第22話『ポストに入っていた手紙が5分後の自分からだった』

 学校から帰ってきたら、

 ポストに白い封筒が入っていた。


 差出人の名前はない。

 宛名は――**「今の自分へ」**とだけ書かれている。



 ***


 なんだこれ、と首をかしげながら開けてみると、

 中には短いメモが一枚。


「5分後、インターホンが鳴る。

 出るな。絶対に。」





 ***


「は?」って声が出た。

 いたずら?だとしたら雑すぎる。


 でも妙に字が、自分の筆跡に似ている気がする。



 ***


 とりあえず机に置いて、

 靴を脱いで、カバンを置いて、

 ポケットの中のタブレット菓子を一粒口に入れた瞬間――


 ピンポーン。


 本当に鳴った。



 ***


 ゾッとして玄関を見たけど、

 外には誰の気配もない。


 だけどインターホンのモニターには――

 自分と同じ服を着た“誰か”が立っていた。


 顔は帽子で隠れていた。

 でも、背格好も、立ち方も……まるで自分。



 ***


 すぐにドアチェーンをかけて、鍵も閉めた。


 それから3分後。

 再びポストに手紙が届いた。



 ***


「よくやった。このまま出なければ、“あれ”は消える。ありがとう。5分後のきみより」


 ***


 消える?

 じゃあ、あれは何?僕なの?別の“もしも”の僕?


 ドアの外はもう静かだった。



 ***


 それ以来、毎日ポストを開けるたび、少しだけドキドキしてしまう。


 いつかまた、“ちょっと先の自分”が手紙を送ってくるんじゃないかって。



 ***


 完(その手紙が、届く頃の僕へ)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る