20話 第二のヒロイン候補現る
身体測定を終え、アソンと別れて教室に戻ると、丘菟は黒板に目をやる。「各自済み次第流れ解散」と大きく書かれている。「ふぅ、疲れた」と呟きながら自分の席に近づく。アソンは隣のクラス所属なのでそもそもいないが、「あいつ、さっきまで一緒だったのに早いな」と苦笑しつつ、荷物を整理する。保健室での測定前に昼休憩を済ませてあったことを思い出し、「ショートルームもないとなると、確かに各自解散だよね」と納得する。とりあえず席に座り、リュックから水筒を取り出して一口飲む。「身体測定って意外と体力使うな」と首を軽く回しながら、教室のざわめきを聞き流す。
そんな中、後ろから突然、「丘菟ちゃん!」と明るい声が響き、背中に柔らかい感触が押し当たる。「うわっ!」と驚いて振り返ると、クラスメイトの鏡茨飛鳥がニコニコしながら抱きついてきていた。「どうだった?測定結果見せ合いっこしよ?」と目を輝かせて言う。飛鳥はクラスでも目立つ存在で、腰まで伸びた黒髪のロングヘアが特徴的だ。前髪は眉と目の間で綺麗に整えられ、風が吹くと少し揺れる。身長は女性としては高めの170センチで、グラマラスな体型が印象的。目元はやや下がり気味の奥二重で優しげな雰囲気があり、鼻筋はすっと通っていて、笑うと頬に笑窪が浮かぶ。ぷっくりとした桜色の小ぶりな唇がチャームポイントで、左口元には小さなほくろがある。発言力も高く、クラスのムードメーカー的存在だ。「ちょっ、鏡茨さん、当たってるから!」と丘菟が慌てて言うと、「えー、いいじゃん!ちょっとくらい!」と飛鳥が笑いながらさらにぎゅっと抱きしめる。「いや、ちょっとどころじゃないって!」と顔を赤らめながら抵抗するが、飛鳥の腕力に敵わず、そのまま押しつぶされそうになる。
丘菟にとって飛鳥は、人懐っこい大きなジャーマンシェパードみたいな印象だ。いつも元気で、誰にでも飛びついてくるような明るさがあって、ちょっと放っておけない感じがする。一方、飛鳥は丘菟を「可愛いけど、最近ちょっと思春期かな?」と思う溺愛してる弟のように見ている。飛鳥の家庭は空手の道場を経営していて、2人の兄貴に囲まれた末っ子だった。中学までは空手を習い、動きにキレがあるが、弟か妹が欲しかった彼女にとって、丘菟はまさにそんな存在だ。中学からは良妻賢母タイプの母に料理を習い始め、今ではかなりの腕前を持つ。「ねえ、丘菟ちゃんってさ、意外と軽かったよね?体重何キロだった?」と飛鳥が興味津々に聞いてくる。「えっと、47キロ…」と正直に答えると、「うわっ、軽い!私なんか56キロあるよ!」と飛鳥が笑う。「でもさ、鏡茨さん背高いし、そのくらい普通じゃない?」と丘菟が返すと、「そっか、丘菟ちゃん優しいね」と飛鳥が目を細める。
すると、近くにいた女子生徒達が「ねえ、丘菟ってほんと可愛いよね!」と混ざってきて、飛鳥に続き丘菟の頭を撫で回し始める。「うわっ、やめてよ!」と丘菟が手を振り払おうとするが、「いいじゃん、ちょっとくらい!」と別の女子が笑いながらさらに撫でる。「髪さらさらだね」「顔ちっちゃい!」と次々に触られ、丘菟は「もう、思春期なんだからやめてくれって!」と顔を真っ赤にする。その様子を教室の隅で見ていた男子生徒達が、「女子みたいな顔でモテやがって」と嫉妬の視線を送ってくる。「花敷、ずるいぞ」「俺だって撫でられたいわ」とやっかみの声が聞こえ、丘菟は「何!?」と振り返るが、男子達は目を逸らすばかりだ。「で、他はどうだった?身長とかさ!」と飛鳥がさらに詰め寄り、「160.5センチだよ」と丘菟が答える。「へぇ、私より10センチ低いんだ。かわいいね!」と飛鳥がまた頭を撫でてくる。「やめてくれって、子供扱いしないでよ!」と丘菟が手を振り払うが、飛鳥は「だってかわいいんだもん!ほら、私の弟みたい!」と楽しそうに笑う。
「弟って…俺、思春期だからさ、そういうの恥ずかしいんだよ」と丘菟が頬を膨らませると、「あ、やっぱり思春期だ!可愛いなぁ」と飛鳥がさらにからかう。教室の周りでは、他の生徒達が「もう終わりか」「帰るか」と荷物をまとめ始め、ちらほらと退出していく。「ねえ、丘菟ちゃん、今度うちの道場来ない?お兄ちゃん達に会わせたいし、母さんの料理も食べさせてあげるよ!」と飛鳥が提案してくる。「え、道場って空手の?俺、弱いから無理だって!」と丘菟が慌てると、「大丈夫、私が守ってあげるから!」と飛鳥がウインクする。「いや、守られるのも恥ずかしいよ!」と丘菟が返すが、飛鳥の笑顔に押されて苦笑するしかない。男子生徒の一人が「花敷、鏡茨に守られてんじゃねぇよ!」とやっかみ半分で叫ぶと、女子生徒達が「いいじゃん、丘菟可愛いんだから!」と笑い、教室はさらに賑やかになる。
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