第12話 暗号解読 (灯里目線)
「ただいまー」
ドアを開けると、まるで汚物を見るような目でこちらを睨むねおちゃんがいた。
「お前の家じゃねえよ!」
ねおちゃんはパソコンで映像を流し始めた。
映っているのは大通りから警察が走っていく映像だ。
「なんで、警察に捕まってないの?榮念会って警察も動かせるてか!」
なんか少しキレてる。無事だったからいいじゃないか。
「榮念会も力のある組織だが、そこまでではない。今回はクライアントが動いたみたいだ。私たちが殺した警察官の件も、もみ消してくれるようだ。」
桜さんは冷静な口調で話しているが、顔に笑みはない。
自分の不手際を勝手にカバーされたことが気に食わない様だ。
えっ、また二人とも怒ってるの?
「警察を殺したんですね。いや、今更あなたたちの仕事にどうこう言うつもりはありません。成果は得られたんですか?」
ねおちゃんもイライラしている桜さんにグイグイ話すようになっていた。
この状態の桜さんに物怖じしないとは、将来大物になるな。
「取り逃がした。変な男と一緒にいたな。灯里は面識があるんだっけ?」
「いや、一回しかあったことないよ。頭が回るというか、頭を使う人だったね。」
桜さんは分かりやすく舌打ちをしたが、この場に動じる人はいなかった。
「ねえねえねえ、そんなことより超能力って信じる?」
「信じないよ。あんなもの全部眉唾物でしょ。非現実的な話だ。」
ねおちゃんは冷めた表情で言い放った。
「私も信じない派だったが、今回は本物だった。」
「なるほど。桜さんが言うのであれば、本当みたいですね。つまり、Sシリーズの人材は超能力が使えるということかもしれないですね。」
私の言うことが信用されないのは、なぜだろう。
まあそれは置いておいて、超能力はテンションが上がる。
「捕まえてみれば分かることだ。ねお、一緒にいた男の情報を調べらえるか?」
「もちろん!」
ねおちゃんは眼鏡をくいっと上げてパソコンを操作しだした。
裏道に通じている大きな通りの防犯カメラをハッキングして、男の映像を見つけ出した。
そして、その映像を画像検索にかけ、服装やここ一週間の足取りをまとめた。
「分かりましたよ。名前は篠原健太。青葉大学の3年生。生物学が非常に優秀で、シンポジウムで賞を取ってますね。」
「健太君、優秀何だね!ときめいちゃう!」
私の発言を二人にスルーされた。
「ねえねえねえ、青葉大学、ドリーハウスとかで検索したらなんか出てこない?」
「出るわけないでしょ。」
ねおちゃんが文句を言いながら検索をしている。
すると、一件の動画が引っかかった。
「羊の海?柏木修斗?何だこれ?」
桜さんが怪訝そうにつぶやいた。
「青葉大学、軽音部の動画みたいですね。歌詞に羊の家という歌詞があるから検索に引っかかったみたいですね。まあ関係ないでしょ。」
ねおちゃんがサイトを閉じようとした。その手を私は止めた。
「ねえねえねえ、決めつけは良くないよ。なんか変な引っかかりを感じるよね。何だろう。」
この歌っている人をどこかで見た気がする。歌っている人の顔を凝視した。
「分かった!さっきの防犯カメラに写ってたよ!」
防犯カメラの映像に切り替える。
そこには、健太くん、ターゲットの女、柏木修斗、知らない女の四人が映っている。
「ターゲットとも知り合いということか。もしかしたら関係あるかもな。灯里良く気付いた。」
桜さんは私の頭を力強く撫でた。褒められたのは嬉しいが、ちょっと痛い。
「なんの歌詞でしょうね。私には薄っぺらいラブソングにしか聞こえないですが。」
「おそらく、もう一人のターゲットと合流することを考えたのだろう。」
「なんで?」
「組織の名前を忍ばせている。これは、もう一人がパソコンで検索することを想定しているのだろう。正直、都合よく検索されるとは思えないが、それ以外に手がないのだろう。時間の詳細は夕日しかない。来るまで待ち続けるつもりか?」
桜さんの推理が冴え渡っている。冷静になれば、桜さんの賢さが際立つ。
「あとは場所がどこかな?海ってことは分かるね!もう東京中の海を練り歩きますか!?」
「さすがに面倒くさい。他にあるだろう。」
三人で沈黙しながら画面を眺める時間が続いた。
正直、私は飽きてきたからあまり考えてない。
「橋か!?ねお。東京に青い橋はあるか?」
桜さんは閃いたようだ。
ねおも『東京 青い 橋』で検索をしている。
「山陽橋っていうところがあるみたいです。ここの周辺の海辺が集合地点では?」
とりあえず、目的地が決まった。
念のため、ねおは自宅待機で他の可能性が無いか考えてもらうことにした。
私と桜さんは山陽橋に向かった。
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