タクティカルブルー・ナイトメア −不壊之姫は初恋に惑う−

六笠冬芽

第一部

第一話 中継とターンとトキシック

〇イントロダクション


2026年7月のある晴れた日。日本国民に向け、驚くべき発表がなされた。

『日本は元々、不死者アンデッドの国である。なので本日をもってアンデッドに返還されることになった。短命種の皆様におかれましては、いままで通り生活してかまわないが、日本の先住民族であるアンデッドのいうことにはどんなことでも従ってもらう』

 驚愕の内容だが、政府も、日本と関係のある諸外国、さらには日本と敵対している国でさえ沈黙し、何の行動も起こそうとはしなかった。

 絶対に死なない者が実在していたという事実に、どう対処していいのか分からなかったのだろう。


 だが、ほとんどの日本国民は納得しなかった。

 自分たちを守ってくれるはずの政府は何もしない。外国も助けてくれない。でならば、自分たちでなんとかするしかない。


『限りある命の叫び』という組織が結成された。武装組織である。攻撃対象はアンデッドおよび親アンデッド派の人間たち。


 これに対し、アンデッドの政府機関である『不死統治機構』は治安維持軍を結成。テロリストを徹底的に弾圧した。


 日本政府は首都機能を大阪に移した。東京を放棄した形になる。同時に多くの『短命種』も西に移動。要人や富裕層のなかには海外に亡命するものもいた。


 日本は西が『短命種』、東がアンデッドのテリトリーとなった。

『限りある命の叫び』は不法に東京を占拠。これに対し治安維持軍が東京に進行し、東京はふたつの種族が争う戦場と化した。

 自衛隊は完全な中立を貫いている。もし、平和維持軍が大阪に進行することがあれば、動き出すかもしれない。だが、現状は静観、である。


『限りある命の叫び』は、アンデッド相手に善戦を続けている。あくまでも噂にすぎないが、いくつかの国が資金や武器を援助しているらしい。

 アンデッド側には、西と東の超大国が援助しているという。このふたつの国は敵対しているはずなのだが、アンデッドに肩入れし、見返りとして『不死の技術』を入手したいと考えているのかもしれない。


——————————————————


 千葉県臨海地域。元学園都市だったエリアに、短命種の避難施設がある。本来なら西エリアに移動するべきなのだが、逃げ遅れたり、あるいは「限りある命の叫び」のメンバーだったが投降した者、などが収容されている。

 つまるところ、敵を隔離して、監視しているということになるのだが、おかしな行動をとらなければ、おおむね快適に過ごすことが出来る。「統治機構」だけでなく、国連平和維持軍も管理に協力しているからだろうか。

 ナンバ・ハルキは、元「限りある命の叫び」の兵士だった。投降し、いまはここで暮らしている。将来どうなるか分からないが、内戦が終われば、何か道が開けてくるだろう。

 アンデッドにくだったことは後悔していない。後ろめたさも感じていない。「短命種」は絶対死なない者たちを相手に、実に勇敢によく戦っている、と評価するものがいる。だがそれは、“予想していたよりは”という枕詞がつく評価だ。

 人間は負ける。実際に戦ったハルキは自信をもっていえる。

 この内戦がアンデッドの勝利で終わるのは時間の問題だ。その後、奴らがどうするのかは分からない。世界を征服するのかもしれない。神のみぞ知る、だが、奴らの思い通りになるのは間違いない。

 大テントの一画。あてがわれたベッドに腰掛け、タバコを吸いながらナンバ・ハルキはそんなことを考えていたが、スピーカーから流れ出したアナウンスの声に、思考を中断された。

「はーい。短命種の皆さん、こんにちは。今日も一生懸命生きていますか? 私、ハチジョウ・ユズハからお知らせがあります」

 ハチジョウ・ユズハ。アンデッドのプロパガンダラジオ放送「恋する戦線放送局」のパーソナリティだ。兵士だったころハルキも聞いたことがある。

「殿方たち、こんなところで戦っててもいいの? あなたの恋人や愛する奥さまが退屈してるわ。他の男に寝取られちゃうかもね」というフレーズで敵の戦意を喪失させる、いけ好かない番組だ。

