耳
メールが来ていた。
パソコンで日課のネットサーフィンをしようとしていたのだが、先にメールを確認する。
見覚えのないメールアドレス。
一体だれが、そう思いかけてやっと気が付いた。
あの紙の写真をパソコンに保存してしまったのだった。
昨晩の事なのに、自分は何をしてしまったのだろうか。
後悔しそうになってしまうが、なんとか落ち着き、反省に持っていく。
昔、好きだった人がよく言っていた言葉を大切にしているからだ。
―後悔はしたらいけないんだよ。反省はしてもいいけど、後悔だけはしちゃだめ。
低く、甘い声が脳内で響き渡る。
かぁ~っと熱くなっていく頬を叩き、パソコンに目を向ける。
あの人のことはもう忘れよう。
あの言葉だって、甘い声なんかじゃなかったはず。
私が勝手に甘い声にしてしまったんだ。きっと。
いっつも挨拶してくれてたのもきっと、好きだからなんかじゃない。
じゃあね、の一言も、あの時一緒に上がった階段も、全部全部。
そんな甘い現実なんかあるわけが無い。
あるのはつらい現実だけ。
辛いからこそ現実と思える。
こんな自分にはつらい現実がお似合いだろうから、受け入れられないような現実をあえて自分から創り出す。
こんな私は、愚かな悲劇のヒロインもどきだ。
また、またこんなことを考えてしまう。
馬鹿々々しい自分を追い詰めるにも弱すぎる無駄な妄想。
なんとか自分を冷静にさせ、パソコンの画面に目を向ける。
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主題: アユダ
送信者:reetyaa
To: 津島 直哉 受信日時:2025/12/8 00:00:00
属性: 至急/返信要求あり
To:津島 直哉様
こんばんは。
保存してくださったのですね。
これから指し示すところに行き、紙を撮り、こちらまでお送り下さい。
期間は一週間以内です。
一週間以内に送信されなかった場合、自動的にこの送信先は削除され、二度と連絡を取ることは不可能になりますので、ご注意下さい。
○○県 ✕✕市 □町 2丁目 ★公園 像の滑り台下
以上
自殺代行サービス
reetyaa
――――――――――――――――――――――
正直、信じられなかった。しかし、死ぬチャンスが一度きりと分かった今、一周間無視し続けることなど、不可能に思えた。
早速、今からでも行ってやろうかと考える。
―計画的に行動するのって、楽しいです。
頭の中で低く、甘い声が流れる。忘れたいのに忘れられない。
計画的、彼女関係なく大切なことだ。
今すぐにでも駆け付けたい衝動を抑え、パソコンを閉じる。到底ネットサーフィンをする気など起きないかったからだ。
手帳を確認する。次の休みなら間に合う。丁度予定も入っていない。
スマホを開き、電車やバスを調べ始めた。
自殺代行サービス 多摩るか @horahukigai
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