2話 遺跡の石門、第一の試練

 遺跡の入口は苔むした石門で、湿った空気が漂っている。


 僕は右手の片手剣を握り、ナックルガードの冷たい金属が掌に馴染むのを感じる。


 左手首の円盾を軽く上げ、革鎧が肩や胸にぴったりとフィットしているのを確認する。


 風が通り抜け、マントが背中で小さく揺れた。


「丘菟、ここって何か怪しい雰囲気だね」とリルが囁く。


 彼女の声は少し緊張を含んでいる。


 桜色のワンレンロングが肩に掛かり、ウィッチ帽子の縁が薄暗い光の中で揺れる。


 ワンピースに肩ローブが軽く翻り、タクトワンドを握る小さな手が微かに震えているのが見えた。


 確かに、空気が重く、どこかから水滴が落ちる音がポツリポツリと響く。


 石門の隙間から冷気が流れ込み、革鎧の軽さが心強い支えになる。


「行くぞ、リル」と低い声で言い、僕は一歩踏み出した。


 門をくぐると、中は薄暗く、天井から垂れ下がる蔓が視界を遮る。


 足元の石畳は湿って滑りやすく、慎重に進む。剣の重さが手に心地よく、リルの足音がすぐ後ろで小さく響く。


 しばらく進むと、石畳の奥に微かに光る何かが見えた。


「あれ、何だろう?」


 リルがタクトワンドを手に持ったまま、好奇心と不安が入り混じった声で指さす。


 目を凝らすと、小さな水晶が宙に浮かんでいるのが分かった。


 近づいて手を伸ばすと、触れた瞬間、光が広がり、視界に「第一の試練:知恵を解け」という文字が浮かんだ。


 同時に、目の前の壁に奇妙な記号が浮かび上がる。


 リルが「丘菟、これ解ける?」と首をかしげて僕を見上げる。


 青い瞳が光を反射してキラリと輝く。


 僕は剣を鞘に収め、壁に近づいて記号をじっと見つめた。幾何学的な模様が並び、一部が欠けている。


 頭の中でパターンを組み立て、「順番に並べ替えるパズルだ」と気づく。


 指を動かし、記号を一つずつスライドさせていく。


 リルが隣で「すごい、集中してるね」と呟きながら、タクトワンドをくるくる回す。


 試行錯誤の末、記号が全て揃うと、カチリと小さな音がして、通路の奥に新たな道が開いた。


「やった!」

「やるじゃん!」


 とリルが同時に声を上げ、笑顔で拍手する。


 革鎧が揺れる感覚が誇らしく、僕は小さく頷いて先へ進んだ。


 この世界での一歩が、現実の自分を少しだけ強くしてくれる気がした。


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