第18話『図書館の裏階段で、本の中身が現実に流れ出していた』

 放課後、図書室で調べものをしていたら、

 司書の先生にふと声をかけられた。


「裏の非常階段には、行かないでね。

 本の“中身”が出ちゃってるから。」


 ***


 言ってる意味がわからなかったけど、

 興味に勝てず、こっそり覗きに行った。


 ***


 裏階段。

 誰もいない。静かで、ホコリっぽい。


 ……でも、なぜか――


 1段目に“桃太郎のお供たち”が座っていた。


 ***


 3段目には謎の怪盗がマントをひるがえしてるし、

 5段目には自己啓発本の名言が空中で回転している。


「失敗は、成長の証……成長の証……(エコー)」


 ***


 階段の下まで行くと、

“ページの切れ端”がふわふわと舞っていた。


 内容はどれも、図書室の本から抜け落ちた一文。


 ***


 中には、書いてないはずの言葉もあった。


「この物語は、君の心で続きを書いてください」




「次のページに行く前に、ひと呼吸」



 ***


 そのとき、背後から声がした。


「戻りたいなら、2段だけ戻って、

 好きだった物語を1冊思い浮かべて。」


 振り向いても誰もいなかった。

 でも、言われた通りにしてみた。


 ***


 気づいたら図書室に戻っていた。


 手元には、さっきは借りていなかったはずの本。


 タイトル:『きみが登った階段』


 ***


 完(ページの角が、ほんのり濡れていた)

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