「今日も絶好の戦争日和。予報では一日雨は降りません。お出かけに傘は必要ありません。でも、私だったら、今日はトウキョウ・シブヤあたりには行かないな。どうしてかというと、なんとシブヤに不壊ふえ姫が現れるからです」

(なんだって!)ハルキは興味をそそられた。

「姫、結構久しぶりだよね。もちろん彼女の活躍は生中継で配信しちゃうよ。見逃し厳禁。各施設設置のモニターやスマホ、タブレット、パソコンでも見られるよ。持ってないひとはスマホを貸し出しているから、関係窓口に相談してね。じゃあ、また後でね」

 ハルキはタバコをもみ消すのさえもどかしく、急いでテントを出た。

食堂になっている建物に向かう。元は学校の食堂だったものを利用したらしい。設置されているモニターが、施設内で一番大きいのだ。

 モニター前はすでにかなりの人だかりが出来ていた。比較的人が少ない場所を見つけ、割り込む。男が、ずれて場所を空けてくれた。

「あんたもファン?」

 男が話しかけてきた

「まあね」とハルキ。ちょっと迷ったが、

「オレ、会ったことがあるんだよ」と自慢してみる。

「マジかよ。 なあ、彼女って、おっぱいデカいか?」

「あっという間にやられたから、おぼえてないよ」

 ハルキの脳裏に、戦場で出会った姫の姿がフラッシュバックする。

 ——足を撃たれ、地面にぶっ倒れた状態で見上げた、美しくも勇敢なアンデッドの闘士。噂にきくブルーのドレスを身にまとったその姿。その彼女の身体に銃弾が命中する。衝撃で身体が揺れた。胸も揺れていた。(ということは巨乳?)だが、彼女は不死者、銃創はすぐ治癒した。短いドレスの裾がフワリとめくれ、一瞬ショーツが見えた。視線に気がついた不壊姫が、ハルキを見下ろす。「見たな」返事の代わりにハルキは色を答えた。「高くつくよ」彼女は笑いながら、銃口をハルキに向けた。


 そうだ。ハルキは彼女に希望を見いだしたのだ。

 不死者がどのようにしてこの世に産まれてくるのかは明かされていない。でも、もし将来、不死者と人間が結婚できる世界が到来したとしたら、ハルキはこの不壊姫の夫になりたいと思った。そのためには生き延びなければならない。

 だから投降した。


                ◇

 都内某所。カズマはライフルの手入れに集中していた。最近は武器や弾薬の供給が滞りがちだ。手入れは重要な日課になっている。この拠点にはいま十人ほどの兵士がいた。数日前は重要な拠点を守っていたが、アンデッドに襲われ、逃げ延びてきた。

 放棄されたオフィスビルの、たぶん会議室だった部屋。

 ほとんどの兵士が眠っている。起きているのはカズマと、親父、ともう一人。カズマはこの兵士の名前を知らない。気がつくと一緒に逃げていた。眼鏡を掛けているので「メガネ」と密かに呼ぶことにしている。メガネはパソコンを操作している。そんなものより銃の手入れのほうが大事だ、とカズマは思った。

 親父は孤児だったカズマを育ててくれた。アンデッド発生後は、親父が務めていた会社の代表が反アンデッド派だったため、デモなどに参加し、自然と「限りある命の叫び」に入隊することになった。カズマは親父と行動を共にしただけだ。

