第1章

ヒーローAI大戦、戦場、最前線。AI軍がAI Towerから絶え間なく流れ込んでくる。その多くは剣のようなものは持っているものの、服すら来ていない。その姿から、恐らく一番下のランクのAIだと推測できる。

青年:少年、起きろ!

青年は戦場でのんきに寝ている少年に向けて、大きな声を出す。

少年:っ!

少年は少し体を震わせる。青年は少年を起こすために、頬を叩いた。

少年:…ここは?

呆けた表情の少年に、青年は説明する。

青年:ここは戦場の最前線だぞ。ほら向こうの方を見てみろ、AIがぞろぞろ湧いてきやがる…。

青年はAI軍が絶え間なく流れ込んできている方角を指し示した。青年が指を差した、その先を見て少年は、顔が少し青ざめる。

青年:俺は、俺たちヒーローは、アイツらを、AI軍を倒さなくちゃならないんだ。人間が生き残るために…。

青年の拳にギュッと力が入る。

少年:分かってますよ、先輩…って、先輩!後ろ!

少年の視界には青年の背後から剣を振り下ろそうとしているAIの姿があった。

青年:大丈夫だ、俺に任せておけ。

「異能力:氷結!」

そう言って、青年はAIの体に触れる。すると、AIの体が一瞬にして凍り、剣を振り上げたまま動きを止めた。

少年:やっぱりすごいですね、先輩の異能は。触れることさえできれば何でも凍らせることができる…。それに比べて僕の異能なんか、あってないようなものですし…。

少年はそう言って悲しそうに俯く。丸まった少年の背中を青年が片手だけ手袋をした状態でポンと叩く。

青年:安心しろ。お前の異能のおかげで、俺たちヒーローは全力で戦えてるんだぜ?

少年:え?

どういう意味で青年がそう言ったのか、少年には分からなかった。

青年:お前の異能、異能無効化の能力は、俺たちの異能が暴走した時のブレーキだ。だから、誰かの異能が暴走するその時まで、お前の出番はお預けだな。まぁ、そんな時は来てほしくないけどな。

青年が少年に向かって微笑む。

少年:先輩…!

少年は潤んだ目を擦り、涙を拭う。

少年:…基地に戻りましょう、先輩。あっちも終わったみたいですし。

そう言って少年はAI軍が流れ込んできていたさっきの方角を指差す。

青年:…どうやら、無駄話が過ぎたみたいだな。基地に戻ろうか。

少年:はい!

2人は重い腰を上げ、戦場を後にした。少年は潤んだ目で、青年の、頼もしい先輩の背中を眺めながら、ヒーロー基地へと戻った。

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