第四章 追跡編

第23話 両刀使い

鴇の話しによれば、飛翔にはいくつか怪しい場所があるのだと。

集落や村に紛れて“あのお方”は身を潜めているかもしれない。

点々と人里を渡り、地道に探す他ないのだと言う。

「なかなか骨が折れるな。もっと“あのお方”に対する情報は?」

「残念ながら無いです。もっとも、刺客は必ず来るはずですので刺客に吐かせるという手もありますが……………………」

「でも情報を持っているのか分からないんだろう?」

「そうですね、何かいい方法は……………………」

鴇が顎に手を当てる。

翠色の眉がピクリと動いた。

「二人とも、退っていてくれ」

翠色は鯉口を切り、振り向いた。

どん、と地面を蹴る音。

眼の前に現れたのは両手に大小の刀を構えた男。

「両刀使い!?」

翠色が驚く間もなく、男は空中から刃を振るう。

翠色が抜刀し、それを間一髪防ぐ。

互いに後退し、間合いを保つ。

翠色が息を整える。

「何者だ?!」

男は三人を見る。

「俺は蒼黒そうこく。紅玉の暗殺、そして」

蒼黒は鴇を睨む。

「裏切り者の始末、だな」

蒼黒は姿勢を屈ませ、走り出す。

翠色に突進するような形で切り込み、翠色はその攻撃を躱し袈裟斬りを放つ。

太刀風が靡き、その刹那、弾かれていないもう一方の刃が襲いかかる。

翠色の耳にかすり傷が付く。

体を捻らせ、翠色はなす術なく後ろに受け身を取る。

余裕のないまま、更に蒼黒の猛攻が続く。

翠色は立ち上がり、相手の大振りな隙を見つけた途端、蒼黒を蹴り飛ばした。

体勢を持ち直し、峰で蒼黒を薙ぎ払う。

刃が振り下ろされる。

翠色はそれを防ぎ、鍔迫り合いへと持ち込む。

火花が走り、ギリギリと鉄が唸る。

両者は一歩も譲らぬまま、全身の重みを前に掛けてぶつかり合う。

翠色が力で勝り、その腕力で蒼黒を押し返す。

蒼黒は吹き飛ばされ、翠色が刃を振り下ろし、蒼黒を地面に叩き潰す。

だが蒼黒の姿がない。

翠色の死角へ蒼黒は飛び込み、その刃が翠色を襲う。

翠色は千鳥に避け、呼吸をする。

「うっ!」

翠色は痛みに汗をかき、刀を構え直す。

肩からドロリと生ぬるい血が滴り、翠色は思わず肩を抑えた。

翠色の眼の前で何かが爆ぜる。

蒼黒が炮烙火矢を投げたのだ。

煙が巻き起こり、翠色はそれを間一髪避ける。

しかし爆発に巻き込まれた物の破片が翠色の皮膚に突き刺さり、翠色の背中に痛みが走る。

「っ! 一体、一体どこだ? やつはどこへ?」

翠色がぐるりと視界を回す。

後ろから駆けてくる音。

翠色は振り向き、刃を突き出す。

蒼黒はそれを下に弾き返し、翠色の首元を目掛けて刀を振るう。

このままだと、と翠色はその一瞬で考える。

咄嗟に体が動いた。

翠色はわざと刀を手から離し、蒼黒の足元へ滑り込む。

懐に入った途端、翠色は蒼黒の足を払い転ばす。 蒼黒の手から刀を奪い取り、翠色は蒼黒の首元に刃を翳す。

「なるほどな、判断が早い。まさか自ら武器を捨てるとは」

蒼黒は地面の砂を握りしめ、翠色の目に投げかける。

単純な目潰し。

翠色は塞がった視界によろめく。

蒼黒が翠色を殴り飛ばす。

翠色は地面に打ち付けられ、己の大太刀を拾う。

同時に蒼黒も己の武器を奪い返し、飛びかかる。

大太刀の面に手を添えて、翠色は迫りくる攻撃を防ぐ。

軽く払って、蒼黒を間合いから追い出した。

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