第三十八話 目覚める新たな力

■ 燃え上がる孤島の研究施設

 ドォォォン!!

 轟音とともに、孤島の研究施設全体が爆発した。

 衝撃波が四方八方に広がり、巨大な火柱が夜空を焦がす。


 空は炎の赤に染まり、爆風が島を揺るがす。

 爆発の熱が肌を焼くように伝わり、隼人たちはその余波に飲み込まれた。


 「ぐっ……!」


 衝撃に耐えきれず、隼人たちは吹き飛ばされた。

 爆音と共に意識が遠のく。


 その瞬間——


 ノワールとルミエの体が、眩い光に包まれた。


■ 再び目を覚ました場所

 「……ッ!」


 隼人は咳き込みながら目を覚ました。

 頭がくらくらする。


 視界がぼやけ、辺りを確認する。

 気がつくと、彼は孤島の外れにある岩場に倒れていた。

 施設の中心から離れた場所——比較的安全なエリアのようだ。


 夜明け前の薄闇の中、遠くにはまだ黒煙が立ち上っている。


 「無事か?」


 カロンの声が聞こえた。

 振り向くと、美咲や本田も同じように意識を取り戻していた。


 「……助かったのか?」

 本田が額を押さえながら呟く。


 「ギリギリだったな……。」


 美咲が周囲を見渡し、心配そうに言う。

 「ノワールとルミエは……?」


 隼人も急いで辺りを見回した。


 そこに——光る二つの小さな影があった。


■ 変化したノワールとルミエ

 ノワールとルミエは、岩の上に倒れていた。

 だが、その姿には明らかな変化が見られた。


 ノワールの体の輪郭が、以前よりも僅かに強く輝いている。

 ルミエもまた、微かに色合いを変えていた。


 「……オマエタチ……?」


 隼人がそっと手を伸ばすと、ノワールがゆっくりと目を開けた。


 「……ワタシ……?」


 ノワールの声が、どこか以前よりも澄んでいる。


 ルミエも目を覚まし、辺りを見回した。

 「ナニ……? チカラ……?」


 本田が驚きの表情を浮かべる。

 「おい……なんか、変わってねぇか?」


 美咲が冷静に分析する。

 「もしかして……人工妖精の力を受け取った?」


■ 人工妖精が遺したもの

 ノワールとルミエが顔を見合わせた。

 そして、自分たちの手をじっと見つめる。


 「……ワカラナイ。ダケド……ナニカ、チガウ。」


 ノワールの体から、微かに新たな波動が広がっていた。

 それはまるで、人工妖精が遺した何かが彼らの中に宿ったかのようだった。


 「人工妖精は、最後にお前たちに何を託したんだ?」

 隼人が慎重に尋ねる。


 ルミエがゆっくりと首を振った。

 「……オボエテナイ……ダケド……ワカッテル。」


 ノワールも静かに頷いた。

 「……ワタシハ……モウ……ニドト……。」


 その時、突然ノワールの手から小さな光が放たれた。


 「……!?」


 美咲が息をのむ。

 「これは……?」


 カロンが険しい表情で呟く。

 「進化……したのか?」


■ 進化の兆し

 ノワールとルミエは、新たな力を感じ取るように静かに目を閉じた。


 「ワタシハ……マダ、ワカラナイ……。」


 ノワールが両手を前に差し出すと、そこに小さな光の粒が生まれた。

 それは、まるで生命の誕生を象徴するような穏やかで神秘的な輝きだった。


 「これが……進化……?」

 隼人が驚いた声を漏らす。


 ルミエも、同じように両手を広げる。

 すると、彼女の体からも光の波が広がり、ノワールと共鳴するように空気が震えた。


 「ワタシハ、ナゼ、ウマレタ?」


 人工妖精が残した最後の言葉が、隼人の脳裏に蘇る。


 彼らはもしかすると——

 新たな段階へと歩み始めたのかもしれない。


■ 次なる目的

 夜明けの光が、海の向こうに広がる。

 遠くには、まだ施設の炎が燃え続けていた。


 美咲が呟く。

 「……政府は、まだ諦めないでしょうね。」


 カロンが静かに言う。

 「エクス・ノヴァの拠点は潰した。だが、これは終わりではない。」


 本田が苦笑する。

 「ったく、厄介なことになっちまったな。」


 隼人は、ノワールとルミエを見つめる。


 「お前たちの進化が、何を意味するのか……俺たちが解き明かす。」


 ノワールが静かに微笑んだ。


 「オマエタチト……イッショ。」


 ルミエも微笑んだ。

 「マダ……オワラナイ……。」

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