!」

「キラメスター・ポップアップ!!」

 マイちゃんの全力の叫び声に応えて、視界からアケビの映ったディスプレが消え、街の外の火星の荒野にキラメキライブハウスで見慣れたキラメスター登場時の光の輪が出現した。

 遠いはずのこの場所から見てもわかるぐらい光の輪はすごく大きい。

 段々とまばゆさが上がってゆく。

 まさか本当に!?

 マイちゃんが固唾かたずんで見守る中、光輝こうきが爆発して中から巨大な少女が姿を現す。

 その少女の姿に、マイは見覚えがあった。

 この前会ったばかりだ。

「あれは……、ハルカちゃん!?」


   *   *   *


 マイの前にポップアップしてきたハルカちゃんは、実際にはレイヤードリアリティである。

 マイは気がついていなかったが、リアル世界に仮想ディスプレが出現するはずはなく、仮想ディスプレが出現した時にマイはEnScapeよりレベルの低い一般的なレイヤードリアリティに取り込まれている。ハルカの出現は、そのレイヤードリアリティの内部で発生した出来事だが、夢中になっているマイはやはり気付かない。

 もちろん、出現したハルカはレイヤードリアリティの存在なので、テロリストの飛行機と戦うことはできない。

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