第九話 隠された真実
■ 地下施設の奥へ
隼人たちは黒衣の男の指示に従い、施設の奥へと進んでいた。
「急ぐぞ。奴らがここまで来るのも時間の問題だ」
黒衣の男は迷いなく通路を進み、やがて古びた扉の前で立ち止まった。
「……ここか?」
隼人が問いかけると、男は無言でポケットから小さなデバイスを取り出した。
彼が端末を扉のセンサーにかざすと、低い電子音とともに重厚な扉がゆっくりと開いていく。
「行くぞ」
扉の向こうに広がっていたのは、長年放置されていたことを感じさせる巨大なアーカイブ室だった。
■ 研究の記録
室内には、古びた書類や端末が散乱していた。
「……ここで、何が研究されていたんだ?」
美咲が端末を操作し、残されたデータをスキャンする。
「古いファイルがいくつか残ってる……解析できるか試してみる」
桐生教授も、古い資料を手に取りながら目を通す。
「……やはり、ここでは“ダイヤモンド”に関する研究が行われていたようだ」
「ただの鉱石の研究ではないですよね?」
隼人が問いかけると、教授は静かに頷く。
「そうだ。この施設では、特定のダイヤモンドの内部に確認された“人影”についての調査が行われていたようだ」
美咲が端末の画面を示しながら言う。
「ここにある記録によると、その人影は特定の条件下で“動いた”ことがあるみたい」
「ブラックダイヤモンドと同じような現象か。」
隼人が呟く。
「でも、それがどういう原理なのかは分かっていないわ。データの一部は消されているし、結論には至っていないみたい」
黒衣の男は静かに言った。
「この研究は、ある時点で突然打ち切られた。そして、関わった者たちの多くが消えた」
桐生教授が顔を上げ、黒衣の男の話を聞く。
「おそらく、政府が何か重大な事実を知り、それを隠蔽したんだろう」
■ 消えた研究者たち
「……先生の父親も、この研究に関与していたんですよね?」
美咲が、慎重に桐生教授に尋ねる。
教授は、静かに資料の束を見つめながら答えた。
「そうだ。だが、父はこの研究のどの部分に携わっていたのか、私は知らされていなかった」
隼人が、疑問を口にする。
「でも、結局、この研究では何が分かったんだ?」
美咲は端末を操作しながら答える。
「少なくとも、ダイヤモンドの中の人影がただの偶然の模様ではないことは証明されているわ」
「それって……」
「何らかの“知的存在”である可能性が示唆されている」
桐生教授が深く息を吐いた。
「もしそれが事実なら……この研究は、ブラックダイヤモンドと同様の研究だったのかもしれない」
■ 研究の行き詰まり
「だけど、研究が途中で打ち切られたってことは……その“人影”について、結局何も解明できなかったんじゃ?」
隼人の言葉に、美咲が慎重に答える。
「どうやら、研究者たちはある結論に達したみたい。でも、それが記録には残されていない」
「……つまり、政府が意図的に隠した?」
黒衣の男は静かに頷いた。
「この研究は危険すぎると判断されたんだろう。だから、すべてを闇に葬った」
桐生教授は、古い記録を見つめながら、低く呟いた。
「……父も、この結論に辿り着いたのだろうか」
■ 迫る足音
その時、施設内の警報が鳴り響いた。
「侵入者検知。セキュリティシステム起動」
「……まずいな」
黒衣の男が静かに言う。
「誰かがこの施設に入ってきた」
隼人たちは身構えながら、通路の奥を見つめた。
足音が、徐々に近づいてくる。隼人たちは、咄嗟に身を隠す。
扉の向こうから、武装した兵士たちがゆっくりと近づいてくるのが見えた。
「政府の部隊?」
美咲が息をのむ。
黒衣の男は、鋭い目つきで観察する。じっと兵士たちの装備を見つめると、首を振った。
「いや、違う……政府直属ではない。……“別の組織”だ」
「別の組織?じゃあ、誰だ?」
隼人が問う。
「あいつらはここで何が研究されていたのかを知っている者たちだが、詳しい説明は後だ。今はここを脱出する」
黒衣の男は、隼人たちに向かって短く指示を出した。
「ついてこい。この施設には、まだ“もう一つの出口”がある」
■ 地下施設からの脱出
彼は室内の隅にある壁のパネルを操作し、隠し通路を開いた。
「この通路を通れば、研究施設の外へ出られる」
「よし、行こう!」
美咲が端末を手に取り、桐生教授とともに通路へと入る。
「ノワール、しっかりつかまってろ」
「……ウン」
隼人は彼女を肩に乗せながら、黒衣の男の後に続く。
背後では、武装兵たちが室内を捜索していた。
「……何かが変わり始めている」
黒衣の男は、静かに呟いた。
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