第7話 漢気

「その“漢気”!私も惚れたぞ!」


 エリザベートはハンスにこう宣うのたまうと、狩装束の裾をサッ!と引いてアメリアの引く飾り椅子にザクッ!と座り、彼女を顧みる。


「そちもそう思うだろ?! 我らは恋敵だな!」


「姫姉様!困ります」と顔を赤らめるアメリアの腰を軽く叩きウィンクする姫を見てハンスは更にエリザベートに興味を覚える。

 その視線を捉えたエリザベートは、身を傾けてハンスに見せる。


「ハハハ、そちは女子おなごどもの戯れがお好きか? ならば混ぜて遣わす!」


「生憎と私の興味はそのカラフェに注がれしアペリチフにございます」


「つれない事を申す! 女子どもはこの様に泣いておるぞ!」

 エリザベートがアメリアに“くすぐり”を仕掛けながら宣うのでアメリアは俯き、赤く染まった耳をハンスに露わにした。


『姫君は“この私”を試しているのか? それも興味深い。ならばどの駒を進めるか……』


『小さいとは言え統治する“地”と爵位を持つ私に対し悠然と構えるこの従士はどんな男だ?!』


 互いの肚の内を探らんとしつつ、二人はアペリチフのグラスを上げた。





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