 戦いが辛いと思ったことなど一度もない。孤児である自分が見て、聞いて、そして実際にされたことのほうがずっと酷い。

 やがてカズマに変化が訪れた。

 アンデッドは人間を見下している。自分たちのほうが優位な生き物であると考えているのだ。

 それがカズマには許せなかった。孤児である自分をさげすんだ者たちを、アンデッドに投影させて、戦った。

 いつのまにか闘士として一目置かれる存在になっていた。

 それがいまのカズマだ。

「映った」メガネが叫ぶ。

 親父が口に指をあてた。寝ている仲間に配慮しろというジェスチャーだ。

「シブヤだ。あのおしゃれなビルだ」

 親父が肩越しにパソコンをのぞき込む。

「ずいぶん荒い映像だな」

「しかたないですよ。これでもましな方です。スクランブルが解除できただけでも大きな進歩ですよ」

「しかしなぁ、このビルが攻撃されると分かったところで、味方に伝える手段がない」

 メガネが肩を落とす。

「歯がゆいですよね」

 映像が切り替わった。アンデッドの兵士のフルショットが映し出された。

 ブルーのドレスを着ているその姿。画像が粗いため、どのような顔なのかよく分からない。

「タクティカルブルー・ナイトメア、か」

 親父がつぶやいた。

 カズマはチラリとパソコンに視線を向ける。離れているためよく見えなかった。

「なあ、どうしてアンデッドは女ばかりなんだ?」

「いや、きっといますよ、男のアンデッド」

「そうなのか?」

「そうだと思いますよ、根拠ないけど」

 カズマは興味がなくなったため、手入れを再開した。


                 ◇

 ルイノ・アオイ。あだ名は不壊ふえ姫、または「タクティカルブルー・ナイトメア」

 彼女はそのビルを見上げた。地上25階建て。中に『限りある命の叫び』の将校が立てこもっているという。

「『アンデッドに夫を殺された未亡人たち』という分派の指揮官です」

 短命種の男が言った。この短命種は情報屋だ。情報を教えるから命だけは助けてくれと、投降してきた。アンデッドから見れば協力者、短命種から見た場合、裏切り者だ。

「指揮官を殺したら得られるメリットは何だ」アンデッドの指揮官が問う。

「彼女が死ねば」男は汗をかいていた。

「この一体はあなた方の支配下になる」

「めんどくさいな、指揮官」

 ドレッドヘアのアンデッドが口を開いた。彼女は治安維持軍正規のユニフォームを身につけていた。それだけに独特の髪型が目立つ。

「要は、このビルに入って、中にいる短命種を全員殺せばいいんでしょ?」

「うむ」と指揮官。

「では、指揮官の命が下ったということで…」

 ピンク色のバンダナをつけた別のアンデッドが口を開いた。

「アオイちゃん、後はよろしく」

 アオイが振り返る。

「なんで?」

 アオイの髪をとめているかんざしが陽の光を反射した。ドレスとおそろいのブルーだ。

「みんなでやろうよ」

 ドレッドヘアがドローンを指した。

「中継してる。アンタより目立ってはいけないんだ」

 確かにそういう規則があるらしい。情報戦部隊の誰かが決めたそうだ。仕方ない。素直に従おう。そう思ったアオイは、

「そうか、分かったよ」

 と笑顔で答える。

「アンタが突入してから、五分後に私らも続く」

「ファンレターは拾っておいてあげるからさ」

 ピンクバンダナが声を掛けた。

 アオイはビルに向かって歩き出した。警戒している様子がまるでない。それこそ買い物に行くような足取りだった。

                 ◇


 アオイはエントランスに侵入した。床にはゴミが落ちている。それ以外におかしなところはなく、通常営業中と変わらない状態だった。ただし、人の姿は全くない。

 中央にエスカレーターの乗り口がある。彼女はその前まで移動した。

 長い、とてつもなく長い。見上げて見積もってみた。たぶん七階ぐらいまで続いている。なぜ七階までノンストップなんだろう、とアオイは考えた。理由ははっきりしないが、商業施設が7階にあるのではないか?

