伸縮自在の愛

きょうじゅ

Lunatic

 僕は射精した。内部に思いっきり注ぎ込んだ。避妊手段は取っていないから、まったくもって開放的で爽快だ。実に気持ちがいい。


「ぐ、うう」


 そいつはうめき声をあげた。抗議の意思表示のようにも聞こえた。だがそれを無視して、僕は言った。


「解除コード起動。解除コード、『神の左手悪魔の右手』」

「グジョアアアアア」


 濡れた段ボールの塊が引き裂かれるような音を発しつつ、そいつは元通りの姿、つまり、ぶよぶよとした不定形の肉の塊に戻った。ピンク色。


「ふむ。具合は良かったが、人間と同じような声を発せないのは興冷めだな。改良するか」


「……」


 当たり前だが、肉の塊は何も言わない。こいつは僕が造った人造怪物ホムンクルス。最先端科学の粋を凝らしたもので貴重ではあるが、禁じられたテクノロジーの産物でもあるから世間に公表はできない。僕が私的に開発したものだ。


「早かったのね。きょうは泊まっていくの?」

「ああ」


 研究所から帰った僕を恋人が出迎える。僕たちは食事を共にし、愛を交わす。


「愛してるよ」


 結んだコンドームを屑入れに捨てながら、僕は本心からの言葉を彼女に囁く。



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