正しさの檻の中で、その微笑みは嘘をつく
明兎チョコ
第1話
「おはよう、
俺の親友、
朝の通学路。淡い陽射しと、制服のすそを揺らす風。
小さな坂を登りながら、僕たちは並んで歩く。
「……そう? ちゃんと直したつもりだったんだけど」
「うん、直そうとして諦めた跡があるよ」
透が笑う。
誰もが普通の高校生活を送っているように見える世界。
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朝のホームルーム。教師の声は機械のように正確で、誰もそれを疑わない。
スマートフォンは禁止、寄り道禁止、異性との接触は最小限に。
……これが“普通”だと、皆が思っている。
俺はその“普通”に馴染んでいたはずだった。
まるで、僕が忘れていた"何か"を、誰かが思い出させようとしているような――
理由もないのに、胸の奥がすこし、ざわついた。
「ホームルーム中にすまない。今日からこの1-Bクラスに転校生が来る」
転校生…
名門と評される学園「私立暁光学園」。
この学園には勿論、何かしらの才能に優れている者しか入ることができない。
更に転入試験となれば一般な入試より明らかにレベルが高いだろう。
「雀部くんは転校生の子どんな子だと思う?」
透が興味津々な眼差しで俺に聞く
「女?」
「うん。女の子だって、すごいよね。男の子だったら運動とか特別優れてるとかで
入ってきそうなのに。」
まぁ、基本的に男子なら運動だろうなとは思うが、
「そもそも、俺はこんな時期に転校すること自体が不思議で仕方ないんだけど」
そう、今は1年の6月。徐々にクラスの中でグループが出来上がってくる時期。
このクラスは特別強い派閥があるわけではなく、比較的平和であるだけ
ましなのかもしれないが
「ちょうど雀部くんの隣の席空いてるし、もしかしたらそこかもね」
「そうでないと願いたいばかりだな、
転入生と仲良くしようと思ったことは一度もないからな。」
「なんで?いいじゃん!そういうのあこがれるなー」
なんで?、さぁ、それは俺にもわからない。
クラスメイトが他愛のない会話を始め教室がザワザワし始めた途端。
教師は手を2,3,度叩き生徒の視線を教卓側へ移させた。
扉がゆっくりと開いた。
「あぁ、霧宮さんこっち」
「はい」
ゆっくりと教室に足音が響く。
現れたのは、細い体に揺れるような光を纏った少女だった。
肩の少し下で自然に揺れるブロンドの髪は、歩くたびに肩でふわりと揺れ、朝の光を受けた、色素の薄い琥珀色の瞳は、こちらを見ているようでいて、どこか遠くを見つめているようにも感じられる。
整った顔立ちに、無表情でもどこか印象に残る静けさがある。
声を出せば壊れてしまいそうな、そんな儚さと冷ややかさが、彼女をひとつの風景のように見せていた。
「
短い挨拶と、ほんのわずかな会釈。
教室には数秒の沈黙が流れ、そしてざわめきが広がった。
その瞬間、胸の奥が強く縮むような感覚が走った。
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