 エスカレータは停止している。

 彼女は徒歩で昇っていく。

 2階の位置まで達したところで、立ち止まり周囲を窺う。このビルは中央が吹き抜けになっている、筒状の構造だった。各階は筒の外周部分にあたる。

 2階は暗かった。オフィスしかないのだろうか。この位置からは地味なドアしか見えない。

 特に何も起きなかったので先に進んだ。

 3階、4階、5階と進み、エスカレータの終わりが見えてきた6階にさしかかろうとしたとき、動きが見えた。と同時にアオイの足もとになにかが転がってきた。

 手榴弾? と思ったが、確認すると青いカプセルだった。

(またこれか)

 アオイは脱力すると同時に、軽い怒りを感じた。

 このカプセルにはアオイへのファンレターが入っている。

 情報部が敵の戦意喪失のために「姫にファンレターを送ろう」というメッセージを添えて、カプセルを空中投下しているらしい。ファンレターを書いたら、このカプセルに入れて渡せということなのだが、これのどこが戦意喪失につながるのだろう。短命種をからかっているとしか、アオイには思えない。短命種はからかわれていることに気がつかないのだろうか?

 一度読んだことがあるのだが、「愛している」とか「結婚してください」とか書いてあった。アンデッドは短命種と違う方法で増えていくので、結婚など必要ない。愛についてはアオイには全く理解できない概念だ。

 カプセルは無視して先に進もうとしたそのとき、

「アオイちゃん、読んであげてよ」

 インカムを通じて呼びかけがあった。この脳天気なしゃべり方は…

「ユズハ!?」

「ひさしぶりぃ」

「なんでユズハがこのインカムに」

「だって、これ中継してるんだよぉ。実況してるのはワタシなのさ」

 忘れてた。アオイはドローンを見た。

「ドローン経由して割り込んでるんだ」

「何の用だ、忙しいんだけど」

「うそぉ、全部見てたよ。ヒマそうじゃん。もっと活躍してよ。あんまり地味だからいまアオイちゃんのプロモ流してお茶濁してんだよ」

「だから、何の用なんだよ」

 アオイはいらだちを隠せなかった。

「最初に言ったじゃん。その、ファンレター読んでよ」

「断る」

「ルイノ・アオイ。これは命令だ。そのファンレターを声に出して読みなさい」

 ユズハの声じゃない。今度は誰だ。アオイはめんどくさくなってきた。

「久しぶりだね。エドガワズカだよ」

 エドガワズカ・アズマ、治安維持軍、情報戦部隊将校。アオイの上司だと聞いているが、内戦が本格化する前に一度会ったきりだ。

「理由を説明願います」 一応改まった口調で、アオイは質問した。相手は上司だ。

「ふたつの効果が期待できる。ひとつ、敵を油断させる。そしてふたつめは我々の優位性の誇示。戦場においてファンレターを読むという余裕を見せることで、短命種との差を見せつける」

「分かりました」

「あっ、ちょっと待って、いま切り替えるから」とこれはユズハの声だ。

「いいよ、オッケー」

 首を切断されて、再生を待っているような気分だ、と思いながらアオイはカプセルを開き手紙を取り出して読んだ。

「不壊姫さまへ。いや、ルイノ・アオイさま、戦場で初めてあなたの姿を拝見してから、私の心は完全にあなたに支配されてしまいました。日本をアンデッドに支配されるのは憤慨ですが、あなたになら支配されてもいい。私はあなたに会いたいがために厳しい戦いを生き延びています。寂しくなった夜には……」

「どうしたの、アオイちゃん」

「短命種の、生殖の代替え行為について書いてあるんだけど、読んでもいいのかな?」

「省略せよ」とエドガワズカの指示が飛ぶ。

「とはいえ私とあなたは敵同士。いつかあなたに命を奪われるときが来るのでしょう。そのときはどうかあなたを愛した短命種がいたことを忘れないでいただきたい。

 Y・Tより」

 読み終えたアオイの耳に、エドガワズカの信じられない命令が届く。

「では立ち上がり、手紙を胸に抱き、こう言いなさい。『Y・Tさん、ありがとう、あなたのことは忘れないわ』。そしてターンした後に『さあ、戦いよ、覚悟しなさい』と元気よく宣言。あとは任せる」

