最期はSFになればいい

赤藻屑

プロローグ

「…これは大当たりだ。世紀の大事件になるぞ!」

 男が小声で叫んだ。手にしたサングラスを興奮のままに握り潰し、そのままガッツポーズを決める。道行く人が次々と好奇の目を向けていたが、この男は特に気にしていなかった。その目線の理由はもちろん、彼がアローンマートの制服を着ていたからである。人々は、コンビニの店員がこんなところで何をしているのかと疑問を抱かずにはいられないのだ。

「早く。早く、アシにも教えねーと」

男は慌ててズボンのポケットから、携帯を取り出した。

鍛え上げられた親指でポチポチと文字を流し込んでいく。

『あたりだった 写真もとった このまま尾行する』

男はできる限りの情報だけ携帯に打ち込むと、再び対象を見失わないうちに歩き出した。

人ごみに身を潜めながら、一定の距離を保つ。

こういうのはドラマでしか見たことがないが、正直余裕だった。相手は大柄な中年の変態野郎。いかにも怪しい口髭をはやしており、よほどのことがなければ見失うこともないだろう。男は思わず顔を緩める。様々な感情が男の心を渦巻いていたが、結局復讐の気持ちが彼の心を支配していた。

変態男が路地裏へ入っていくと、男も当然路地裏へ道を曲がる。

さすがに人が少ない。これでは電柱や看板の陰に隠れながら進むしかない。

今度は角を右に曲がり、男もそれに続く。

しかしその時、男が想像していなかったことが起こった。

角を曲がった瞬間、ぱっと変態男の手が首に伸びたのだ。あまりに一瞬のことに、何の反応も出来ずに捕まってしまった。

「う…く…」

とても苦しい。とにかく苦しい。助けを呼びたいが、これでは声も出せない。男はそのまま暗闇に引きずり込まれていった。

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最期はSFになればいい 赤藻屑 @okayuu

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