第2話:かえるにく

 犀東さんが話してくれたことだ。彼は割と田舎、そんな所に住んでいたのだが、その時体験した出来事らしい。


 彼は中学生だったとき、山で遊んでいたのだが、年に一日、決して山に入ってはならない火があった。入ってはならないと言っても子供だけで、大人は幾人かは言っていくところを見送っている。


 大人になれば分かるのだろうかと、大人のしていることなのだからきっと何かあるのだろうと思いながらそれまでは黙っていた。


 高校に入るにあたって、地元から離れるわけだが、高校に合格したとき、祖父が合格祝いをしてくれたらしい。


 実は結構外に出るのを反対していた祖父にしては珍しいなと思いながら、そろそろ実家をは慣れると言うことでご馳走してもらうことにした。


 その晩、祖父が台所に立っているのを見た。今まで料理なんてしないというのに何故突然キッチンに入ったのか、それは謎で仕方なかった。


 そうして夕食は、肉の炊き込みご飯と、肉の入った汁、それとなんだかよく分からない獣のものであろう肉だった。


 それはそれなりに美味しかったのだが、今まで食べた肉とは全く違う味がした。食べているとなんだか体にピリピリという感覚があった。


 ただ、それだけのことで祖父の料理を平らげ、そのまま割と早くに引っ越した。


 そうして高校から都市部に出てきて何不自由ない暮らしをしているのだが、今、彼を時々悩ませていることがあるという。


 なんでも、突然実家に帰りたくなったからだ。都市部と田舎では明らかに便利さが違うし、どうして自分が実家に帰りたいかは説明できない。ただ、今は朝起きると口の中にあの時食べた肉の味が残っているのそうだ。


 おかげで彼は朝一にやることがうがいとなってしまったのだそうだ。害は無いものの、そのうち故郷からの誘惑に負けるんじゃ無いかと心配でならないのだと言っていた。

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