 中継やらインタビューやらはこれまでに何度も経験している。だけど、ここまでやらされたことはない。エドガワズカは気が触れているのか? 大丈夫なのか、情報戦部隊。あと、もうとっくに5分以上経っているのに、なぜ後続の連中は来ないのか? そしてこういうものをヘラヘラしながら書いている短命種。そらにこの様子を見て同じようにヘラヘラしている短命種。

「ルイノ・アオイ?」

 上司の呼びかけには答えず、アオイはゆっくりと立ち上がる。

 7階のエスカレーター前あたりに短命種の兵士の姿が見えた。多くはないが姿を隠そうとしていない。全員がスマートフォンを向けている。一眼レフカメラを向けているものも、ひとりいた。

 アオイはその連中に満面の笑顔を向けた。

 手紙を胸に抱き「Y・Tさん、ありがとう、あなたのことは忘れないわ」と感謝を述べ、ターンする。

 シャッター音が鳴る。絶好のシャッターチャンスを提供してやった。

 そして決め台詞。

「さあ、戦いよ、覚悟しなさい」

 笑顔のまま、一気にジャンプして七階に達する。自動小銃を掃射する。スマホを向けている兵士の髪をつかみ、

「高くつくよ」と言葉を掛け、そのまま持ち上げて手すり越しに下に投げ落とした。背中に着弾を感じ、向き直る。廊下を十人ほどの兵士が駆けてくるのが見える。

 アオイはジャンプし、一気に距離を詰める。小銃を撃ちながら敵のなかを駆け抜け、Uターンしながらさらに撃つ。床と壁が朱に染まる。肉の匂いがする。だが、アンデッドはそんなものにいちいち反応しない。

 ショットガンを持った兵士が、突っ込んできた。なかなかいい。ショットガンのダメージは銃創の再生に若干時間がかかる。

 アオイは兵士の顔に拳をたたき込み、粉砕させた。ショットガンを奪うと周囲の短命種に向けて引き金を引きまくった。ポンプアクションだと思っていたがガスオートだった。作動が止まった。エンプティ。銃を放ると、短命種たちはかなり減っていた。

「?」

 警戒すべきサインを感じた。匂いだ、トキシック弾の独特の匂い。ある化学物質でコーティングした弾。アンデッドがこれで撃たれると、銃創が極端に変形する。ほとんどの場合再生せず、かなりのダメージになる。ただし、独特の匂いを放つため、察知が容易だ。

 さらに、ウィークポイントもある。

 柱の陰でライフルを構えている兵士がいる。あいつに違いない。

「早く撃って」

 アオイは兵士に呼びかけた。若い兵士だ。トキシック弾の知識があまりないのだろう。

「教えてあげる。トキシックはね。空気にさらしている時間が長くなるほど効果が薄れるの」

 兵士は固まったまま、動かない、

「装てんして、二分以内に撃たなければ、効果は30パーセント以下になる」

 兵士が撃った。弾はアオイの頬をかすった。チリッとした痛みを感じる。兵士に駆け寄ると蹴り殺した。

「オレは知ってるぜ。アンデッドさんよ」

 振り向くと別の兵士が銃口を向けていた。

「装てんしたばかりだぜ。トキシック」

 兵士が引き金を引く。アオイは若い兵士の死体を持ち上げると盾にした。着弾の衝撃を感じる。

 死体を、兵士に向けて投げつける。兵士がたじろぎ、ひっくり返る。ハンドガンを使おうと思ったが、面倒なので、起きあがろうとした兵士の頭を数回蹴り、踏みつけた。

 一息つく。着弾を感じる、数は多くない。アオイは落ちていた敵の小銃を拾うと残りの兵士を掃射した。

 静かになった。着弾も感じない。アオイは身体をチェックした。特に異常なし。銃創は確実に再生されつつある。トキシック弾がかすった頬が気になるが、たいしたことはないだろう。

 アオイは階段を見つけると、昇っていった。

 指揮官をたおすのが、目的なのだ。



(第二話に続く)





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